2012年08月16日

島皮質【脳の中の痛みF】

C島皮質

島皮質は、扁桃体よりも、主要な『痛み』に関連する領域として認識されています。


島皮質は、急性痛だけでなく、慢性痛においても関与することが判明しています。


島皮質は、『痛み』の情動的側面の中心的な領域とされています。


島皮質は、情動喚起のプロセスにおいて、活動が増加することが報告されています。


島皮質は、嫌悪時に活動することが明らかにされています。


島皮質は、不快な情動体験時の際に高い活動を認めます。


島皮質は、何か不快のものを味わったとき、嗅いだとき、聞いたとき、見たとき、触ったときなど、感覚の種類に関係なく活動します。


島皮質に電気刺激を行うと、『痛み』の感覚が再現されることが明らかにされており、『痛み』に対する嫌悪感を発生させる領域として考えられています。


・恐怖、嫌悪感、怒りなどの否定的感情の想起時に、特に島皮質が活動することが明らかにされており、不快といった否定的感情に共通して関与する領域として認識されています。


島皮質は、情動的側面だけでなく、感覚的側面も有しています。


島皮質の後方は感覚野に近く、前方は前帯状回扁桃体に近いことから、後方は感覚的側面、そして前方に向かうに従って、情動的側面、認知的側面に関与することが考えられています。


島皮質は、『痛み』に対して注意を強く向けると、より活性化することが示されており、注意の度合いによって『痛み』が変調する領域として考えられています。


島皮質は、『痛み』の予期の際にも活動することが明らかになっています。


島皮質は、身体と物体との接触の予期の際にも活動することが示されており、メンタル・アロディニアへの関与が示唆されています。


島皮質は、主観的な『痛み』の感受性や耐性に影響することが報告されています。


つづく・・・


〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.

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股関節、腰、膝の痛みセラピー
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2012年08月17日

前帯状回【脳の中の痛みG】

D前帯状回

前帯状回は、扁桃体よりも、主要な『痛み』に関連する領域として認識されています。


前帯状回は、急性痛だけでなく、慢性痛においても関与することが判明しています。


前帯状回は、『痛み』の情動的側面の中心的な領域とされています。


前帯状回は、他者が『痛み』を感じている場面を観察したり、想像したりするだけでも活動することが明らかになっています。また、そのときの『痛み』の強度の段階づけの結果と強い相関関係があり、前帯状回の活動は、他者の『痛み』に対する主観的反応によって調整されることが判明しています。


前帯状回は、『痛み』に伴う情動の喚起、『痛み』に対する反応の選択、痛み刺激の予知と回避についての学習に関与しており、情動に関与する領域と、認知に関与する領域に分けられます。


前帯状回の中でも、より前方は情動に関与し、この領域は扁桃体から刺激を伝達され、中脳中心灰白質に刺激を伝達しています。


前帯状回の中でも、後方は認知的側面に関与することが報告されています。


前帯状回の前方は、『痛み』の情動的側面に関わることから、プラセボ薬の投与による除痛時に活動性が低下することが報告されています。


前帯状回は、内外の刺激に対して社会的な状況にも応じて、自己の情動バランスの査定を行う領域といえます。


前帯状回は、個人の情動やその時の環境によって、『痛み』の感受性を変化させる領域と考えることができます。


催眠によって前帯状回の活動が減少し、痛み刺激の不快さが和らぐことが報告されています。一方で、一次体性感覚野の活動には変化がなく、『痛み』の感覚的側面には催眠の影響がないことが報告されています。これは急性痛に関係する一次体性感覚野の活動による『痛み』の感覚的側面には、催眠プラセボの効果はないが、慢性痛に関係する前帯状回の活動による『痛み』の情動的側面には、それらの効果が認められることが示唆されています。


前帯状回は、一次体性感覚野二次体性感覚野にみられた痛み刺激の強度に比例して活動が強くなることはなく、主観的な影響が強いです。


帯状回切除術を受けた患者は、痛み刺激の局在、強度や質の理解は変わらないが、『痛み』があっても不快でなく気にならないです。一方、それは痛み刺激の程度が一定の場合であっても、『痛み』に対する不快感が強ければ、前帯状回の活動は増加し、『痛み』の感受性を増強させることも意味しています。


・『痛み』に対する感受性が高い人は、低い人に比べて、前帯状回前頭前野に強い活動が認められます。


前帯状回は、エラーの検出、身体的痛み、不安、不快の予期に関与することが明らかになっており、主観的な不快さを反映する領域として認識されています。


・『痛み』の変調において、前帯状回の活動変化は、注意よりも情動の影響が大きいことが報告されており、島皮質よりも、個人の主観的な情動変化に対して影響が大きいことが示唆されています。


一次体性感覚野の特徴としては、『痛み』刺激の強度に比例して活動が増加します。これに対して、『痛み』の情動認知に関わる前帯状回は、個々の心理状態によって違うことが明らかになっています。


・サルの前帯状回は、『痛み』を予期することで活動が生じることが明らかになっています。


つづく・・・


〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.

