2012年04月03日

痛み経路の概略【痛みの経路@】

『痛み』は嫌なものですよね。『痛み』があると、何もする気になれなくなってしまいます。生きているのが嫌になってしまいます。(>_<)


『痛み』はどのようにして生じるのでしょうか?


大雑把に言えば、身体が傷つき、それを脳(大脳)が感じることで、『痛み』が生じます。


もう少し詳しくみてみると、末梢の組織(皮膚、筋、内臓など)にある痛みの受容器(センサーのようなもの)が身体の損傷を感知し、その刺激が神経を伝って大脳にたどり着くと、『痛い』という感覚が生じます(『痛み』が生じる)。


さらに、『痛み』を末梢の組織から大脳に伝える神経は、1本だけで末梢の組織から大脳に繋がっているのではなく、2つの中継点を経由して3本の神経で繋がっています。


痛み神経概略図.png



上の図のように、その中継点は『脊髄』と『視床』にあります。神経は1つの細胞であり、神経細胞を英語ではneuron(ニューロン)といいます。末梢から大脳までの神経を順に、『一次侵害受容ニューロン』、『二次侵害受容ニューロン』、『三次侵害受容ニューロン』といいます。


では、次回からは、それぞれのニューロンの特徴についてみていきましょう。


つづく・・・


〈主な参考文献〉松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.

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2012年04月04日

一次侵害受容ニューロン【痛みの経路A】

一次侵害受容ニューロンとは、痛み刺激によって生じた痛みの受容器の興奮を脊髄へ伝える神経です。一次侵害受容ニューロンの系統図を下に示します(図1)。


一次侵害受容ニューロン.png

図1:一次侵害受容ニューロン系統図



一次侵害受容ニューロンの末端(末梢側)は自由神経終末とよばれ、2種類の痛みの受容器(侵害受容器)が存在します。それは、高閾値機械受容器ポリモーダル受容器です。これらの受容器は、刺激が与えられると興奮し、その興奮は神経を伝わっていきます。与えられる刺激の強度に伴って興奮性が増します。


高閾値機械受容器は、侵害性(身体に害を及ぼすような)の強い機械的刺激が与えられると興奮しますが、弱い機械的刺激では興奮しないという特徴があります。


ポリモーダル受容器は、侵害性、非侵害性に関わらず、機械的刺激、熱刺激(43℃以上の高温と15℃以下の低温)、化学的刺激が与えられると興奮するという特徴があります。ちなみに、ポリモーダルの『ポリ』は多様な、『モーダル』は様式という意味です。


一次侵害受容ニューロンには、Aδ線維C線維の2種類があります。


Aδ線維は、直径5μm以下、伝導速度30m/s以下のもので、受容器の興奮を素早く脊髄へ伝えます。


C線維は、直径1.5μm以下、伝導速度2m/s以下のもので、受容器の興奮を比較的ゆっくり脊髄へ伝えます。


『痛み』には2種類あって、一次痛二次痛とよばれています。一次痛は『刺すような鋭い痛み』で、二次痛は『鈍く疼くような痛み』です。組織が損傷されたときは、最初に一次痛が生じ、少し遅れて二次痛が生じます。一次痛は一過性の痛みであります。例えば、転んで頭を打ったとき、最初に感じる「火花が飛ぶような痛み」は一次痛で、その後に感じる「ズキズキした痛み」は二次痛であります。


つまり、一次痛Aδ線維によって、二次痛C線維によって脊髄に伝えられます。


Aδ線維自由神経終末うち、皮膚表面にあるものにはポリモーダル受容器が、深部組織にあるものには高閾値機械受容器が存在しています。


C線維自由神経終末には、ポリモーダル受容器が存在しています。


受容器には、刺激を受け取る受容体が存在します。この受容体は何種類もあり、それぞれ決まった刺激しか受け取ることができません。


Aδ線維の皮膚表面にあるポリモーダル受容器に存在する受容体には、機械的刺激に応答するもの、熱刺激に応答するもの、化学的刺激に応答するものがあります。化学的刺激については、プロスタグランジンI2に対する受容体が存在します。Aδ線維の深部組織にある高閾値機械受容器に存在する受容体には、機械的刺激に応答するものが存在します。


