2012年07月01日

急性痛の情動、認知【脳の中の痛みB】

今回は、急性痛における、『痛み』の情動認知についてです。


『痛み』の情動は、急性痛においては、二次痛一次侵害受容ニューロン【痛みの経路A】参照)によってもたらされます。


二次痛は、大脳の島皮質や、前帯状回扁桃体海馬などの大脳辺縁系に伝わります。これらの領域は、情動の発生に大きく関わっており、この経路は、『痛み』の情動経路として考えられています。


前回の一次痛の経路と、この二次痛の経路は、完全に独立しているわけではありません。一次痛は、二次体性感覚野に伝わりますが、その後、島皮質などに伝わります。つまり、島皮質には、一次痛二次痛も伝わります。


島皮質に伝わった刺激は、その後、前帯状回前頭前野に伝わります。前帯状回前頭前野は、情動認知に大きく関わっています。


このように、一次痛二次痛の経路が統合されることで、急性痛における『痛み』の認知的側面が生じます。




さて、これから『痛み』に関連する脳の領域の、それぞれの機能や特徴をみていきたいところですが、もっと勉強してからまとめたいと思いますので、しばらくこの【脳の中の痛み】シリーズは、お休みさせて頂きます。m(__)m


また必ず再開しますので、どうぞよろしくお願い致します。(^^)


つづく・・・


〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.

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2012年07月03日

組織損傷直後の痛み【痛みと組織損傷@】

身体が傷つけられて組織が損傷すると、ほとんどの場合、『痛み』が生じます。この『痛み』は、損傷された組織やその周囲の組織、すなわち末梢組織そのものに原因がある『痛み』で、急性痛に属するものです。では、実際に、末梢組織に原因がある『痛み』は、どのようにして生じるのでしょうか?今回からは、その『痛み』の発生メカニズムをみていき、それに関連して生じる、『痛み』に関する現象をみていきましょう。(^^)


1.組織損傷直後の『痛み』発生メカニズム

@一次痛と二次痛

皮膚、靱帯、腱、筋などが、刃物などで傷つけられた直後や、強く引き伸ばされて断裂した直後は、“刺すような鋭い痛み”を感じます。この『痛み』は一次痛一次侵害受容ニューロン【痛みの経路A】急性痛の知覚【脳の中の痛みA】参照)です。


一次痛は、痛み刺激が、伝導速度の速い一次侵害受容ニューロンであるAδ線維によって脊髄へ伝えられ、その後、大脳の体性感覚野に伝わったものです。一次痛は、一過性のもので、損傷された場所の識別に役立ち、痛み刺激の強さに応じた強さの『痛み』となります。


一次痛から少し遅れて、“鈍く疼くような痛み”が生じます。この『痛み』は二次痛一次侵害受容ニューロン【痛みの経路A】急性痛の情動、認知【脳の中の痛みB】参照)です。


二次痛は、痛み刺激が、伝導速度の遅い一次侵害受容ニューロンであるC線維によって脊髄へ伝えられ、その後、間脳の視床下部、大脳の島皮質大脳辺縁系前帯状回扁桃体海馬など)などに伝わったものです。二次痛は、情動の発生に大きく関わっています。


A神経性炎症

二次痛の発生とほぼ同じタイミングで、組織損傷部位に発赤が生じます。続いて、損傷部位とその周囲に腫脹が生じ、発赤の範囲も拡大します。『痛み』もそれに応じて、損傷部位だけでなく、その周囲に広がります。この現象は、フレア(flare)と呼ばれています。


フレアとは、神経性炎症というものによる変化です。神経性炎症は、一次侵害受容ニューロン(主にC線維)の逆行性興奮によって生じる、局所性の炎症です(図1)。


神経性炎症.jpg
図1:神経性炎症



一次侵害受容ニューロンは、末梢の終末部で、何本もの神経線維に枝分かれしています。痛み刺激によって生じた侵害受容器での興奮は、その分岐部に達すると、脊髄に向かって順行するだけでなく、他の分枝を伝って末梢に向かって逆行します。これは、軸索反射とよばれています。


