2012年06月12日

炎症の概要【炎症のしくみ@】

ヒトの“からだ”は、損傷すると、損傷したところを自ら修復させようとします。いわゆる、自己治癒、自然治癒といわれるものです。この損傷した組織の修復は、どのようにして行われるのでしょうか?


大雑把にいうと、損傷したところに『炎症』が生じ、そこが新たな組織に置き換わることで、修復されていきます。その過程を、少し詳しくみていきましょう。今回は、『炎症』の概要についてです。(^^)


組織が損傷を受けると、『炎症』とよばれる生理反応が生じます。『炎症』は、損傷を受けた組織を取り除き、修復するために生じます。


『炎症』が生じると、損傷が生じたところやその周囲は、@赤みを帯び(発赤A腫れあがり(腫脹B熱を持ち(熱感C痛みが生じます(疼痛。これらの症状は、“『炎症』の4徴候”として、経験的に古くから知られています。今日においては、これらの原因は、血管拡張、血流増加、血管透過性亢進などの、『血管反応』による変化であることが明らかになっています。


また、『炎症』が生じると、反射的、意識的に運動が抑制され、D正常な運動ができなくなってしまいます(機能障害。これを加えて、“『炎症』の5徴候”とよぶこともあります。


『炎症』は、損傷した組織を修復するためには不可欠なもので、この生理反応が正常に機能しなければ、組織の修復は滞ってしまいます。しかし、『炎症』が必要以上に強い場合や持続する場合は、『炎症』の本来の目的からは外れてしまい、生体にとって悪影響を及ぼすようになります。このような『炎症』を、病的炎症、あるいは慢性炎症とよびます。この慢性炎症の例としては、関節リウマチが挙げられます。


では、次回からは、『炎症』の原因についてみていきましょう。(^^)


つづく・・・


〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.

Feuno-logo-finish-small.jpg
股関節、腰、膝の痛みセラピー
『Feuno/フーノ』
ホームページはこちら


posted by ふなこしのりひろ at 20:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 組織損傷・治癒のしくみ

2012年06月13日

炎症の原因【炎症のしくみA】

『炎症』を引き起こす原因には、生体の外からの有害な刺激による外因と、生体の中の機能異常や傷害による内因の2つがあります。


外因は、物理的因子化学的因子生物的因子に分けられます。


物理的因子には、機械的刺激、熱、紫外線などがあります。例としては、打撲、捻挫(靱帯損傷)、火傷などがあります。


化学的因子には、強酸、強アルカリ、有害薬品などがあります。例としては、湿疹、火傷などがあります。


生物的因子には、細菌、ウイルス、寄生虫などがあります。例としては、感染性関節炎、外傷後の化膿などがあります。


内因には、アレルギー自己免疫異常代謝異常による炎症物質の産生、臓器の機能異常ストレス(生体に生じた歪み)による組織の破綻などがあります。


自己免疫異常の例としては、アトピー性皮膚炎、関節リウマチなどがあります。


代謝異常の例としては、痛風などがあります。


ストレスの例としては、腱鞘炎、変形性関節症などがあります。


では、次回からは、『炎症』のメカニズムについてみていきましょう。(^^)


つづく・・・


〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.

Feuno-logo-finish-small.jpg
股関節、腰、膝の痛みセラピー
『Feuno/フーノ』
ホームページはこちら


posted by ふなこしのりひろ at 00:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 組織損傷・治癒のしくみ

2012年06月14日

炎症の機序@【炎症のしくみB】

組織が損傷を受けると、直ちに『炎症』が生じ、その中心的役割をなす血管反応がスタートします。これは、次の3つの過程からなります。

@血管内径の変化とそれに伴う血流量の変化

A血管透過性の亢進と滲出液の形成

B細胞成分の血管外への遊走と細胞性滲出物の形成

その後、次の2つの過程をたどります。

C白血球による貪食

D炎症の終焉

では、これらの『炎症』の5つの過程を、詳しくみていきましょう。(^^)