C線維ポリモーダル受容器に存在する受容体には、機械的刺激に応答するもの、熱刺激に応答するもの、化学的刺激に応答するものがあります。化学的刺激については、ブラジキニン、サブスタンスP、ヒスタミン、セロトニン、アデノシン三リン酸、カプサイシン、酸(水素イオン)、プロスタグランジンI2、プロスタグランジンE2、神経成長因子、種々サイトカインなどに対する受容体が存在します。


以上のように、一次侵害受容ニューロンは、機械的刺激、熱刺激、化学的刺激を受容器受容体で受け取り、その刺激を脊髄へ伝える役目を果たしています。そして、一次侵害受容ニューロンには伝導速度が異なる2種類の線維、すなわちAδ線維C線維があります。伝導速度が速いAδ線維によって伝えられる痛みは一次痛を、伝導速度が遅いC線維によって伝えられる痛みは二次痛を引き起こすことになります。(^^)


つづく・・・


〈主な参考文献〉松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.

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2012年04月08日

二次侵害受容ニューロン【痛みの経路B】

二次侵害受容ニューロンは、一次侵害受容ニューロンの興奮を、脊髄で受け取り視床へ伝える神経です。


脊髄横断図.jpg

図1:脊髄の横断図



これまでの説明のように、一次侵害受容ニューロンは痛み刺激によって生じた興奮を脊髄に伝えますが、脊髄の中でも“後角”というところに接続し伝えます。上の図1は、脊髄の横断図ですが、“後角”は灰色の部分の背中側(画面では上側)に突き出た角のようなところです。この灰色の部分は“灰白質”といい、神経細胞体が主に占めているところです。また、白い部分は“白質”といい、神経線維が主に占めているところです。


神経細胞.jpg
図2:神経細胞の模式図



説明していませんでしたが、神経細胞は、神経細胞体、樹状突起、軸索(神経線維)で構成されています。上の図2は、一般的な神経細胞の模式図です。この図以外の形態をしたものもあります(一次侵害受容ニューロンなど)。


一次と二次侵害受容ニューロン.jpg
図3:一次侵害受容ニューロンと二次侵害受容ニューロンのシナプスの模式図



一次侵害受容ニューロンは、脊髄後角で二次侵害受容ニューロンにバトンタッチします。このように神経がバトンタッチするところを“シナプス”といいます。上の図3は一次侵害受容ニューロンと二次侵害受容ニューロンのシナプスの模式図です。このように一次侵害受容ニューロンは、軸索を二次侵害受容ニューロンの神経細胞体に向けています。


一次〜二次侵害受容ニューロンの系統図を下に示します(図4)。


二次侵害受容ニューロン.png

図4:一次〜二次侵害受容ニューロン系統図



一次侵害受容ニューロンには、一次痛を伝えるAδ線維と、二次痛と伝えるC線維がありますが、それぞれ脊髄後角の中でも異なる部分に入り、二次侵害受容ニューロンとシナプスを形成しています。二次侵害受容ニューロンには、特異的侵害受容ニューロン広作動域ニューロンの2種類があります。


特異的侵害受容ニューロンは、侵害性の強い機械的刺激には興奮しますが、弱い機械的刺激には興奮しないという特徴があり、『痛み』の発生場所を知らせるニューロンと考えられています。


広作動域ニューロンは、侵害性、非侵害性に関わらず、幅広い刺激に興奮するという特徴があり、『痛み』の刺激の強度を知らせるニューロンと考えられています。また、深部組織からの刺激によって皮膚に痛みを感じる“関連痛”の発生に関与すると考えられています。さらに、繰り返しの刺激により、感受性を増す“ワインドアップ(wind-up)”現象が生じたり、痛み以外の刺激を痛みとして伝達(例えば、触覚刺激によって生じた、触覚を伝えるAβ線維の興奮を、広作動域ニューロンが痛みとして伝達)するようになったりします。


一次侵害受容ニューロンのAδ線維特異的侵害受容ニューロンとシナプスを形成し、C線維特異的侵害受容ニューロン広作動域ニューロンともシナプスを形成します。


つまり、一次痛特異的侵害受容ニューロンによって、二次痛特異的侵害受容ニューロン広作動域ニューロンによって、視床まで伝えられます。(^^)


つづく・・・


〈主な参考文献〉松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.

