2012年08月21日

関節痛と慢性腰痛【脳の中の痛みJ】

前回までの話で、『痛み』は、脳の中で『痛み』を感じさせるような活動が起こりさえすれば生じる、と説明しました。このことに関する具体例として、変形性膝関節症慢性腰痛における『痛み』発生時の脳活動の違いについての研究報告がいくつかあり、それを整理して紹介します。


変形性膝関節症での膝関節痛が生じるときの脳の活動領域は、視床一次体性感覚野二次体性感覚野島皮質帯状回扁桃体などでした。


慢性腰痛での自発痛が生じているときの脳の活動領域は、前頭前野帯状回上部前頭葉頭頂葉でした。


ここで注目すべき点は、急性痛、つまり生体警告系(病態による分類【痛みの分類@】参照)に関与する、視床一次体性感覚野二次体性感覚野の活動です。変形性膝関節症での膝関節痛ではこれらの領域が活動しましたが、慢性腰痛の自発痛では活動しませんでした。つまり、慢性腰痛の自発痛は、組織の損傷による『痛み』ではないということです。


注意の集中、分配、操作に関与する前頭前野と、感覚情報処理およびその統合に基づく知覚の形成に関与する頭頂連合野は、双方向に神経結合しています。したがって、『痛み』の発生について、末梢組織からの刺激に基づいて頭頂葉が活動し、その情報がその後に前頭前野に伝達されて『痛み』を知る(認知する)という機序のみならず、過去の『痛み』経験の記憶に基づいて前頭前野が先に活動し、その活動が頭頂葉を活動させることによって『痛み』の知覚を出現させるという機序もありえます。


以上より、慢性腰痛の自発痛は、体部位再現に基づいておらず、身体局所に直接的な『痛み』の原因はなく、過去の経験や記憶の傷痕に基づき、脳内で『痛み』の知覚を生成している可能性があります。つまり、前頭前野のトップダウン情報処理の働きによって、『痛み』の知覚を生み出し、組織損傷が認められないところに『痛み』を感じていると考えられます。


このように、『痛み』は脳の中でも作ることが可能であることが分かります。ここで紹介した慢性腰痛の自発痛は慢性痛ということになりますが、『痛み』が脳の中で作られている限り、腰を治療しても『痛み』はなくならないということになります。つまり、慢性痛は、脳の中を治療しない限り、『痛み』はなくならないということになります。(>_<)


私たちが抱える『痛み』には、このような慢性痛というものもがあり、一般的な治療では治りにくいということをお伝えして、【脳の中の痛み】シリーズを終わりにしたいと思います。


おわり(^^)


〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.

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posted by ふなこしのりひろ at 21:09| Comment(2) | TrackBack(0) | 痛みのしくみ
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