@血管内径の変化とそれに伴う血流量の変化

組織損傷は、血管の破損と出血を伴うため、その直後から止血のための反応が生じます。


まず、血管が破損されると、その血管内皮細胞も損傷されます。すると、血管内皮細胞から、エンドセリンとよばれる化学伝達物質が分泌されます。このエンドセリンによって、破損した部分とその周囲の血管が、一過性に収縮します。


損傷された血管内皮細胞からは、血小板活性化因子も分泌されます。すると、それによって活性化された血小板が、破損した血管に集まり、凝血塊(血の固まりが集まったもの)を作ります。そして、この凝血塊によって、血管の破損された部分が塞がれ、止血されることになります。


また、活性化された血小板からは、セロトニンとよばれる化学伝達物質も分泌されます。このセロトニンは、エンドセリンと同様に、破損した部分とその周囲の血管を一過性に収縮させます。


このエンドセリンセロトニンなどによる血管の一過性の収縮は、通常、数秒〜数分間持続します。この、血管の一過性の収縮も、血流を低下させたり、血管の破損部を小さくさせたりすることで、凝血塊を作りやすくし、止血に貢献していると思われます。


破損した部分とその周囲の血管は、一過性の収縮に引き続き、拡張が生じます。この血管の拡張は、組織が損傷されることで引き起こされる血液中の化学反応により生成されるブラジキニンとよばれる化学伝達物質や、ブラジキニンが組織内の肥満細胞を刺激することで生成されるヒスタミンとよばれる化学伝達物質などが作用することで生じます。


血管が拡張する結果、破損した部分とその周囲の血流量が増加します。この血流量の増加が、“発赤”や“熱感”といった、『炎症』の徴候を生じさせます。また、破損した部分とその周囲の血圧も高くなり、血液の水分が血管から染み出る、濾出という現象も生じます。しかし、この濾出は、次に説明する血管透過性の亢進によって、隠されてしまいます。この血管の拡張は、通常、数十分〜数時間持続します


炎症の機序1.png



つづく・・・


〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.

Feuno-logo-finish-small.jpg
股関節、腰、膝の痛みセラピー
『Feuno/フーノ』
ホームページはこちら


posted by ふなこしのりひろ at 23:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 組織損傷・治癒のしくみ

2012年06月17日

炎症の機序A【炎症のしくみC】

A血管透過性の亢進と滲出液の形成

血管の内側は、血管内皮細胞に覆われています。通常、水や水溶性物質、酸素や二酸化炭素は、血管の内外へ通過できますが、血漿タンパク質(血液に含まれているタンパク質)や細胞は通過できません。


しかし、『炎症』が生じると、ブラジキニンヒスタミンなどの働きによって、血管内皮細胞が収縮します。すると、血管内皮細胞同士の接合部が開くことにより、物質が血管を通過しやすくなります。つまり、血管透過性が亢進します。その結果、タンパク質を含んだ血漿成分が血管の外に滲出し、“腫脹”という『炎症』の徴候が生じます。



B細胞成分の血管外への遊走と細胞性滲出物の形成

血管透過性が亢進すると、血管内の液体成分が減少します。すると、血液の粘性が増加し、血流速度が低下します。そのため、通常は血管の中心部を流れている細胞成分が、血管内壁側に集まる現象(辺縁趨向)が生じます。細胞成分の一つである白血球は、血管内壁を転がりながら血管内皮細胞に接着し、形を扁平化させて、血管内皮細胞の隙間から血管の外へ通過します。


白血球は、血液に含まれる細胞成分の一つで、主な役目は、血管外に遊出して、組織内に侵入してきた細菌や、異物などを、食作用によって細胞内に取り込み、消化分解して無毒化することです。白血球は、好中球好酸球好塩基球単球リンパ球に分類され、それぞれ機能が異なります。


血管外へ出た白血球は、『炎症』が生じている損傷部位に向かって遊走します。この現象は、白血球が、損傷部位に出現しているサイトカインとよばれる様々な種類の情報伝達タンパク質に引き寄せられるようにして生じます。



