2014年01月05日

衝撃の吸収A【歩行の基本L】

1.歩行時の衝撃の吸収

私たちが何気なく行っている歩行ですが、足が床に着くとき、毎回大きな衝撃が身体に加わっています。


私たちが歩いているとき、通常は踵から床に着きますが、このとき踵は約1cmほどの高さから床に落下しています。そして、身体に大きな衝撃が加わります。


私たちの身体には、この衝撃から身を守るために、「衝撃の吸収」のために、いくつかの仕掛けが備わっているのです。


つまり、私たちの身体には、床に接地するときにかかる体重という力を、時間をかけて受け止めるしくみが備わっているのです。


この「衝撃の吸収」は、主に足関節、膝関節、股関節で行われます。どのように行われるかというと、長い時間をかけて関節の動きを止めることで行われます。


これを可能にしているのは、それぞれの関節の周囲にある筋肉の働きです。この関節の動きや、筋肉の働きが悪いと、身体にとってダメージの大きい歩き方になってしまいます。


次回は、足関節での衝撃の吸収について説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.
Donald A Neumann:筋骨格系のキネシオロジー(嶋田智明・他監訳).医歯薬出版,2005.
小出昭一郎,阿部龍蔵,他:詳説 物理.三省堂,1988.

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2014年01月13日

衝撃の吸収B【歩行の基本M】

2.足関節での衝撃の吸収

足関節衝撃吸収.jpg
図1:踵接地時の足関節の底屈



私たちは歩くとき、通常は踵から床に足が着きます(図1-a)。この踵が床に着いた瞬間、足関節は少し底屈します(足首が少し倒れる)(図1-b)。その角度は約5°です。その後、足関節は固定されます(動かなくなる)。


この足関節が少し底屈している間に、衝撃の吸収が行われています。言い換えると、「踵が床に着くとき、足関節が少し底屈してくれるおかげで、衝撃を吸収することができる」、ということになります。


この足関節の底屈は、適切な量、適切な時間をかけて行われなければ、衝撃吸収の効果が薄れたり、正しい歩き方を保てなくなったりしてしまいます。


足関節底屈の量が小さかったり、底屈する時間が短かったりすると、衝撃を十分に吸収できず、足関節などに大きな力が加わり、身体を損傷してしまいます。


足関節底屈の量が大きいと、衝撃を吸収している途中で足底(足の裏)が床に着いてしまったりして、正しい歩き方を保てなくなってしまいます。



足関節衝撃吸収筋肉.jpg
図2:脛骨前面の筋肉の働き



この足関節の底屈をコントロールしているのが、脛骨前面にある筋肉です。具体的には、前脛骨筋長趾伸筋長母趾伸筋などです(図2-a)。


前脛骨筋は主に足関節を背屈させる筋肉、長趾伸筋は主に第2〜5趾(足の人差し指〜小指)を伸展させる筋肉、長母指伸筋は主に母趾(足の親指)を伸展させる筋肉です。


簡単に言うと、前脛骨筋は足首を反らせる筋肉、長趾伸筋は主に足の人差し指〜小指を反らせる筋肉、長母指伸筋は主に足の親指を反らせる筋肉です。


長趾伸筋長母趾伸筋は、足関節を背屈させる作用も持っています。


ちなみに、脛骨前面の筋肉の中で最も大きな筋肉は、前脛骨筋です。


これらの脛骨前面の筋肉は、踵が床に着いた直後からは、筋肉自体が伸ばされながら力を発揮していきます。


この筋肉が伸ばされながら力を発揮している状態は、遠心性収縮と呼ばれています。ちなみに、筋肉が縮みながら力を発揮している状態、つまり普通に腕を曲げるようなときの状態は求心性収縮、筋肉の長さが変わらずに力を発揮している状態は等尺性収縮と呼ばれています。


つまり、脛骨前面の筋肉が、適切な遠心性収縮をすることで、足関節の底屈をコントロールしています。


そして、この脛骨前面の筋肉が、時間をかけて足関節を固定することにより、衝撃を吸収するのです。


以上のことから、足関節での衝撃の吸収は、脛骨前面の筋肉(前脛骨筋長趾伸筋長母趾伸筋など)の働きが重要であることが分かります



以上のしくみで、足関節での衝撃の吸収は行われています。次回は、膝関節での衝撃の吸収について説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.

