2012年06月17日

炎症の機序A【炎症のしくみC】

A血管透過性の亢進と滲出液の形成

血管の内側は、血管内皮細胞に覆われています。通常、水や水溶性物質、酸素や二酸化炭素は、血管の内外へ通過できますが、血漿タンパク質(血液に含まれているタンパク質)や細胞は通過できません。


しかし、『炎症』が生じると、ブラジキニンヒスタミンなどの働きによって、血管内皮細胞が収縮します。すると、血管内皮細胞同士の接合部が開くことにより、物質が血管を通過しやすくなります。つまり、血管透過性が亢進します。その結果、タンパク質を含んだ血漿成分が血管の外に滲出し、“腫脹”という『炎症』の徴候が生じます。



B細胞成分の血管外への遊走と細胞性滲出物の形成

血管透過性が亢進すると、血管内の液体成分が減少します。すると、血液の粘性が増加し、血流速度が低下します。そのため、通常は血管の中心部を流れている細胞成分が、血管内壁側に集まる現象(辺縁趨向)が生じます。細胞成分の一つである白血球は、血管内壁を転がりながら血管内皮細胞に接着し、形を扁平化させて、血管内皮細胞の隙間から血管の外へ通過します。


白血球は、血液に含まれる細胞成分の一つで、主な役目は、血管外に遊出して、組織内に侵入してきた細菌や、異物などを、食作用によって細胞内に取り込み、消化分解して無毒化することです。白血球は、好中球好酸球好塩基球単球リンパ球に分類され、それぞれ機能が異なります。


血管外へ出た白血球は、『炎症』が生じている損傷部位に向かって遊走します。この現象は、白血球が、損傷部位に出現しているサイトカインとよばれる様々な種類の情報伝達タンパク質に引き寄せられるようにして生じます。



C白血球による貪食

『炎症』が生じている部位に遊走した白血球のうち、最初に働き出すのは、好中球です。好中球は、組織に侵入した細菌や細胞の残骸を好中球内に取り込み、好中球内のタンパク質分解酵素や活性酸素によって分解、死滅させます。なお、好中球は、最終的にアポトーシスを起こし、マクロファージに貪食されます。


アポトーシスとは、細胞がある種の刺激を受けたときに、内在するプログラムによって自発的に死滅する現象です。


マクロファージは、単球が組織に移行して分化したもので、組織に侵入した異物、自己の死細胞、脂肪などを貪食する、大型の食細胞です。


好中球より少し遅れて、マクロファージが損傷部に集まり、アポトーシスを起こした好中球や、組織の残骸、細菌を貪食します。



D炎症の終焉

壊死した細胞の除去が終わると、『炎症』に関わった化学伝達物質は中和されていきます。また、血管拡張と血管透過性の亢進もみられなくなり、血流も正常に戻り、滲出していた血漿成分はリンパ管を通って回収されていきます。マクロファージは、不要となった炎症細胞白血球肥満細胞)を貪食し、自らアポトーシスするか、血漿とともにリンパ管を通って、その場を去ります。


このようにして『炎症』は終焉を迎えます。『炎症』の終焉は、組織損傷の場合は、通常、受傷後7〜10日でみられます。『炎症』の終焉は、同時に組織修復の始まりでもあり、特にマクロファージなどから分泌されるサイトカインが、その橋渡しの役割を担っています。このことからも、『炎症』は、生体防御反応として、不可欠なものであるといえます。


一方、組織損傷が繰り返して生じる場合や、自己免疫異常による『炎症』の場合は、組織修復と同時に新たな『炎症』が始まるため、はっきりとした『炎症』の終焉は認められません。つまり、これが慢性炎症であり、その治療には難渋することが多いです。(>_<)



※『炎症』の『痛み』

『炎症』の過程では、様々な化学伝達物質が生じます。この化学伝達物質の中には、『痛み』を生じさせるものがあります。『炎症』の『痛み』は、その化学伝達物質が、侵害受容器に受け取られることにより生じます。つまり、この化学伝達物質により、“疼痛”という『炎症』の徴候が生じます。


『痛み』を生じさせる化学伝達物質には、これまでの説明で登場した、セロトニンブラジキニンヒスタミンや、登場していないプロスタグランジンなどがあります。プロスタグランジンは、白血球血小板血管内皮細胞から、いくつかの化学反応を経て生じます。プロスタグランジンは、単独では『痛み』を生じさせませんが、ブラジキニンに作用して、『痛み』を増強させます。


これらの『痛み』を生じさせる化学伝達物質は、D炎症の終焉でも説明したように、壊死した細胞の除去が終わると中和されていきます。その結果、『痛み』は消失していきます。


炎症の機序2.png



おわり(^^)


〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.
中野昭一 編:図解生理学 第2版,医学書院.2000.
奈良勲 監,内山靖 編:理学療法学事典,医学書院.2006.

