2012年08月05日

神経系の変化【痛みと不活動A】

前回の記事のように、不活動状態は『痛み』を発生させやすくなりますが、それはなぜなのでしょうか??(?_?)


骨、関節、筋肉などの末梢組織は、身体運動を行わせる実行器官です。一方、皮膚と同様に、これらの組織にも様々な刺激を感じ取る、感覚器としての役割もあります。そのため、末梢組織を不活動状態にするということは、骨、関節、筋肉などの末梢組織が受ける刺激の量が減弱、消失することになります。


生体は、環境に適応していこうとするので、刺激の量が減少するということは、刺激に対する生体の反応、つまり神経系などに変化が生じることが考えられます。


Okamotoらは、ラットを用いて、膝関節内に起炎剤を投与し関節炎を生じさせた関節炎モデルと、膝関節を6週間ギプス固定をした不活動モデルにより、安静時と関節運動時の膝関節からの一次求心性ニューロン(刺激を脳に伝達する神経のうち、最初に刺激を受ける神経)の活動を調査しました。その結果、安静時、関節運動時とも、関節炎モデルと同様に、不活動モデルでも一次求心性ニューロンの活動亢進が認められたことを報告しています。


つまり、末梢組織を不活動状態にするだけでも、炎症が生じている場合と同様に、一次求心性ニューロン感作が生じることが示唆されています。


また、ネコを用いた調査ですが、膝関節を支配する一次求心性ニューロンの75〜90%はAδ線維C線維(ともに一次侵害受容ニューロン)であると報告されており、このことを考慮してOkamotoらの調査結果を考えると、不活動による求心性ニューロンの感作は、『痛み』の発生に関与していると予想できます。


Ushidaらは、ラットの手関節を90°掌屈位(手首を90°曲げた状態)で、前腕から手掌まで3〜4週間ギプス固定した後、前腕から手掌の機能に関わる脊髄後角細胞の、機能面での分布状況を調査したところ、広作動域ニューロン(侵害性、非侵害性の幅広い刺激に興奮する二次侵害受容ニューロン二次侵害受容ニューロン【痛みの経路B】参照)、関節運動のみに反応するニューロンの割合が、増加したことを報告しています。


これは、不活動状態が、脊髄後角細胞の可塑的変化を引き起こす可能性を示唆しています。また、広作動域ニューロンの割合が増加するということは、末梢から非侵害的な刺激が入力されただけでも『痛み』として知覚される可能性があります。さらに、不活動状態の後に関節運動を行うとき、しばしば『痛み』が生じますが、これは単に拘縮が発生しているからだけではなく、脊髄後角での関節運動に反応するニューロンが増加していることも、その一因だと考えることができます。


前回紹介した沖田らの実験では、ギプス固定解除後に、ホルマリンテストというものも実施されています。これは、ラットの足底にホルマリンを投与し、その化学刺激に対してラットが行う、舐める、噛むといった『痛み』関連行動の実施時間を5分ごとに計測するものです。ホルマリン投与後5分までを第1相といい、化学的な侵害刺激に対する末梢の『痛み』を意味します。ホルマリン投与後10分以降は第2相といい、局所の炎症と、それに引き続いて起こる脊髄後角細胞の感作に依存した中枢の『痛み』を意味するといわれています。


その結果、4週間固定群では第1相のみ高い値を示し、8週間固定群では第1相だけでなく第2相の35分後まで高い値を示しました。したがって、4週間ギプス固定を行って生じた『痛み』は、神経系の影響というより、末梢組織そのものの変化によるものと推察できます。一方、8週間ギプス固定を行うと、神経系にも変化が生じ、この影響によって慢性痛が発生することが予想できます。


以上のように、不活動状態により発生する『痛み』は、神経系の変化によって引き起こされている可能性が十分にありそうです。φ(.. )メモメモ


つづく・・・


〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.

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posted by ふなこしのりひろ at 22:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 痛みのしくみ
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