C白血球による貪食

『炎症』が生じている部位に遊走した白血球のうち、最初に働き出すのは、好中球です。好中球は、組織に侵入した細菌や細胞の残骸を好中球内に取り込み、好中球内のタンパク質分解酵素や活性酸素によって分解、死滅させます。なお、好中球は、最終的にアポトーシスを起こし、マクロファージに貪食されます。


アポトーシスとは、細胞がある種の刺激を受けたときに、内在するプログラムによって自発的に死滅する現象です。


マクロファージは、単球が組織に移行して分化したもので、組織に侵入した異物、自己の死細胞、脂肪などを貪食する、大型の食細胞です。


好中球より少し遅れて、マクロファージが損傷部に集まり、アポトーシスを起こした好中球や、組織の残骸、細菌を貪食します。



D炎症の終焉

壊死した細胞の除去が終わると、『炎症』に関わった化学伝達物質は中和されていきます。また、血管拡張と血管透過性の亢進もみられなくなり、血流も正常に戻り、滲出していた血漿成分はリンパ管を通って回収されていきます。マクロファージは、不要となった炎症細胞白血球肥満細胞)を貪食し、自らアポトーシスするか、血漿とともにリンパ管を通って、その場を去ります。


このようにして『炎症』は終焉を迎えます。『炎症』の終焉は、組織損傷の場合は、通常、受傷後7〜10日でみられます。『炎症』の終焉は、同時に組織修復の始まりでもあり、特にマクロファージなどから分泌されるサイトカインが、その橋渡しの役割を担っています。このことからも、『炎症』は、生体防御反応として、不可欠なものであるといえます。


一方、組織損傷が繰り返して生じる場合や、自己免疫異常による『炎症』の場合は、組織修復と同時に新たな『炎症』が始まるため、はっきりとした『炎症』の終焉は認められません。つまり、これが慢性炎症であり、その治療には難渋することが多いです。(>_<)



※『炎症』の『痛み』

『炎症』の過程では、様々な化学伝達物質が生じます。この化学伝達物質の中には、『痛み』を生じさせるものがあります。『炎症』の『痛み』は、その化学伝達物質が、侵害受容器に受け取られることにより生じます。つまり、この化学伝達物質により、“疼痛”という『炎症』の徴候が生じます。


『痛み』を生じさせる化学伝達物質には、これまでの説明で登場した、セロトニンブラジキニンヒスタミンや、登場していないプロスタグランジンなどがあります。プロスタグランジンは、白血球血小板血管内皮細胞から、いくつかの化学反応を経て生じます。プロスタグランジンは、単独では『痛み』を生じさせませんが、ブラジキニンに作用して、『痛み』を増強させます。


これらの『痛み』を生じさせる化学伝達物質は、D炎症の終焉でも説明したように、壊死した細胞の除去が終わると中和されていきます。その結果、『痛み』は消失していきます。


炎症の機序2.png



おわり(^^)


〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.
中野昭一 編:図解生理学 第2版,医学書院.2000.
奈良勲 監,内山靖 編:理学療法学事典,医学書院.2006.

Feuno-logo-finish-small.jpg
股関節、腰、膝の痛みセラピー
『Feuno/フーノ』
ホームページはこちら


posted by ふなこしのりひろ at 20:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 組織損傷・治癒のしくみ

2012年06月18日

結合組織の治癒@【治癒のしくみ@】

組織損傷の治癒過程は、創傷(体表組織の損傷)、靱帯損傷、腱損傷など、主に結合組織で構成された組織と、筋肉とでは、そのメカニズムがやや異なります。それぞれどのようにして治癒していくのかみていきましょう。今回は結合組織についてです。(^^)


創傷、靱帯損傷、腱損傷など、主に結合組織で構成された組織が損傷すると、残存する細胞が増殖し、損傷された組織を元通りに修復する機転が生じ、治癒へと向かいます。この治癒過程は、@炎症期A増殖期B成熟期の3つに分けることができ、それぞれが独立することなく、オーバーラップしながら進んでいきます。ここでは、創傷の治癒過程をみていきますが、その内容は、靱帯筋膜といった、結合組織で構成された組織の損傷にも、おおむね当てはめること(普遍化)ができるとされています。