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2014年01月14日

衝撃の吸収C【歩行の基本N】

3.膝関節での衝撃の吸収

膝関節衝撃吸収.jpg
図1:踵接地時の膝関節の屈曲



私たちは歩くとき、通常は踵から床に足が着きます(図1-a)。このとき、ヒールロッカーというしくみが働き、脛骨が前方へ転がっていきます。すると、自然と膝関節が屈曲していく(曲がっていく)ようになります(図1-b)。


膝関節は、踵が床に着くときは約5°屈曲しており、足底が床に着いたときは約20°屈曲しています。足底が床に着くと屈曲は止まり、その後は伸展していきます(伸びていく)。


この膝関節が約15°屈曲している間に、衝撃の吸収が行われています。


足関節での衝撃の吸収のときと同様に、この膝関節の屈曲は、適切な量、適切な時間をかけて行われなければ、衝撃吸収の効果が薄れたり、正しい歩き方を保てなくなったりしてしまいます。


膝関節屈曲の量が小さかったり、底屈する時間が短かったりすると、衝撃を十分に吸収できず、膝関節などに大きな力が加わり、身体を損傷してしまいます。


膝関節屈曲の量が大きいと、衝撃を吸収している途中で身体が落下していき、前進が困難となってしまいます。



膝関節衝撃吸収筋肉.jpg
図2:大腿四頭筋の働き



この膝関節の屈曲をコントロールしているのが、大腿四頭筋です(図2-a)。


この大腿四頭筋は、踵が床に着いた直後から足底が床に着くまでの、膝関節が屈曲していく間、筋肉自体が伸ばされながら力を発揮していきます(図2-b)。


つまり、大腿四頭筋が、適切な遠心性収縮をすることで、膝関節の屈曲をコントロールしています。


そして、大腿四頭筋が、時間をかけて膝関節の屈曲を止めることにより、衝撃を吸収するのです。


以上のことから、膝関節での衝撃の吸収は、大腿四頭筋の働きが重要であることが分かります



以上のしくみで、膝関節での衝撃の吸収は行われています。次回は、股関節での衝撃の吸収について説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.

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2014年01月18日

衝撃の吸収D【歩行の基本O】

4.股関節での衝撃の吸収

股関節衝撃吸収.jpg
図1:踵接地時の骨盤の落下(股関節の内転)(正面から見た図)



私たちは歩くとき、2本の脚で交互に身体を支えています。


歩いているとき、例えば右の足が床に着くと、身体の重心がその脚に移動していきます。


スムーズに歩くためには、左の脚は素早く前に振り出されなければなりません。


そのため、右足が床に着いた後、左脚は身体を支えることを速やかにやめてしまいます。


すると、身体の左側は支えがなくなってしまうため、落下していってしまいます(図1)。


実際的には、右の股関節を軸にして骨盤の左側が落下していきます。そして、この骨盤の左側は、約4°落下すると止まります(左足が右足を通過するころと思われる)(図1-b)。


この骨盤の左側が約4°落下している間に、衝撃の吸収が行われています。


落下と内転.jpg
図2:骨盤の落下と股関節の内転
b:aの青色と水色の図の骨盤の位置を一致させた図(左脚は消している)



内転外転.jpg
図3:内転と外転



この骨盤の左側の落下は、右の股関節の動きで言い換えると、右の股関節が内転しているということになります(図2)。


内転とは、身体を正面から見て、腕や脚などが身体の中心に向かう動きのことです(図3-a)。ちなみに、内転の反対の動きである、中心から離れていく動きは、外転といいます(図3-b)。


つまり、股関節でも衝撃の吸収が行われているということです。


上の例で言えば、右の股関節が約4°内転している間に、衝撃の吸収が行われています。


ここでは分かりやすく、骨盤の動きで説明していきます。


足関節や膝関節での衝撃の吸収のときと同様に、この骨盤の落下は、適切な量、適切な時間をかけて行われなければ、衝撃吸収の効果が薄れたり、正しい歩き方を保てなくなったりしてしまいます。