また、一次侵害受容ニューロンを伝わって脊髄後根に達した興奮は、別の末梢神経を興奮させます。これは、後根反射とよばれています。


軸索反射後根反射によって、興奮が末梢の神経終末に達すると、その神経終末から、カルシトニン遺伝子関連ペプチドサブスタンスPといった化学伝達物質が放出されます。これらは侵害受容器を刺激するため、『痛み』が損傷部周囲に広がります。


また、カルシトニン遺伝子関連ペプチドには血管拡張作用が、サブスタンスPには血管透過性亢進作用があるため、発赤腫脹が生じます。さらに、これらの化学伝達物質によって肥満細胞が刺激されると、ヒスタミンが生成され、血管拡張、血管透過性亢進が促され、発赤腫脹が著しくなります。


このような、軸索反射後根反射によって生じる炎症を、神経性炎症といいます。


ちなみに、カルシトニン遺伝子関連ペプチドサブスタンスPなどは、血管反応に作用するだけではなく、好中球マクロファージリンパ球などを活性化させ、線維芽細胞平滑筋の活動も調節しています。血管反応やこれらの反応は、組織損傷の治癒過程において、不可欠なものです。したがって、神経性炎症は、組織の治癒にとって重要な役割を果たしているといえます。


糖尿病患者さんは、創の治癒に時間がかかることが知られていますが、これは、糖尿病合併症の一つである末梢神経障害によって、神経性炎症が生じにくいことが一因であります。(>_<)




以上のように、組織損傷直後の『痛み』は、最初に一次痛によってもたらされ、次に二次痛神経性炎症によってもたらされます。


つづく・・・


〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.
小山なつ:痛みと鎮痛の基礎知識(上)基礎編,技術評論社.2010.

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2012年07月06日

組織損傷後の炎症の痛み【痛みと組織損傷A】

2.組織損傷後の炎症に伴う『痛み』発生メカニズム

組織が損傷され、一次痛二次痛神経性炎症が生じた後、本来の炎症が生じます(組織損傷・治癒のしくみ参照)。炎症が生じると、ほとんどの場合、『痛み』が生じます。これは、炎症に関する様々な化学物質によるものです。


通常、組織が損傷を受けて数十秒後には、炎症に起因した化学物質による『痛み』が生じ始め、この『痛み』が持続します。そのメカニズムは以下の通りです。


@組織損傷から数十秒後

まず、損傷を受けた組織(細胞)から、カリウムイオン水素イオンアデノシン三リン酸ATP)などが漏出し、血小板からはセロトニン肥満細胞からはヒスタミンが放出されます。そして、これらの化学物質が、ポリモーダル受容器を刺激することで『痛み』が生じます。


また、血液凝固が生じると、ブラジキニンが産生されます。これも、ポリモーダル受容器を刺激し、『痛み』が生じます。


ブラジキニンが産出されると、いくつかの化学反応の結果、プロスタグランジンが合成されます。プロスタグランジンは、単独では発痛作用はありませんが、ブラジキニンによる発痛作用を増強させます。


このように、様々な化学物質がポリモーダル受容器を刺激しますが、それにより、前回説明した神経性炎症も引き起こされることになります。この神経性炎症によっても『痛み』が生じます。


A組織損傷から30〜60分後

組織が損傷を受けてから30〜60分ほど経過すると、好中球マクロファージリンパ球などの、白血球に属する細胞が炎症の主役となります。マクロファージは、ブラジキニンなどと反応し、インターロイキン腫瘍壊死因子などを放出します。これらがポリモーダル受容器を刺激し、『痛み』が生じます。


また、インターロイキンは、線維芽細胞ケラチノサイト角化細胞)などを活性化させます。そして、線維芽細胞は、ブラジキニンインターロイキンの作用によって、プロスタグランジン神経成長因子を放出します。ケラチノサイトは、インターロイキンの作用によって神経成長因子を放出します。神経成長因子は、ポリモーダル受容器を刺激し、『痛み』が生じます。