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2012年06月18日

結合組織の治癒@【治癒のしくみ@】

組織損傷の治癒過程は、創傷(体表組織の損傷)、靱帯損傷、腱損傷など、主に結合組織で構成された組織と、筋肉とでは、そのメカニズムがやや異なります。それぞれどのようにして治癒していくのかみていきましょう。今回は結合組織についてです。(^^)


創傷、靱帯損傷、腱損傷など、主に結合組織で構成された組織が損傷すると、残存する細胞が増殖し、損傷された組織を元通りに修復する機転が生じ、治癒へと向かいます。この治癒過程は、@炎症期A増殖期B成熟期の3つに分けることができ、それぞれが独立することなく、オーバーラップしながら進んでいきます。ここでは、創傷の治癒過程をみていきますが、その内容は、靱帯筋膜といった、結合組織で構成された組織の損傷にも、おおむね当てはめること(普遍化)ができるとされています。



@炎症期

炎症期は、【炎症のしくみ】で説明した組織学的変化がみられます。この炎症期が完全に終了する前に、次の増殖期の組織学的変化が始まります。つまり、炎症期で生じた組織学的変化が、増殖期の組織学的変化を促す、橋渡しの役割があります。なかでも、血小板マクロファージから分泌される様々なサイトカイン(PDGF、TGF-β、VEGFなど)は、増殖期の主要な組織学的変化である、肉芽組織形成血管新生に、不可欠なものです。炎症期は、受傷〜7日ほどの時期にみられます。



A増殖期

増殖期は、受傷して約3日〜2週間の時期で、未熟ながらも組織の連続性が修復されます。この時期の主な組織学的変化には、表皮における上皮化真皮(創傷が深い場合は皮下組織筋膜も含む)における肉芽組織形成血管新生があります。


 1.上皮化

創傷によって欠損した表皮は、上皮化とよばれる反応によって治癒します。これは受傷後数分以内に始まります。まず、創部周辺の表皮基底層から、新たなケラチノサイト(角化細胞)が次々に供給され、表皮を埋め尽くし、創表面が閉鎖します。そして、基底層の細胞の働きにより、基底膜基底層真皮の間の膜)が形成されると、上皮化が完了し、表皮の再生が完了します。この上皮化は、その範囲が限られており、創部周辺から2〜3cmの範囲を覆うことしかできないといわれています。


ケラチノサイトとは、角化細胞のことで、表皮の大部分を構成するものです。成熟するに伴い、上方の層へ移行し、表皮の各層を構成します。約2週間で角質層へ移行し、さらに2週間かけて、垢となって剥がれ落ちます。(皮膚の痛み【運動器の痛み@】参照)


 2.肉芽組織形成

肉芽組織とは、主に結合組織で構成された組織の損傷後に起こる修復反応として作られる新生組織のことです。これは、新生血管、結合組織、線維芽細胞などで構成されます。


線維芽細胞とは、結合組織を構成する細胞の一つで、細胞外基質(細胞の周りを構成する骨格のようなもの:コラーゲンなど)を合成します。


炎症期に損傷部へ集まった血小板マクロファージなどから分泌されるサイトカイン(PDGF)は、線維芽細胞を刺激します。その結果、受傷後3〜5日までに、活性化した線維芽細胞が、創部に集積、侵入し、創部において最も有意な細胞となります。そして、血小板、活性化したマクロファージ線維芽細胞からは、別のサイトカイン(TGF-β)が分泌されます。そのサイトカイン(TGF-β)は、線維芽細胞を増殖させ、線維芽細胞細胞外基質の合成を促します。すると、創部は、細胞外基質で埋め尽くされるようになります。これが、肉芽組織形成といわれる反応です。


この肉芽組織は、徐々にコラーゲンに置き換わっていきます。ただ、この時期のコラーゲンは、主にタイプVコラーゲンで構成されており、線維自体も細く、線維束も形成していないことから、抗張力に乏しいものとなっています。