骨盤落下の量が小さかったり、落下する時間が短かったりすると、衝撃を十分に吸収できず、股関節などに大きな力が加わり、身体を損傷してしまいます。


骨盤落下の量が大きいと、衝撃を吸収している途中で身体が落下していき、脚の振り出しが困難となってしまいます。


股関節衝撃吸収筋肉.jpg
図4:股関節外転筋群の働き



この骨盤の落下をコントロールしているのが、骨盤の横にある股関節を外転させる筋肉(股関節外転筋群)です。具体的には、中殿筋小殿筋大殿筋上部線維大腿筋膜張筋後部線維です。


中殿筋小殿筋は、骨盤の外側面と大腿骨の大転子というところを結んでいる筋肉です。小殿筋中殿筋の奥にあります。


大殿筋上部線維は、骨盤の後外側面と脛骨の上外側面を、腸脛靭帯という靱帯を介して結んでいる筋肉です。


大腿筋膜張筋は、上前腸骨棘(ASIS)と脛骨の上外側面を、腸脛靭帯を介して結んでいる筋肉です。


これらの股関節を外転させる筋肉は、踵が床に着いた直後から骨盤の落下が止まるまでの間、筋肉自体が伸ばされながら力を発揮していきます。


つまり、股関節外転筋群が、適切な遠心性収縮をすることで、骨盤の落下をコントロールしています。


そして、この股関節外転筋群が、時間をかけて骨盤の落下を止めることにより、衝撃を吸収するのです。


以上のことから、股関節での衝撃の吸収は、股関節外転筋群(中殿筋小殿筋大殿筋上部線維大腿筋膜張筋後部線維)の働きが重要であることが分かります



以上のしくみで、股関節での衝撃の吸収は行われています。



今回で、衝撃の吸収についての説明は終わりになります。これまでの説明で、私たちが歩いているとき、様々な筋肉が絶妙なタイミングで働いてくれるおかげで、身体を傷めにくくなっているのが分かりますね。このことを忘れずに、正しい歩き方を身につけましょう。(^^)/


次回からは、エネルギーの温存について説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.
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2014年01月27日

エネルギーの温存@【歩行の基本P】

Cエネルギーの温存

私たち人間は、種々の細胞と体液から作られています。したがって、私たちが生きていられるのは、それらの細胞が活動しているからです。


細胞が活動するには、いわゆる“エネルギー”が必要です。このエネルギーは、飲食物中の種々の栄養素を吸収し、呼吸によって得られた酸素によって、それらの栄養素を酸化することで作られます。


現代は飽食の時代とはいえ、いつでもどこでもすぐに飲食物を摂取できるわけではありません。言い換えれば、エネルギーを作れなくなることがあるということです。


つまり、エネルギー供給不足によって細胞が活動できなくなり、生きていくことができなくなる危険があるということです。


この危険を小さくするためには、細胞によるエネルギー消費を、できるだけ抑えることが大切なこととなります。つまり、“エネルギーの温存”が大切なこととなります。



さて、歩行についてですが、歩行は“身体”という物体の運動として捉えることができます。


上の説明で使用した“エネルギー”という言葉はやや抽象的ですが、この“エネルギー”は、物理学的には「物体が、他の物体に仕事をする能力」と定義されています。


ここでいう“仕事”とは、「物体を動かすとき、そのときに必要であった力と、動いた距離を掛けたもの」と定義されています。式にすると次のようになります。

仕事=力×距離


つまり、エネルギーとは、「物体を、ある力で、ある距離だけ動かす能力」ということになります。


したがって、物体を動かすときのエネルギー消費を最小にするには、できるだけ小さい少ない力で、できるだけ短い距離に、最小の移動に留めるようにすれば良いということになります。



私たちは歩くとき、この“エネルギーの温存”を様々な方法で自然と行っているのです。大きく分けると、次の2つのことを行っています。

1.身体の重心の移動を最小限に抑える(重心移動の最小化)
2.必要な筋肉のみ活動させる(選択的な筋肉の制御)



これらを実践できていることが、正しい歩き方には必要です。次回からは、「重心移動の最小化」について説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
中野昭一・他:図解生理学 第2版.医学書院,2000.
小出昭一郎,阿部龍蔵,他:詳説 物理.三省堂,1988.
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