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2012年08月18日

頭頂連合野【脳の中の痛みH】

E頭頂連合野

頭頂連合野は、体性感覚野から後方、後頭葉から前方の領域です。この領域には、『痛み』に関連する領域である、後頭頂葉も含まれています。


頭頂連合野は、痛み刺激に反応する生理的な『痛み』ではなく、自覚的な『痛み』の認識に関与することが報告されています。


頭頂連合野は、『痛み』の記憶に関わる領域として認識されており、『痛み』の経験が身体図式化される領域として考えられています。


頭頂連合野は、痛み刺激と対応した身体の位置関係の認知や、『痛み』に対する注意に関与することが明らかになっています。


頭頂連合野は、視覚と体性感覚の統合の際に活動する領域として明らかになっていますが、これは『痛み』の感覚統合も頭頂連合野で行われることを意味しています。


頭頂連合野は、急性痛というよりは慢性痛に関与する領域で、慢性痛を有する人は、この領域の活動変化がみられることが明らかにされています。


つづく・・・


〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.

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2012年08月19日

前頭前野【脳の中の痛みI】

F前頭前野

前頭前野は、『痛み』の情動認知記憶といった統合的な面に関わり、急性痛よりも慢性痛で特に関与することが明らかになっています。


前頭前野は、視覚情報と体性感覚情報の不一致によって『痛み』や不快感が生じ、その不一致の際に、前頭前野が活動することが報告されています。


前頭前野に損傷があると洞察力にかけ、将来の計画立案が困難になりますが、慢性痛患者はそうした機能の中心である意思決定能力、意欲の低下を引き起こします。その原因には、前頭前野前帯状回が委縮していることが報告されています。こうした理由からも、慢性痛患者の抑うつ症状が説明されます。


・『痛み』を調節する広汎性侵害抑制調節には、前頭前野中脳中心灰白質が関与します。例えば、プラセボ鎮痛効果には、これらの領域が関与することが明らかになっています。


前頭前野は、下降性疼痛抑制系に関わり、下降性疼痛抑制系の減弱が慢性痛に関与することが考えられています。


・『痛み』を抑制しようと念じると、前頭前野島皮質前帯状回が活動することが明らかにされています。


前頭前野の活動低下が『痛み』の原因と考えられる一方で、痛み刺激に対して前頭前野の活動は増加することも報告されています。この矛盾は、前頭前野は場所によって機能が大きく違うためと考えられています。


内側前頭前野が委縮し活動が減少すると、情動の制御が困難、低下することが想定されます。背外側前頭前野の活動が増加することは、『痛み』に対して注意が向けられていることが想定されます。したがって、内側前頭前野の活動低下、背外側前頭前野の活動増加が、『痛み』に大きく影響することが考えられます。


背外側前頭前野急性痛に関わり、内側前頭前野慢性痛に関わることが報告されています。


内側前頭前野背外側前頭前野はお互いに抑制の関係にあり、背外側前頭前野が過活動になると内側前頭前野の活動を抑制してしまう可能性があります。


今回で、『痛み』に関連する脳の領域の機能や特徴についての説明を終わります。これまでみてきたように、『痛み』を感じるということは、脳の活動によることが分かります。つまり、身体を傷めていなくても、脳の中で『痛み』を感じさせるような活動が起こりさえすれば、『痛み』は生じてしまいます。(>_<)


つづく・・・


〈主な参考文献〉
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2012年08月21日

関節痛と慢性腰痛【脳の中の痛みJ】

前回までの話で、『痛み』は、脳の中で『痛み』を感じさせるような活動が起こりさえすれば生じる、と説明しました。このことに関する具体例として、変形性膝関節症慢性腰痛における『痛み』発生時の脳活動の違いについての研究報告がいくつかあり、それを整理して紹介します。


変形性膝関節症での膝関節痛が生じるときの脳の活動領域は、視床一次体性感覚野二次体性感覚野島皮質帯状回扁桃体などでした。


慢性腰痛での自発痛が生じているときの脳の活動領域は、前頭前野帯状回上部前頭葉頭頂葉でした。


ここで注目すべき点は、急性痛、つまり生体警告系(病態による分類【痛みの分類@】参照)に関与する、視床一次体性感覚野二次体性感覚野の活動です。変形性膝関節症での膝関節痛ではこれらの領域が活動しましたが、慢性腰痛の自発痛では活動しませんでした。つまり、慢性腰痛の自発痛は、組織の損傷による『痛み』ではないということです。


注意の集中、分配、操作に関与する前頭前野と、感覚情報処理およびその統合に基づく知覚の形成に関与する頭頂連合野は、双方向に神経結合しています。したがって、『痛み』の発生について、末梢組織からの刺激に基づいて頭頂葉が活動し、その情報がその後に前頭前野に伝達されて『痛み』を知る(認知する)という機序のみならず、過去の『痛み』経験の記憶に基づいて前頭前野が先に活動し、その活動が頭頂葉を活動させることによって『痛み』の知覚を出現させるという機序もありえます。


以上より、慢性腰痛の自発痛は、体部位再現に基づいておらず、身体局所に直接的な『痛み』の原因はなく、過去の経験や記憶の傷痕に基づき、脳内で『痛み』の知覚を生成している可能性があります。つまり、前頭前野のトップダウン情報処理の働きによって、『痛み』の知覚を生み出し、組織損傷が認められないところに『痛み』を感じていると考えられます。


このように、『痛み』は脳の中でも作ることが可能であることが分かります。ここで紹介した慢性腰痛の自発痛は慢性痛ということになりますが、『痛み』が脳の中で作られている限り、腰を治療しても『痛み』はなくならないということになります。つまり、慢性痛は、脳の中を治療しない限り、『痛み』はなくならないということになります。(>_<)


私たちが抱える『痛み』には、このような慢性痛というものもがあり、一般的な治療では治りにくいということをお伝えして、【脳の中の痛み】シリーズを終わりにしたいと思います。


おわり(^^)


〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.

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