神経成長因子はさらに、神経線維に取り込まれ、神経細胞体に運ばれると、『痛み』を生じさせるサブスタンスPカルシトニン遺伝子関連ペプチドTRPV1受容体などの、発現増加に影響を及ぼします。すると、結果的に、『痛み』の増強や持続を招くことになります。


TRPV1受容体は、熱刺激を受容する、ポリモーダル受容器に存在する受容体です。43℃以上の熱によって活性化します。また、トウガラシの主成分であるカプサイシンや、水素イオン)によっても活性化します。ブラジキニンATPなど、ほかの化学物質の作用により、閾値温度が30℃まで低下する特徴があります。したがって、炎症が生じているときは、体温自体がTRPV1受容体を活性化させ、『痛み』の増強に影響を及ぼします




以上のように、炎症時には、様々な化学物質が生成され、その化学物質が『痛み』を引き起こすことになります。(>_<)


つづく・・・


〈主な参考文献〉
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2012年07月08日

炎症での痛みの感作【痛みと組織損傷B】

3.炎症に伴う痛みの感作

『痛み』の感作とは、同じ刺激に対する『痛み』の反応性が増強した状態です。これには、末梢性感作中枢性感作があります。この【痛みと組織損傷】シリーズでは、末梢性感作のみを取り上げます。今回は、炎症に伴う『痛み』の感作についてまとめます。(^^)


@TRPV1受容体の変化

前回も説明しましたが、組織が損傷し炎症が生じると、その周辺にブラジキニンアデノシン三リン酸ATP)などの化学物質が漏出します。これらの化学物質が存在している下では、熱刺激に対して活性化し痛み刺激を発生させる、TRPV1受容体の閾値温度が低下します。TRPV1受容体は、通常は43℃以上で活性化しますが、36℃程度の温度でも活性化するようになります。つまり、体温によっても『痛み』を生じるようになります。


例えば、海水浴などで日焼けをしてお風呂に入るとき、いつもは問題なく浸かれていたお湯の温度(40℃前後)でも、痛くてお湯に浸かれない、という現象があります。これは、日焼けという、皮膚の炎症によって、TRPV1受容体の閾値温度が低下し、お湯の温度でも『痛み』を感じるようになったためと考えられます。


Aプロスタグランジンによるポリモーダル受容器の変化

前回も説明しましたが、炎症の過程で合成されるプロスタグランジンは、ポリモーダル受容器に存在するIP受容体、EP受容体に結合し、ポリモーダル受容器の閾値を低下させます。その結果、ブラジキニンによる発痛作用が増強します。


ちなみに、ロキソニンなどの、非ステロイド性抗炎症薬NSAIDs)は、プロスタグランジンの合成酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX:cyclooxygenase)を阻害することで、プロスタグランジンの合成を抑えて『痛み』の感作を軽減させ、『痛み』を和らげていると考えられています。


B非活動性侵害受容器の活性化

皮膚、骨格筋、関節、内臓といった生体内の多くの組織には、正常な状態では活動しない、非活動性侵害受容器が存在するとされています。関節内の侵害受容器の約1/3は非活動性侵害受容器であると推定され、内臓の一次求心性ニューロンの少なくとも50%は非活動性侵害受容器であるとされています。


非活動性侵害受容器は、組織損傷によって様々な化学物質が放出されたり、組織自体が低酸素状態になると、活性化するとされています。すると、『痛み』が増強します。非活動性侵害受容器が、いったん活性化すると、刺激に対する閾値の低下が生じるとされています。


ある実験では、正常時には関節運動を行っても非活動性侵害受容器は興奮しませんでしたが、関節内に炎症を生じさせる薬剤を注入して関節運動を行ったところ、炎症が生じた後は非活動性侵害受容器の興奮が認められ、この興奮は時間経過とともに顕著になったという結果が出ています。




以上のように、炎症が生じると、『痛み』が出やすい状態になってしまうのですね。(>_<)


