2012年08月12日

脊髄の神経可塑的変化【中枢性感作】

炎症が持続したり、神経が損傷を受けたりした場合、中枢神経系の様々なところで侵害受容ニューロンの機能が変化して、『痛み』が増強しやすくなります。これを中枢性感作といいます(病態による分類【痛みの分類@】参照)。この中枢性感作は、特に脊髄で解明されています。ここでは、脊髄での中枢性感作の代表的なものを紹介します。


@ワインドアップ

ワインドアップとは、一次侵害受容ニューロンのうち、C線維の興奮が繰り返し生じると、脊髄後角に存在する二次侵害受容ニューロンである広作動域ニューロンの興奮数が、しだいに増加する現象です。この現象により、『痛み』はしだいに増強してしまいます。


A長期増強

長期増強とは、シナプスでの刺激伝達が高頻度で行われると、シナプス伝達効率が上昇し、その状態が維持される現象です。この現象は、『痛み』の持続、慢性化に関与すると考えられています。


Bシナプス再構築

通常、『痛み』を伝える一次侵害受容ニューロンや、触覚情報を伝えるAβ線維は、それぞれ脊髄後角の所定のエリアへ進入し、所定の神経とシナプスを形成しています。しかし、末梢神経が損傷すると、次の現象が生じます。まず、C線維が変性して脱落します。すると、Aβ線維から、新たな軸索が枝分かれし、脊髄後角でC線維シナプスしていた神経と、シナプスを形成します。この新たなシナプス形成によって、「触ると痛みが出る」というアロディニアが生じることになります。しかし、最近の研究で、Aβ線維から枝分かれする軸索は、C線維が進入している脊髄後角のエリアまで達しないことが明らかとなり、このシナプス再構築の機序は、疑問視されています。


C脱抑制

通常、脊髄後角のシナプスの前後では、抑制性介在ニューロンによって、興奮の伝達が弱まるよう調整されています。しかし、末梢神経が損傷すると、抑制性介在ニューロンが変性したり、抑制性伝達物質の含有量が減ったりするという報告があります。また、組織損傷による疼痛が慢性的に生じていると、下降性疼痛抑制系『下行性疼痛抑制系』と『内因性オピオイド系』【痛みの抑制A】参照)が作用しないという報告もあります。これらのように、シナプス前後の抑制が減弱すると、シナプス伝達が通常より亢進し、『痛み』が生じやすくなります。


Dグリア細胞の活性化

末梢神経が損傷すると、脊髄後角のグリア細胞、特にミクログリアが活性化します。また、炎症が生じていると、炎症により産生されるサイトカインが血流にのって脊髄に入り、ミクログリアを活性化させます。活性化したグリア細胞、特にミクログリアは、サイトカインを放出します。そのサイトカインは、一次侵害受容ニューロンの脊髄内終末からの神経伝達物質の放出を促進し、二次侵害受容ニューロンの興奮性を増大させます。したがって、シナプス伝達が亢進し、『痛み』が生じやすくなります。


グリア細胞とは、神経膠細胞ともよばれ、神経細胞を支えている支持細胞です。グリア細胞の数は、ヒトの脳では、神経細胞の50倍ほどあります。中枢神経と末梢神経では、グリア細胞の種類が異なっています。中枢神経では、オリゴデンドロサイト希突起膠細胞)、アストロサイト星状膠細胞)、ミクログリア小膠細胞)、上衣細胞などがあり、末梢神経では、外套細胞衛星細胞)、シュワン細胞などがあります。



以上のように、『痛み』が長く続いたり、神経そのものが損傷したりすると、中枢性感作が生じます。この状態が続くと、痛み刺激がなくなっても『痛み』が治まらないといった、慢性痛に陥ってしまいます(>_<)。中枢性感作を生じさせないよう、『痛み』は長引かせないようにしましょう!(^^)/


おわり(^^)


〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.
小山なつ:痛みと鎮痛の基礎知識(上)基礎編,技術評論社.2010.

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posted by ふなこしのりひろ at 19:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 痛みのしくみ
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