コラーゲンとは、真皮、靱帯、腱、骨、軟骨などを構成するタンパク質の一つで、細胞外基質の主成分です。コラーゲン線維は、太い方から順に、T〜Xに分類されます。


 3.血管新生

増殖期では、新たに形成された肉芽組織の構成成分に、酸素と栄養素を供給するため、血管新生とよばれる反応がみられます。この反応の中心的役割をなすのが、血管内皮細胞です。これは、マクロファージ線維芽細胞から分泌されるサイトカイン(FGF、VEGFなど)によって刺激を受けると、分裂、増殖し、創部に集積してきます。その結果、創部には毛細血管が新生し、毛細血管ネットワークが作られていきます。なお、血管新生の乏しい肉芽組織は、創傷治癒が遅延、障害され、難治性になるとされています。



つづく・・・


〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.
奈良勲 監,内山靖 編:理学療法学事典,医学書院.2006.

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2012年06月19日

結合組織の治癒A【治癒のしくみA】

B成熟期

受傷して約5日以降は、成熟期とよばれる時期になります。創傷が重症な場合は、この時期が、年単位に及ぶこともあります。成熟期の主な組織学的変化は、創全体を閉鎖するための創収縮と、肉芽組織から瘢痕組織へ変化する過程におけるコラーゲンのリモデリングがあげられます。


瘢痕組織とは、欠損した組織が、本来の細胞や組織によって補充されず、その代わりに置き換わった結合組織のことです。


 1.創収縮

肉芽組織が形成されると、創の収縮が生じます。この反応は、早い場合では受傷後3〜4日後には始まります。これによって、創全体が閉鎖し、傷口も小さくなります。創収縮のメカニズムは、まだ完全には明らかにされていませんが、それを制御しているのは、線維芽細胞から分化した筋線維芽細胞と考えられています。


 2.コラーゲンのリモデリング

受傷後3〜5日の増殖期から始まった、サイトカイン(TGF-β)による線維芽細胞におけるコラーゲン合成は、数週間持続します。これにより、創部にはコラーゲンが凝集します。ちなみに、切開創の場合、サイトカイン(TGF-β)の量は、受傷後7〜14日がピークとされおり、これが抜糸の時期の根拠となっています。


コラーゲンは合成される一方で分解も受けています。この分解を制御しているのは、マクロファージ線維芽細胞などから分泌される、タンパク分解酵素です。


このように、コラーゲンのリモデリングは、線維芽細胞における合成と、タンパク分解酵素による分解の、バランスによって成り立っています。そして、最終的に肉芽組織は、コラーゲン線維などの細胞外基質の中に、少数の線維芽細胞が存在する、瘢痕組織になります。


その後、創部は数ヶ月をかけて、コラーゲンの合成と分解(リモデリング)を起こし、成熟した瘢痕組織になっていきます。この過程で、初期に合成されたタイプVコラーゲンは、タイプTコラーゲンに置き換わり、コラーゲン線維自体も太くなります。また、コラーゲン線維束も形成され、その配列も網目状の形態をとるようになるため、抗張力も増加します。


加えて、新生血管は消退し、線維芽細胞の数も減少します。しかし、皮膚では完全に治癒していても、その強さは正常の80%程度であり、弾力性も少なく、皮膚付属器官(毛、汗腺など)も欠いていることから、機能的には不十分なものとなっています。



以上が、結合組織の治癒のしくみとなります。では、次回からは、筋肉の治癒についてみていきましょう。(^^)


つづく・・・


〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.
奈良勲 監,内山靖 編:理学療法学事典,医学書院.2006.

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2012年06月20日

筋肉の治癒【治癒のしくみB】

慣れない運動を行ったあとにみられる“遅発性筋痛(いわゆる筋肉痛)”や、スポーツ時にみられる“肉離れ”は、筋肉が損傷した具体的な例です。これらの損傷した筋肉は、どのようにして治っていくのでしょうか?


