2012年08月04日

痛覚閾値の変化【痛みと不活動@】

骨折したり靱帯を損傷したりして病院に行くと、患部にギプスを巻かれたり、装具を着けられたりします。これは、損傷した組織の治癒を促進させるために行われるものです。しかし、このような処置は、二次的に、拘縮筋委縮といった障害を引き起こすことも知られています。また、患部の炎症が治まっていき、組織の治癒が進んでいるにもかかわらず、『痛み』だけが残存していることもあります。


このような『痛み』は、「骨折や靱帯損傷といった、組織損傷があったから痛みが出る」「拘縮が発生して筋肉や関節が硬くなっているから痛みが出る」などと、漠然と捉えられていました。しかし、最近の研究で、この『痛み』について解明され始めてきました。最近の研究では、ギプス固定、非荷重、安静臥床などによって引き起こされる不活動状態は、それ自体が『痛み』を生み、しかも慢性痛の発生要因になるとされています。


今回は、不活動によって痛覚閾値が低下したという研究報告をいくつか紹介します。「痛覚閾値が低下する」とは、「『痛み』を感じやすくなった」ということです。


ヒトを対象とした実験として、Butlerは、23名の健康なボランティアの前腕(肘と手首の間の部分)を4週間ギプス固定したところ、52.2%に冷痛覚閾値の低下が、36.1%に熱痛覚閾値の低下が認められたことを報告しています。


また、Terkelsenらは、30名の健康なボランティアの前腕から手関節(手首)を4週間ギプス固定し、親指と人差し指の間の皮膚をつまむ際の圧力値によって痛覚閾値を評価したところ、ギプス固定を解除した直後だけでなく、解除後3日目28日目においても、痛覚閾値の低下が認められたことを報告しています。


動物実験として、Guoらは、ラットの足関節(足首)を中間位(脛と足の裏が直角の状態)で4週間ギプス固定し、足底部の機械的刺激に対する痛覚閾値を評価したところ、ギプス固定解除直後から2週間後まで痛覚閾値の低下が認められたことを報告しています。


また、山本らは、ラットの足関節を最大底屈位(足首を倒した状態)で4週間ギプス固定し、足底部の機械的刺激に対する痛覚閾値を評価しました。この実験では、左右とも足関節を固定した両肢固定群と、片方の足関節だけを固定した片肢固定群を設け、その比較も行われました。その結果、両肢固定群はギプス固定2週間後から、片肢固定群はギプス固定3週間後から痛覚閾値の低下が認められたと報告しています。また、両肢固定群は、片肢固定群よりも全身の活動量が少なかったことから、山本らは、この2群間での痛覚閾値低下が生じ始める時期が異なるのは、このことが影響しているのではないかと論じています。


また、沖田らは、ラットの右足関節を最大底屈位で、膝関節上部から前足部(足の先の方)までギプス固定し、足底部の機械的刺激に対する痛覚閾値を評価しました。この実験では、4週間固定した群、8週間固定した群を設け、それぞれギプス固定を解除してから4週間後の痛覚閾値も評価されました。その結果、ギプス固定2週間後から痛覚閾値の低下が認められ、その後はギプス固定の期間に応じて痛覚閾値の低下が著しくなっていきました。また、ギプス固定を解除した後の4週間では、4週間固定群では痛覚閾値の回復が認められたが、8週間固定群では回復が認められなかったと報告しています。


以上のように、ヒトでも動物でも、ギプス固定などによる不活動状態は『痛み』の発生を招き、不活動期間が長期化すると、その『痛み』は慢性痛へと発展する可能性が高いことが示唆されています。(>_<)


つづく・・・


〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.

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posted by ふなこしのりひろ at 23:15| Comment(2) | TrackBack(0) | 痛みのしくみ
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