図1は、手を使ってほうきを逆さに立てようとしているところで、図1-aは手のひらに載せる方法、図1-bは手で握る方法です。
「ずっと逆さに立てていて下さい」と命令されたら、どちらの方法を取りますか??
おそらく全ての人が、図1-bの方法を取るのではないでしょうか?aとbで何が違うのか、見ていきましょう。
図1-aは、手のひらにほうきの柄の先端を載せて、倒れないようにバランスを取っています。様々な筋肉に微妙な力を入れたり抜いたりして、腕や、場合によっては身体全体を随時動かしている状態です。
図1-bは、ほうきの柄をしっかり握っています。握るために必要な筋肉にだけしっかり力を入れて、腕や身体は動かず固まっている状態です。
整理すると、
図1-a:たくさんの筋肉、小さい力、力を入れたり抜いたり、随時動く、複雑
図1-b:少ない筋肉、大きな力、力を入れっぱなし、動かず固まる、単純
このような違いがあります。
筋肉に入れている力の量について比較すると、「大きな力を入れっぱなし」な図1-bの方が多いですよね。つまり、筋肉の疲れは図1-aの方が小さく、図1-bの方が大きい。
しかし、ほとんどの人は、筋肉の疲れの大きい図1-bの方法を取ります。なぜでしょうか??
それは、図1-aの方法は、“筋肉の疲れ”以外の疲れが大きいからです。
図1-aは、筋肉に力を入れたり抜いたりしていますが、これは神経の働きによるものです。神経が働くためには、筋肉に力が入るのと同様に、エネルギーが必要です。
たくさんの筋肉について、ある筋肉には力を入れて、ある筋肉の力は抜いて、そして次の瞬間にはまた逆のことをして、、、ということを行おうとすると、たくさんの神経の働きが必要で、神経は疲れていきます。
つまり、図1-aの方法は、“筋肉の疲れ”以外に、“神経の疲れ”が大きいのです。
そして、疲れの合計としては、図1-aの方が図1-bよりも大きいので、ほとんどの人は図1-bの方法を選ぶのです。
直感的に言えば、
図1-a:面倒くさい!!
図1-b:簡単♪♪
ということになります。
以上のように、一般的に、バランスを取ることよりも、力を入れっぱなしの方が、“楽”で“簡単”なのです!!
つづく・・・
〈主な参考文献〉
中村隆一,齋藤宏,長崎浩:基礎運動学 第6版,医歯薬出版.2003.
中野昭一 編:図解生理学 第2版,医学書院.2000.
中村隆一,齋藤宏,長崎浩:基礎運動学 第6版,医歯薬出版.2003.
中野昭一 編:図解生理学 第2版,医学書院.2000.