@炎症期

炎症期は、【炎症のしくみ】で説明した組織学的変化がみられます。この炎症期が完全に終了する前に、次の増殖期の組織学的変化が始まります。つまり、炎症期で生じた組織学的変化が、増殖期の組織学的変化を促す、橋渡しの役割があります。なかでも、血小板マクロファージから分泌される様々なサイトカイン(PDGF、TGF-β、VEGFなど)は、増殖期の主要な組織学的変化である、肉芽組織形成血管新生に、不可欠なものです。炎症期は、受傷〜7日ほどの時期にみられます。



A増殖期

増殖期は、受傷して約3日〜2週間の時期で、未熟ながらも組織の連続性が修復されます。この時期の主な組織学的変化には、表皮における上皮化真皮(創傷が深い場合は皮下組織筋膜も含む)における肉芽組織形成血管新生があります。


 1.上皮化

創傷によって欠損した表皮は、上皮化とよばれる反応によって治癒します。これは受傷後数分以内に始まります。まず、創部周辺の表皮基底層から、新たなケラチノサイト(角化細胞)が次々に供給され、表皮を埋め尽くし、創表面が閉鎖します。そして、基底層の細胞の働きにより、基底膜基底層真皮の間の膜)が形成されると、上皮化が完了し、表皮の再生が完了します。この上皮化は、その範囲が限られており、創部周辺から2〜3cmの範囲を覆うことしかできないといわれています。


ケラチノサイトとは、角化細胞のことで、表皮の大部分を構成するものです。成熟するに伴い、上方の層へ移行し、表皮の各層を構成します。約2週間で角質層へ移行し、さらに2週間かけて、垢となって剥がれ落ちます。(皮膚の痛み【運動器の痛み@】参照)


 2.肉芽組織形成

肉芽組織とは、主に結合組織で構成された組織の損傷後に起こる修復反応として作られる新生組織のことです。これは、新生血管、結合組織、線維芽細胞などで構成されます。


線維芽細胞とは、結合組織を構成する細胞の一つで、細胞外基質(細胞の周りを構成する骨格のようなもの:コラーゲンなど)を合成します。


炎症期に損傷部へ集まった血小板マクロファージなどから分泌されるサイトカイン(PDGF)は、線維芽細胞を刺激します。その結果、受傷後3〜5日までに、活性化した線維芽細胞が、創部に集積、侵入し、創部において最も有意な細胞となります。そして、血小板、活性化したマクロファージ線維芽細胞からは、別のサイトカイン(TGF-β)が分泌されます。そのサイトカイン(TGF-β)は、線維芽細胞を増殖させ、線維芽細胞細胞外基質の合成を促します。すると、創部は、細胞外基質で埋め尽くされるようになります。これが、肉芽組織形成といわれる反応です。


この肉芽組織は、徐々にコラーゲンに置き換わっていきます。ただ、この時期のコラーゲンは、主にタイプVコラーゲンで構成されており、線維自体も細く、線維束も形成していないことから、抗張力に乏しいものとなっています。


コラーゲンとは、真皮、靱帯、腱、骨、軟骨などを構成するタンパク質の一つで、細胞外基質の主成分です。コラーゲン線維は、太い方から順に、T〜Xに分類されます。


 3.血管新生

増殖期では、新たに形成された肉芽組織の構成成分に、酸素と栄養素を供給するため、血管新生とよばれる反応がみられます。この反応の中心的役割をなすのが、血管内皮細胞です。これは、マクロファージ線維芽細胞から分泌されるサイトカイン(FGF、VEGFなど)によって刺激を受けると、分裂、増殖し、創部に集積してきます。その結果、創部には毛細血管が新生し、毛細血管ネットワークが作られていきます。なお、血管新生の乏しい肉芽組織は、創傷治癒が遅延、障害され、難治性になるとされています。



つづく・・・


〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.
奈良勲 監,内山靖 編:理学療法学事典,医学書院.2006.

Feuno-logo-finish-small.jpg
股関節、腰、膝の痛みセラピー
『Feuno/フーノ』
ホームページはこちら


posted by ふなこしのりひろ at 23:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 組織損傷・治癒のしくみ