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2012年05月13日

中枢伝達経路(二次、三次侵害受容ニューロン)【痛みの経路C】

ヒトの神経系には2種類あって、中枢神経と末梢神経とよばれています。中枢神経は多数の神経細胞が集まって大きなまとまりを作っているところで、脳と脊髄がそれに当たります。末梢神経は中枢神経以外の、全身に分布している神経のことをいいます。


脳は、延髄、橋、中脳、小脳、間脳、大脳からなり、延髄、橋、中脳を合わせて脳幹といいます。脳幹は呼吸や循環など生命維持に重要な中枢であり、意識レベルの維持にも深く関与しています。


一次〜三次侵害受容ニューロンの系統図を下に示します(図1)。


三次侵害受容ニューロン.png

図1:一次〜三次侵害受容ニューロン系統図



『痛み』を伝える神経のうち、脊髄から脳へ至る中枢神経の伝達経路には、外側系(感覚系)と内側系(情動・認知系)の2種類があります。


外側系の経路は、脊髄⇒視床(外側核群)⇒大脳皮質の体性感覚野に至る系です。ちなみに、この系の脊髄から視床までの区間を、外側脊髄視床路といいます。


体性感覚野とは、体性感覚が伝達される大脳の領域です。体性感覚とは、皮膚感覚(触覚、痛覚、温度覚など)、深部感覚(位置覚、運動覚、振動覚など)、内臓感覚(※内臓感覚を除外する立場もある)のことです。体性感覚は、特殊感覚(嗅覚、視覚、聴覚、平衡覚、味覚)とは異なり、皮膚、筋、腱、関節、内臓の壁など、身体のいたるところで感じる感覚です。


外側系は、一次痛の伝達経路で、主に痛みの部位、強度、持続性など、痛みの種類を識別した身体的な痛みに関わる情報を伝達します。また、この経路は、触覚、深部圧覚、温度覚などを伝える刺激も伝達し、判別が明瞭な感覚の伝達経路といえます。


内側系の経路は、脊髄⇒視床(内側核群)⇒大脳の島皮質前帯状回扁桃体海馬前頭前野に至る系です。この系は、脊髄から視床に至るまでに、延髄などの脳幹でシナプスを形成しています。ちなみに、この系の脊髄から視床までの区間のうち、延髄や脳幹でシナプスを形成していないものを、内側脊髄視床路といい、シナプスを形成しているものを、脊髄網様体視床路といいます。


島皮質情動に、前帯状回情動認知に、扁桃体情動記憶に、海馬記憶に、前頭前野情動認知記憶に関与しています。これらのうち、前帯状回扁桃体海馬は、大脳辺縁系に含まれています。


大脳辺縁系は、大脳半球の内側面にある領域で、情動意欲記憶自律神経活動などに関与している複数の構造物の総称です。生物が生きていくために必要な、本能的行動を司る領域とされています。


情動とは、怒り、恐怖、喜び、悲しみなど、急速に引き起こされた一時的かつ急激な感情の変化のことです。


認知とは、ある対象を知覚したうえで、それが何であるか判断したり解釈したりする過程のことです。知覚とは、ある対象から受けた感覚を、ひとまとまりの意味のあるものとして捉えることです。感覚とは、ある対象から受けた刺激を、感覚器によって受け取ることです。例えば、リンゴを見るとき、何か(リンゴ)が目に映ったと感じることが感覚(視覚)で、それを「赤い」、「丸い」と捉えることが知覚で、それを知識や経験に基づいて「リンゴだ!」と判断することが認知です。


