2013年05月01日

推進力の生成@【歩行の基本B】

A推進力の生成

みなさんご存知のように、物体を運ぶには力が必要です。私たちが歩くためには、身体を運ぶ力が必要です。その力は何によってもたらされているのでしょうか??


多くの方はこう思っているのではないでしょうか?「足で床を蹴る力で歩いている」と。


しかし、実際はその力だけではありません。むしろ、これから説明することの方が、歩くときに必要な力として重要なことです。特に私たちが、より自然に、より楽に歩いているときは、ほとんど後者の力で歩いています。


その力とは、“重力”です。もっと正確に言えば、重力によって身体が前方に落下する力です。


つまり、私たちは歩くとき、わざと片脚立ちになってバランスを崩し、身体が前方へ倒れていく力を利用しているのです。この力を、私たちの脚に備わっている巧妙な仕掛けによって、推進力に変えて、歩いているのです。


また、歩いているときに振り出される脚の、前方へ進もうとする力も、推進力の生成に貢献しています。


それでは次から、これらのメカニズムを説明していきます。



◎最初の1歩

まず、立っている状態から歩くには、最初の1歩を開始しなければいけません。これまでの研究で、歩き始めるときは、まず振り出す側の脚(遊脚側下肢)で床を押していることが明らかにされています。これは、身体の重心(重さの中心)を、片脚立ちになる側の脚(立脚側下肢)へ移動させるためと考えられています。


ちなみに、身体の重心は骨盤の中にあります(正確には、第2仙椎のやや前方)。


立脚側下肢重心が移動している中、遊脚側下肢は足を持ち上げ、床から離れます。


立脚側下肢は、脚の筋力を調整して重心を身体の前方へ移動させ、身体を前方へ倒れさせようとします。


そして、前方へ倒れる身体を支えようと、遊脚側下肢を前方へ振り出します。その足を床について、倒れる身体を支えます。これで最初の1歩が完成となります。


その後2歩目へと進むのですが、遊脚側下肢を床についたとき、重力を利用して作った、身体が前方へ落下する力が損なわれないように、人間の脚に備わっている巧妙な仕掛けが作用します。(^^)/


その仕掛けは、ロッカー機構と呼ばれるものです。正しい歩き方を知るには、必ず理解していなければならない仕掛けです。


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.

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2013年05月04日

推進力の生成A【歩行の基本C】

前回紹介したように、歩行において、1歩目を完了して2歩目へ移るとき、1歩目で作った身体を前進させる力、すなわち身体が落下する力をできるだけ損なわないよう、私たちの脚には巧妙な仕掛けが備わっています。


ロッカー機構.JPG
図1:ロッカー(揺りてこ)機構



その仕掛けとは、脚を1本の棒とみなして、その棒を回転させることで推進力を損なわないようにするものです(図1)。これはロッカー機構と呼ばれています。


まず、1歩目で脚が斜め前方に、床に向かって落下していきます(図1-a)。


脚が床に着くと、着いたところを支点として脚が前方へ回転します(図1-b)。ここで、床へ落下する力が、前方へ回転する力へ変換されます。


脚が前方へ回転することにより、脚の上に載っている身体が前方へ前進することとなります(図1-c)。


このように私たちは、身体が落下する力を回転する力に変換しながら歩いているのです。この変換にはいくつかの段階があります。それは、このロッカー機構が行われる部分が、次々移動していくからです。


それらは順番に、
1.ヒールロッカー
2.アンクルロッカー
3.フォアフットロッカー
4.トウロッカー
と呼ばれています。


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.

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2013年05月07日

推進力の生成B【歩行の基本D】

今回からは、前回紹介した4つのロッカー機構を説明していきます。


1.ヒールロッカー


ヒールロッカー.JPG
※足趾:足の指  MP関節:足の指の付け根の関節

図1:ヒールロッカー



通常、歩いているとき、私たちは踵から床に着けます。そのとき、踵を支点として、脚が前方へ回転します。これをヒールロッカー(踵ロッカー)といいます(図1)。このとき、膝は少し曲がります。


ヒールロッカー筋.JPG
図2:前脛骨筋と大腿四頭筋



これは、前脛骨筋大腿四頭筋という筋肉が働くことによって可能となります(図2)。


前脛骨筋は、脛骨(すねの骨)と足の甲を結ぶ筋肉です。


大腿四頭筋は、大腿骨(太ももの骨)や骨盤と脛骨を結ぶ筋肉です。


ヒールロッカーフットスラップ.JPG
図3:フットスラップ



前脛骨筋が働かないと、フットスラップと呼ばれる異常現象が生じます(図3)。これは、踵が床に着いた直後、そのまま足の裏が床に落ちていく現象です。このとき「パタン」という足の裏で床を打つ音が聞こえます。つまり、前脛骨筋は、脛骨に足の甲をしっかり引き付けておく役割を担っているのです。


このフットスラップが生じると、ヒールロッカー機構が消失してしまい、歩行時の推進力である身体が落下する力を利用しきれなくなってしまいます。効率の悪い、身体へのダメージの大きい歩き方となってしまいます。


ヒールロッカー膝折れ.JPG
図4:膝折れ(膝くずれ)



大腿四頭筋が働かないと、膝折れ(膝くずれ)と呼ばれる異常現象が生じます(図4)。これは、踵が床に着いた直後、膝が急激に曲がって、身体が床へ落下していく現象です。つまり、大腿四頭筋は、膝が曲がっていかないように、脛骨に大腿骨をしっかり結び付けておく役割を担っています。


この膝折れが生じると、膝から上の身体を前進させることができなくなり、歩行不能となってしまいます。


ちなみに、大腿四頭筋が働かなくても、他の筋肉(大殿筋大内転筋ヒラメ筋など)の力を利用して無理やり膝を伸ばしながら歩ける場合があります。しかし、この歩き方を続けていると、膝が反対の方へ曲がっていくようになります。この膝は、反張膝と呼ばれています。この歩き方は、身体にとってダメージの大きな歩き方です。


次回は、アンクルロッカーについて説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.

