2012年07月10日

その他の末梢性感作【痛みと組織損傷C】

4.その他の末梢性感作

@エファプス

神経線維が損傷されたりすると、神経線維の髄鞘が失われること(脱髄)があります。すると、神経線維の絶縁が不十分となります。そして、2本以上の神経線維において、絶縁の不十分な部分同士が接触することがあります。この接触する部分を、エファプスといいます。


髄鞘とは、シュワン細胞という細胞の細胞膜が、軸索に幾重にも巻き付いたものです。このような構造をした神経線維を、有髄線維といい、Aδ線維などがこれにあたります。髄鞘は電気的に絶縁されています。有髄線維は、1〜2mmごとに髄鞘の区切りの切れ目があり、その部分は細胞膜が露出しており、電気的な絶縁はありません。一方、髄鞘が存在しない神経線維を、無髄線維といい、C線維がこれにあたります。無髄線維は、1個のシュワン細胞が、一重に複数の軸索を取り囲んでいます。


つまり、エファプスとは、正常なシナプス以外の場所で、2本以上の神経線維が電気信号を交換する場所のことです。エファプスは、ギリシャ語で“接触”という意味です。


エファプスが形成されると、刺激によって生じた興奮が、本来伝わっていく神経以外の神経にも伝わっていくことになります。このような現象は、クロストークとよばれています。


クロストークとは、元々は電話に関して使われている用語で、電話回線が混線して、知らない人の会話が聞こえてくるような状態のことです。


つまり、エファプスが形成されることにより、クロストークが生じます。クロストークが生じると、一つの神経を伝わってきた興奮が、複数の神経に伝わって同期的増幅を起こし、感作を引き起こします。


クロストークは、異なった種の神経との間でも生じます。例えば、触覚を伝える神経と、『痛み』を伝える神経との間にクロストークが生じると、「触っただけでも痛い」というアロディニア症状による分類【痛みの分類A】参照)が生じます。


A異所性興奮

神経を伝わる痛み刺激の興奮は、通常、侵害受容器で発生しますが、侵害受容器以外のところから発生する興奮を、異所性興奮といいます。異所性興奮は、末梢神経で生じ、切断された後に再生中の神経線維の先端神経腫脱髄損傷された神経の細胞体で生じます。


末梢神経が切断や損傷されると、その断端から新たな神経線維が伸びていき、神経線維の再生が行われますが、軸索の再生が髄鞘の再生に先行するため、新たな神経線維の先端は、軸索が髄鞘に覆われておらず、むき出しの状態となっています。このため、新たな神経線維の先端は、機械的刺激に対して興奮しやすくなっており、異所性興奮が発生するところとなります。


ちなみに、神経線維が再生しているときに、神経線維に沿って中枢から末梢に向かってハンマーなどで軽く叩いていくと、神経線維の先端にさしかかったときに“ジンジン、ビリビリ”する感覚が起こります。これをティネル徴候といいますが、この現象を調べることで、神経線維がどの辺りまで再生されているかが分かります。


神経腫とは、切断された神経線維の再生過程が障害されて、シュワン細胞や結合組織と軸索が一緒になって、玉のようになったものです。神経腫は、機械的刺激に対して興奮しやすくなっており、異所性興奮が発生するところとなります。


再生神経線維の先端、神経腫、脱髄部、損傷された神経の細胞体は、イオンチャネルや受容体が発現することがあります。そのイオンチャネルが自発的に興奮したり、その受容体に機械的刺激が加わったりすると、異所性興奮が発生することになります。


イオンチャネルは、細胞の膜に存在する、イオンを透過させるタンパク質です。イオンチャネルで、細胞内へのイオンの流出入が行われると、活動電位(興奮)が生じることになります。




以上のように、神経線維が損傷されたり切断されたりすると、そこから痛み刺激を受け取って興奮が伝わったり、刺激とは関係なく興奮が生じて伝わったりして、『痛み』の感作が生じるのですね。(>_<)


つづく・・・


〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.
小山なつ:痛みと鎮痛の基礎知識(上)基礎編,技術評論社.2010.

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posted by ふなこしのりひろ at 20:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 痛みのしくみ
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