2013年06月05日

推進力の生成G【歩行の基本I】

4.トウロッカー


前回まで説明していたフォアフットロッカーは、踵が持ち上がることで始まり、反対側の足が床に着くことで終わります。


反対側の足が床に着いたからといって、すぐにフォアフットロッカーが生じていた足が床から離れるわけではありません。しばらくは、中足骨頭から足趾にかけて、床に着いたままの状態が続きます。その後、中足骨頭が持ち上がり、足趾、最終的に母趾(親指)が床から離れていきます。


トウロッカー.JPG
図1:トウロッカー



この間、中足骨頭や足趾を支点にして、脛骨が前方へ回転していきます。これをトウロッカー(足趾ロッカー)といいます(図1)。このとき、足関節は底屈していき、膝関節は屈曲していきます(曲がっていきます)。


このトウロッカーで重要なことは、脛骨を前進させることです。脛骨を前進させ、推進力を生むことです。


このとき、脛骨を前進させるためには、足関節を底屈させなければなりません(足首を倒す)。


トウロッカー筋.JPG
図2:アキレス腱による底屈



実は、この足関節を底屈させる力の源は、なんと、筋肉ではなく、主にアキレス腱なのです!(図2)


反対側の足が床に着くと、フォアフットロッカーが生じていた脚にかかっている力(体重など)が、急速に小さくなっていきます。このため、足関節をしっかり固定する必要がなくなり、ヒラメ筋腓腹筋は、急速に力を弱めます。


一方、フォアフットロッカーが終わるまで、アキレス腱は、ヒラメ筋腓腹筋の力によって引き伸ばされています。そして、反対側の足が床に着くことにより、脚にかかっている力が急速に小さくなり、また、ヒラメ筋腓腹筋の力が弱くなると、引き伸ばされていたアキレス腱は元の長さに戻ろうと縮まります。


このアキレス腱の縮まる力で、足関節は底屈していくのです!そして、脛骨は前進していきます。


このように、アキレス腱は、バネのような働きをしているのです。


整理すると次のようになります。
@アキレス腱が、ヒラメ筋腓腹筋の力によって引き伸ばされる
A反対側の足が床に着く
B脚にかかっている力や、ヒラメ筋腓腹筋の筋肉の力が小さくなる
C引き伸ばされていたアキレス腱が、元の長さに戻ろうとして縮まる
D足関節が底屈する
E脛骨が前進する



前回、プッシュオフ(push off:踏み切り、蹴り出し)という用語を紹介しました。このプッシュオフという用語は、このトウロッカーのときに用いられる方が適切だと思われます。


ただ、トウロッカーでのプッシュオフは、身体を前進させるものではなく、脚を前進させるものです。



以上のように、トウロッカーは、反対側の足が床に着くことで始まり、足趾が床から離れることで終わります。


今回で正しい歩き方を理解するために必要な、4つのロッカー機構の説明は終わりになります。次回は、推進力の生成についてまとめます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.

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2013年06月06日

推進力の生成H【歩行の基本J】

◎推進力の生成のまとめ


前回まで、推進力の生成について説明してきました。今回はそのまとめをしたいと思います。(^^)/


私たちが歩くときの推進力は、主に次の2つで作られます。
@重力による身体の前方への落下
A振り出される脚の前方へ進もうとする力


特に@が主要な推進力となります。


ロッカー機構まとめ.JPG
図1:立脚側下肢のロッカー機構



@での推進力を生成、維持するために、ロッカー機構という仕掛けを利用しています(図1)。


ロッカー機構には、段階的に次の4つのものがあります。
1.ヒールロッカー(踵ロッカー)⇒図1:赤〜緑
2.アンクルロッカー(足関節ロッカー)⇒図1:緑〜紫
3.フォアフットロッカー(前足部ロッカー)⇒図1:紫〜青
4.トウロッカー(足趾ロッカー)⇒図1:青〜橙
トウロッカーの終わりは、反対側下肢のヒールロッカーの終わり(図1:半透明緑)にあたる



推進力が生成されるときは、「3.フォアフットロッカー」のときです。このとき、「@重力による身体の前方への落下」(立脚側下肢)、「A振り出される脚の前方へ進もうとする力」(遊脚側下肢)が生じます。


また、Aでの推進力は、「4.トウロッカー」でのアキレス腱が縮もうとする力が基になっています。


ちなみに、Aでの推進力は、振り出す脚のスピードを速くすると、より大きくなります。その結果、歩くスピードが速くなります。


振り出す脚のスピードを速くするには、意識的に股関節を屈曲させたり(脚の付け根を素早く曲げる)、膝関節を伸展させたりします(膝を素早く伸ばす)。


以上のようにして、私たちは歩くための力を生み出しているのです。このことをしっかり理解して、正しい歩き方を身につけましょう。(^^)/


次回からは、衝撃の吸収について説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.

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2013年06月16日

衝撃の吸収@【歩行の基本K】

B衝撃の吸収

「衝撃を吸収する」ということについて、みなさんはどのようなことが思い浮かぶでしょうか??


荷物を宅急便で出すときに、段ボールに緩衝材を入れることでしょうか?


飛んできたボールを受け取るとき、手や足を後ろへ引きながら受け取ることでしょうか?


ジャンプして着地するとき、脚を曲げながら着地することでしょうか?


どれも有効に衝撃を吸収できますよね。(^^)/


「衝撃を吸収する」とは、「加わる力をできるだけ小さくする」ということです。


では、これらの「衝撃の吸収」、どのようなしくみで衝撃が吸収されるのでしょうか??



ここからは、少し物理の話になります。


物体には、物体の質量をm、物体の速さをv、物体に加わる力をF、物体に力が加わっている時間をtとすると、次の関係が成り立っています。

力積.jpg

式1:運動量の変化と力積



mvは、物体の質量と速さを掛けたもので、物体の運動の激しさを表し、運動量といいます。


Ftは、物体に加わる力とその時間を掛けたもので、力積といいます。


式1は、「運動量の変化は加えられた力積に等しい」ということを表しています。


式1の左辺の運動量の変化は、同じ物体では速さの変化(v1→v2の変化)ということになります。


式1の右辺の力積は、運動量の変化が同じ(左辺の値が同じ)なら、力を加えられた時間が短ければ力の大きさは大きくなり、その時間が長ければ力は小さくなるということになります。



例えば、時速60kmで飛んできたボールを手で受け止めるときを考えてみましょう。


飛んできたボールを受け止めるということは、手の力で、時速60kmのボールの速さを、0にするということです。つまり、ボールの運動量を変化させるということです。


このとき、式1から、手にかかる力の大きさは、どのくらいの時間をかけてボールの速さを0にしたかにかかっています。つまり、1秒かけてボールを受け止めるより、5秒かけてボールを受け止める方が、手にかかる力は小さくなります。


以上のことから、「衝撃の吸収」には、力を受け止める時間が関係していることが分かります。


つまり、「衝撃を吸収する」には、「できるだけ長い時間をかけて力を受け止めると良い」、ということが分かります。


次回は、歩行時の衝撃の吸収について説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.
Donald A Neumann:筋骨格系のキネシオロジー(嶋田智明・他監訳).医歯薬出版,2005.
小出昭一郎,阿部龍蔵,他:詳説 物理.三省堂,1988.

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