2012年07月03日

組織損傷直後の痛み【痛みと組織損傷@】

身体が傷つけられて組織が損傷すると、ほとんどの場合、『痛み』が生じます。この『痛み』は、損傷された組織やその周囲の組織、すなわち末梢組織そのものに原因がある『痛み』で、急性痛に属するものです。では、実際に、末梢組織に原因がある『痛み』は、どのようにして生じるのでしょうか?今回からは、その『痛み』の発生メカニズムをみていき、それに関連して生じる、『痛み』に関する現象をみていきましょう。(^^)


1.組織損傷直後の『痛み』発生メカニズム

@一次痛と二次痛

皮膚、靱帯、腱、筋などが、刃物などで傷つけられた直後や、強く引き伸ばされて断裂した直後は、“刺すような鋭い痛み”を感じます。この『痛み』は一次痛一次侵害受容ニューロン【痛みの経路A】急性痛の知覚【脳の中の痛みA】参照)です。


一次痛は、痛み刺激が、伝導速度の速い一次侵害受容ニューロンであるAδ線維によって脊髄へ伝えられ、その後、大脳の体性感覚野に伝わったものです。一次痛は、一過性のもので、損傷された場所の識別に役立ち、痛み刺激の強さに応じた強さの『痛み』となります。


一次痛から少し遅れて、“鈍く疼くような痛み”が生じます。この『痛み』は二次痛一次侵害受容ニューロン【痛みの経路A】急性痛の情動、認知【脳の中の痛みB】参照)です。


二次痛は、痛み刺激が、伝導速度の遅い一次侵害受容ニューロンであるC線維によって脊髄へ伝えられ、その後、間脳の視床下部、大脳の島皮質大脳辺縁系前帯状回扁桃体海馬など)などに伝わったものです。二次痛は、情動の発生に大きく関わっています。


A神経性炎症

二次痛の発生とほぼ同じタイミングで、組織損傷部位に発赤が生じます。続いて、損傷部位とその周囲に腫脹が生じ、発赤の範囲も拡大します。『痛み』もそれに応じて、損傷部位だけでなく、その周囲に広がります。この現象は、フレア(flare)と呼ばれています。


フレアとは、神経性炎症というものによる変化です。神経性炎症は、一次侵害受容ニューロン(主にC線維)の逆行性興奮によって生じる、局所性の炎症です(図1)。


神経性炎症.jpg
図1:神経性炎症



一次侵害受容ニューロンは、末梢の終末部で、何本もの神経線維に枝分かれしています。痛み刺激によって生じた侵害受容器での興奮は、その分岐部に達すると、脊髄に向かって順行するだけでなく、他の分枝を伝って末梢に向かって逆行します。これは、軸索反射とよばれています。


また、一次侵害受容ニューロンを伝わって脊髄後根に達した興奮は、別の末梢神経を興奮させます。これは、後根反射とよばれています。


軸索反射後根反射によって、興奮が末梢の神経終末に達すると、その神経終末から、カルシトニン遺伝子関連ペプチドサブスタンスPといった化学伝達物質が放出されます。これらは侵害受容器を刺激するため、『痛み』が損傷部周囲に広がります。


また、カルシトニン遺伝子関連ペプチドには血管拡張作用が、サブスタンスPには血管透過性亢進作用があるため、発赤腫脹が生じます。さらに、これらの化学伝達物質によって肥満細胞が刺激されると、ヒスタミンが生成され、血管拡張、血管透過性亢進が促され、発赤腫脹が著しくなります。


このような、軸索反射後根反射によって生じる炎症を、神経性炎症といいます。


ちなみに、カルシトニン遺伝子関連ペプチドサブスタンスPなどは、血管反応に作用するだけではなく、好中球マクロファージリンパ球などを活性化させ、線維芽細胞平滑筋の活動も調節しています。血管反応やこれらの反応は、組織損傷の治癒過程において、不可欠なものです。したがって、神経性炎症は、組織の治癒にとって重要な役割を果たしているといえます。


糖尿病患者さんは、創の治癒に時間がかかることが知られていますが、これは、糖尿病合併症の一つである末梢神経障害によって、神経性炎症が生じにくいことが一因であります。(>_<)




以上のように、組織損傷直後の『痛み』は、最初に一次痛によってもたらされ、次に二次痛神経性炎症によってもたらされます。


つづく・・・


〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.
小山なつ:痛みと鎮痛の基礎知識(上)基礎編,技術評論社.2010.

Feuno-logo-finish-small.jpg
股関節、腰、膝の痛みセラピー
『Feuno/フーノ』
ホームページはこちら


posted by ふなこしのりひろ at 23:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 痛みのしくみ
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/56916648
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
スポンサーリンク