つづく・・・


〈主な参考文献〉
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2012年07月10日

その他の末梢性感作【痛みと組織損傷C】

4.その他の末梢性感作

@エファプス

神経線維が損傷されたりすると、神経線維の髄鞘が失われること(脱髄)があります。すると、神経線維の絶縁が不十分となります。そして、2本以上の神経線維において、絶縁の不十分な部分同士が接触することがあります。この接触する部分を、エファプスといいます。


髄鞘とは、シュワン細胞という細胞の細胞膜が、軸索に幾重にも巻き付いたものです。このような構造をした神経線維を、有髄線維といい、Aδ線維などがこれにあたります。髄鞘は電気的に絶縁されています。有髄線維は、1〜2mmごとに髄鞘の区切りの切れ目があり、その部分は細胞膜が露出しており、電気的な絶縁はありません。一方、髄鞘が存在しない神経線維を、無髄線維といい、C線維がこれにあたります。無髄線維は、1個のシュワン細胞が、一重に複数の軸索を取り囲んでいます。


つまり、エファプスとは、正常なシナプス以外の場所で、2本以上の神経線維が電気信号を交換する場所のことです。エファプスは、ギリシャ語で“接触”という意味です。


エファプスが形成されると、刺激によって生じた興奮が、本来伝わっていく神経以外の神経にも伝わっていくことになります。このような現象は、クロストークとよばれています。


クロストークとは、元々は電話に関して使われている用語で、電話回線が混線して、知らない人の会話が聞こえてくるような状態のことです。


つまり、エファプスが形成されることにより、クロストークが生じます。クロストークが生じると、一つの神経を伝わってきた興奮が、複数の神経に伝わって同期的増幅を起こし、感作を引き起こします。


クロストークは、異なった種の神経との間でも生じます。例えば、触覚を伝える神経と、『痛み』を伝える神経との間にクロストークが生じると、「触っただけでも痛い」というアロディニア症状による分類【痛みの分類A】参照)が生じます。


A異所性興奮

神経を伝わる痛み刺激の興奮は、通常、侵害受容器で発生しますが、侵害受容器以外のところから発生する興奮を、異所性興奮といいます。異所性興奮は、末梢神経で生じ、切断された後に再生中の神経線維の先端神経腫脱髄損傷された神経の細胞体で生じます。


末梢神経が切断や損傷されると、その断端から新たな神経線維が伸びていき、神経線維の再生が行われますが、軸索の再生が髄鞘の再生に先行するため、新たな神経線維の先端は、軸索が髄鞘に覆われておらず、むき出しの状態となっています。このため、新たな神経線維の先端は、機械的刺激に対して興奮しやすくなっており、異所性興奮が発生するところとなります。


ちなみに、神経線維が再生しているときに、神経線維に沿って中枢から末梢に向かってハンマーなどで軽く叩いていくと、神経線維の先端にさしかかったときに“ジンジン、ビリビリ”する感覚が起こります。これをティネル徴候といいますが、この現象を調べることで、神経線維がどの辺りまで再生されているかが分かります。


神経腫とは、切断された神経線維の再生過程が障害されて、シュワン細胞や結合組織と軸索が一緒になって、玉のようになったものです。神経腫は、機械的刺激に対して興奮しやすくなっており、異所性興奮が発生するところとなります。


再生神経線維の先端、神経腫、脱髄部、損傷された神経の細胞体は、イオンチャネルや受容体が発現することがあります。そのイオンチャネルが自発的に興奮したり、その受容体に機械的刺激が加わったりすると、異所性興奮が発生することになります。


イオンチャネルは、細胞の膜に存在する、イオンを透過させるタンパク質です。イオンチャネルで、細胞内へのイオンの流出入が行われると、活動電位(興奮)が生じることになります。




以上のように、神経線維が損傷されたり切断されたりすると、そこから痛み刺激を受け取って興奮が伝わったり、刺激とは関係なく興奮が生じて伝わったりして、『痛み』の感作が生じるのですね。(>_<)


つづく・・・


〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.
小山なつ:痛みと鎮痛の基礎知識(上)基礎編,技術評論社.2010.

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