筋肉の損傷(筋損傷)とは、筋線維が損傷することです(筋肉の構造は、筋肉の痛み【運動器の痛みA】参照)。ここでは、筋肉の治癒を、@筋線維の壊死A筋線維の再生に大きく分けて、みていきます。



@筋線維の壊死

筋損傷では、筋線維(筋細胞)の細胞膜が破損します。すると、その細胞膜の透過性に異常が生じ、Ca2+筋線維内に流入し、その濃度が上昇します。Ca2+は、筋肉が収縮するスイッチとなっています。したがって、Ca2+濃度が上昇した筋線維は、過収縮状態となります。そして、Ca2+依存性のタンパク質分解酵素が活性化し、筋線維のタンパク質の融解、断片化が始まり、筋線維は壊死を起こします。


ただ、筋線維は多核細胞であるため生存力が強く、壊死を起こした部位も一部にとどまり、筋線維全体の壊死には至りません。その後、筋線維は、再生、回復します。


筋損傷が、単一の筋線維の部分的な壊死である場合は、大きな出血もなく、損傷直後に痛みは生じません。しかし、筋線維の壊死が発生した1〜2日後には、好中球マクロファージが損傷した部分に浸潤し、炎症反応がピークを迎えると、痛みを生じるようになります。このメカニズムは、“遅発性筋痛”の一因として有力視されています。


一方、筋損傷の程度が大きいと、筋線維の壊死にとどまらず、筋膜を含んだ筋組織の断裂に及び、出血も顕著にみられます。出血部位やその周辺では、炎症による血管反応が生じ、炎症の徴候である、発赤熱感腫脹疼痛が生じるようになります。これが、“肉離れ”とよばれる筋損傷です。この“肉離れ”の治癒過程はでは、筋線維の壊死、再生に加え、結合組織で構成される筋膜の修復過程を伴いますので、治癒するまでには時間がかかります。



A筋線維の再生

筋内膜の中には、筋衛星細胞という、通常は活動を休止している細胞が存在します。筋線維に壊死が生じると、この筋衛星細胞が活性化し、筋線維の再生が始まります。


筋衛星細胞は、マクロファージの活動の終了を待たずに、筋線維の壊死が発生した約1日後から活性化し、筋芽細胞に分化して、増殖を繰り返します。筋芽細胞の増殖がある程度進行すると、次に筋芽細胞どうしの融合が始まり、筋管細胞へと分化します。これは壊死から約3日後によくみられます。


壊死から約7日後筋管細胞は、壊死した筋線維の両端をつなぎ合せるように融合し、筋線維を再生します。壊死から約1ヶ月後には、筋線維の回復はほぼ終了し、筋線維は元通りになります。また、筋管細胞がそのまま成長して新たな筋線維となり、筋線維の数が増加することもあります。



以上のように、筋線維の修復には、1週間ぐらいの時間が必要なようです(^_^;)。


おわり(^^)


〈主な参考文献〉
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2012年06月21日

このブログが紹介されました♪

このブログが、2つのブログで紹介されました。(^o^)/


一つは、加茂整形外科医院の加茂淳先生のブログです。加茂先生については、以前このブログでも紹介させていただきました。加茂整形外科医院は、石川県の小松市にあります。加茂先生は、運動器の痛みを、従来の治療とは異なる視点、筋肉に着目して、治療されています。私は、加茂先生の本、ブログ、ホームページでも、勉強させていただいています。


その加茂先生が、このブログを紹介してくれました。とても嬉しかったです♪その紹介文は、私にとって、とても励みになりました。いただいたそのお言葉に恥じないよう、もっとたくさんのことを学んで、少しでも多くみなさんのお役に立ちたいと思います。(^^)/


加茂先生がこのブログを紹介した記事
『理学療法士のブログ』
http://junk2004.exblog.jp/18459628/


加茂先生を紹介した私の記事
『股関節痛【私の痛みH】』
http://blog.physicalsupportnagoya.com/article/56003991.html




もう一つは、私が学生のころにお世話になった、実習先の理学療法士の先生のブログです。この先生は、とても勉強熱心で、とても情熱的です!とくに、褥瘡、姿勢管理、動作介助について、熱心に取り組まれています。自ら勉強会を開催したり、講師として講習会に参加したりしています。


私は、このような情熱的な先生に出会えて、とても幸運でした♪出会って以来、ずっと良い刺激を受け続けています。この先生が、このブログを読んでくれていることを知ったとき、とても嬉しかったです。そして、紹介までしていただき、感謝感謝です。私も、この先生のように、情熱的に活動していきたいと、改めて思いました。(^^)/


実習先の先生がこのブログを紹介した記事
『密かに読んでいるブログ』
http://d.hatena.ne.jp/goto-shunsuke/20120610/1339331527




褒めてもらうことは、私にとって、とても励みになります♪“やる気”がどんどん膨らんでいきます!


加茂先生、実習先の先生、ありがとうございました。(^^)


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