2012年07月08日

炎症での痛みの感作【痛みと組織損傷B】

3.炎症に伴う痛みの感作

『痛み』の感作とは、同じ刺激に対する『痛み』の反応性が増強した状態です。これには、末梢性感作中枢性感作があります。この【痛みと組織損傷】シリーズでは、末梢性感作のみを取り上げます。今回は、炎症に伴う『痛み』の感作についてまとめます。(^^)


@TRPV1受容体の変化

前回も説明しましたが、組織が損傷し炎症が生じると、その周辺にブラジキニンアデノシン三リン酸ATP)などの化学物質が漏出します。これらの化学物質が存在している下では、熱刺激に対して活性化し痛み刺激を発生させる、TRPV1受容体の閾値温度が低下します。TRPV1受容体は、通常は43℃以上で活性化しますが、36℃程度の温度でも活性化するようになります。つまり、体温によっても『痛み』を生じるようになります。


例えば、海水浴などで日焼けをしてお風呂に入るとき、いつもは問題なく浸かれていたお湯の温度(40℃前後)でも、痛くてお湯に浸かれない、という現象があります。これは、日焼けという、皮膚の炎症によって、TRPV1受容体の閾値温度が低下し、お湯の温度でも『痛み』を感じるようになったためと考えられます。


Aプロスタグランジンによるポリモーダル受容器の変化

前回も説明しましたが、炎症の過程で合成されるプロスタグランジンは、ポリモーダル受容器に存在するIP受容体、EP受容体に結合し、ポリモーダル受容器の閾値を低下させます。その結果、ブラジキニンによる発痛作用が増強します。


ちなみに、ロキソニンなどの、非ステロイド性抗炎症薬NSAIDs)は、プロスタグランジンの合成酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX:cyclooxygenase)を阻害することで、プロスタグランジンの合成を抑えて『痛み』の感作を軽減させ、『痛み』を和らげていると考えられています。


B非活動性侵害受容器の活性化

皮膚、骨格筋、関節、内臓といった生体内の多くの組織には、正常な状態では活動しない、非活動性侵害受容器が存在するとされています。関節内の侵害受容器の約1/3は非活動性侵害受容器であると推定され、内臓の一次求心性ニューロンの少なくとも50%は非活動性侵害受容器であるとされています。


非活動性侵害受容器は、組織損傷によって様々な化学物質が放出されたり、組織自体が低酸素状態になると、活性化するとされています。すると、『痛み』が増強します。非活動性侵害受容器が、いったん活性化すると、刺激に対する閾値の低下が生じるとされています。


ある実験では、正常時には関節運動を行っても非活動性侵害受容器は興奮しませんでしたが、関節内に炎症を生じさせる薬剤を注入して関節運動を行ったところ、炎症が生じた後は非活動性侵害受容器の興奮が認められ、この興奮は時間経過とともに顕著になったという結果が出ています。




以上のように、炎症が生じると、『痛み』が出やすい状態になってしまうのですね。(>_<)


つづく・・・


〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.

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posted by ふなこしのりひろ at 22:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 痛みのしくみ