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2013年05月14日

推進力の生成C【歩行の基本E】

2.アンクルロッカー


前回説明したヒールロッカーは、踵が床に着くことで始まり、中足骨頭が床に着くことで終わります。


中足骨頭.JPG
図1:中足骨頭



中足骨頭とは、足趾(足の指)の手前の骨である中足骨の足趾側の部分です(図1)。中足骨と足趾を繋げる関節はMP関節(metatarsophalangeal joint:中足趾節関節)とよばれ、中足骨頭MP関節を構成しているものの一つです。


アンクルロッカー.JPG
図2:アンクルロッカー



中足骨頭が床に着きヒールロッカーが終わると、次は、足関節を支点として、脚が前方へ回転していきます。これを、アンクルロッカー(足関節ロッカー)といいます(図2)。


アンクルロッカー筋.JPG
図3:ヒラメ筋とアキレス腱



このとき、ヒラメ筋という筋肉が重要な働きをしています(図3)。


ヒラメ筋は、脛骨と踵を結ぶ筋肉です。ヒラメ筋の踵へ付着する腱は、ご存知の方も多いアキレス腱です(図3)。


アンクルロッカーが生じているとき、ヒラメ筋は、絶妙な活動で、脛骨の前方への回転スピードをコントロールし、効率よく身体を前進させています。


アンクルロッカーヒラメ筋なし.JPG
図4:ヒラメ筋が働かない場合のアンクルロッカー



しかし、ヒラメ筋が働かないと、脛骨の回転スピードが速くなり、大腿骨がそのスピードについていけなくなってしまいます。すると、膝が曲がってしまいます。そして、それ以上その膝が曲がっていかないよう、大腿四頭筋が活動を増大させます(図4)。


つまり、ヒラメ筋が働かないと、適切なアンクルロッカーを行えなくなり、エネルギー消費の大きい、効率の悪い歩き方となってしまいます。


次回は、フォアフットロッカーについて説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.

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2013年05月18日

推進力の生成D【歩行の基本F】

3.フォアフットロッカー@


前回説明したアンクルロッカーが生じている間、体重ベクトルは踵から前方に移動していきます。


体重ベクトルとは、重力、筋力、慣性力を合わせたものです。


ベクトル.JPG
図1:ベクトル



ベクトルとは、大きさと向きを持った量です。ベクトルは、よく矢印で表されます。例えば、ある青いボールに力が加わっているとします。この力のベクトルを矢印で表すと図1のようになります。この図で、矢印の長さは力の大きさを、矢印の向きは力の向きを表しています。


ベクトル2.JPG
図2:2つのベクトル



図1の右向きの力が加わっているボールに、右下向きの力を加えるとどうなるでしょうか?(図2)


多くの人は、ボールはそれら矢印の間へ進んで行くだろう、その方向へ力がかかることになるだろうと予測すると思います。しかし、その力の大きさや向きは、正確には分からないと思います。


ベクトル合成.JPG
図3:ベクトルの合成



しかし、ベクトルを利用すると、それが簡単に分かります。どのようにすれば良いかというと、ベクトルの矢印を平行移動して、他のベクトルにつなげれば良いのです(図3)。


まず、図3bのように、オレンジの矢印を平行移動して、その始点を、緑の矢印の終点につなげます。次に図3cのように、緑の矢印の始点と、オレンジの矢印の終点を、新たな紫の矢印でつなげます。この紫の矢印、つまりこの新たなベクトルが、ボールにかかる力の大きさと向きを表すことになります。


このように、2つ以上のベクトルをつないで新たな状態を表すことを、ベクトルの合成といいます。


つまり、体重ベクトルは、重力のベクトル、筋力のベクトル、慣性力のベクトルを合成したものです。


慣性力とは、物体がその運動状態を維持しようとする力です。物体にはそのような性質があります。止まっている物はずっと止まっていようとしますし、動いている物はずっと同じ状態で動いていようとします。


私たちが歩いているとき、身体は前へ進んでいますが、身体には前へ進むことを維持する力が生じています。この力が、歩いているときの慣性力です。


体重ベクトル.JPG
図4:体重ベクトル



体重ベクトルは、歩行中片脚立ちになっているとき、常に足底(足の裏)のどこかに向かっています(図4)。つまり、そのときの体重ベクトルは、足で床を押している力ともいえます。またそれは、床に対して、真っ直ぐだったり、斜めだったりします。


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.
中村隆一,齋藤宏,長崎浩:基礎運動学 第6版,医歯薬出版.2003.

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