網様体とは、脳幹にある神経細胞の構造物で、網状に交差する神経線維と、その網の目の中に点在する神経細胞体で構成されているものです。呼吸や循環の中枢で、生命維持に不可欠な機能を担っています。


内側系は、二次痛の伝達経路で、身体にとっての痛みの意味、ならびに情動認知の情報を伝達します。この経路は、大脳辺縁系に作用することから、痛みに伴うイライラ感、恐怖、不安感などの不快な感情変化を引き起こします。また、間脳の視床下部(自律神経機能の調節を行う中枢)などにも影響を及ぼし、血圧上昇、頻脈、冷汗、顔面蒼白などの自律神経症状を引き起こします。


三次侵害受容ニューロンは、二次侵害受容ニューロンの興奮を視床で受け取り、外側系では一次痛を大脳の体性感覚野へ伝え、内側系では二次痛を大脳の島皮質前帯状回扁桃体海馬前頭前野へ伝える神経です。


外側系内側系の両者は独立して存在するのではなく、いくつも接点があります。例えば、外側系の終点が体性感覚野というわけではなく、そこから大脳の領域をいくつか経由して島皮質に接続しています。


つまり、島皮質は、内側系外側系の両方と接続しています。さらに、島皮質大脳辺縁系を含む様々な領域に接続しています。


以上のようにして、痛み刺激は大脳へ伝達され、外側系内側系の情報が統合され、『痛み』が生じることとなります。(^^)


おわり(^^)


〈主な参考文献〉松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.
小山なつ:痛みと鎮痛の基礎知識(上)基礎編,技術評論社.2010.

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2012年05月15日

『gate control theory』と『広汎性侵害抑制調節』【痛みの抑制@】

私たちは日常的に、痛みが生じると、思わずその部位をさすったり、他の部位をつねったりして痛みを和らげようとします。そして、実際に痛みが和らぐことを体験します。


この、痛いところをさすると痛みが和らぐ現象を説明しようとして、1965年にMelzackとWallという人物によって、『gate control theory(ゲートコントロールセオリー)』という痛み抑制理論が提唱されました。


この理論は、当時としては大変斬新なもので、その後の痛みの研究や治療の新しい時代を拓くものとなりました。しかし、その後いくつかの誤りが指摘され、否定的な実験事実が確認されたため、科学的価値は低いとされています。


一方、痛いところとは別のところをつねったりすると痛みが和らぐ現象を説明しようとして、1979年にLe Barsという人物らによって、『広汎性侵害抑制調節(DNIC:diffuse noxious inhibitory controls)』という痛み抑制理論が報告されました。


彼らは、動物実験で、全身の広範な部位に加えた侵害刺激(C線維刺激)により、脊髄の広作動域ニューロン二次侵害受容ニューロン)の興奮性が抑制されることを示しました。この『広汎性侵害抑制調節』は、鍼灸や経皮的末梢神経電気刺激(TENS:transcutaneous electrical nerve stimulation ※病院のリハビリでよく使われている電気刺激装置)などの、身体の表面からなんらかの刺激を加える痛み治療法による鎮痛メカニズムの一つと考えられています。


彼らは侵害刺激を用いての実験結果を報告していますが、2002年に別の人物が示した注目すべき実験結果があります。それは、非侵害性の刺激でも、痛みが生じているところから離れたところを刺激すると、痛みが抑制されるというものです。この実験では、例えば、温水を手に浸すと、温水に浸さない場合に比べて、その手から離れた場所の痛みの強さが小さくなりました。


痛いときに、さすったりつねったりすると、痛みが和らぐのは、実験でも確かめられていて、そのメカニズムも明らかになってきています。痛いときに、さすったりつねったりすることは、決して無駄なことではないようですね。(^^)


つづく・・・


〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.
小山なつ:痛みと鎮痛の基礎知識(上)基礎編,技術評論社.2010.

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