2012年06月19日

結合組織の治癒A【治癒のしくみA】

B成熟期

受傷して約5日以降は、成熟期とよばれる時期になります。創傷が重症な場合は、この時期が、年単位に及ぶこともあります。成熟期の主な組織学的変化は、創全体を閉鎖するための創収縮と、肉芽組織から瘢痕組織へ変化する過程におけるコラーゲンのリモデリングがあげられます。


瘢痕組織とは、欠損した組織が、本来の細胞や組織によって補充されず、その代わりに置き換わった結合組織のことです。


 1.創収縮

肉芽組織が形成されると、創の収縮が生じます。この反応は、早い場合では受傷後3〜4日後には始まります。これによって、創全体が閉鎖し、傷口も小さくなります。創収縮のメカニズムは、まだ完全には明らかにされていませんが、それを制御しているのは、線維芽細胞から分化した筋線維芽細胞と考えられています。


 2.コラーゲンのリモデリング

受傷後3〜5日の増殖期から始まった、サイトカイン(TGF-β)による線維芽細胞におけるコラーゲン合成は、数週間持続します。これにより、創部にはコラーゲンが凝集します。ちなみに、切開創の場合、サイトカイン(TGF-β)の量は、受傷後7〜14日がピークとされおり、これが抜糸の時期の根拠となっています。


コラーゲンは合成される一方で分解も受けています。この分解を制御しているのは、マクロファージ線維芽細胞などから分泌される、タンパク分解酵素です。


このように、コラーゲンのリモデリングは、線維芽細胞における合成と、タンパク分解酵素による分解の、バランスによって成り立っています。そして、最終的に肉芽組織は、コラーゲン線維などの細胞外基質の中に、少数の線維芽細胞が存在する、瘢痕組織になります。


その後、創部は数ヶ月をかけて、コラーゲンの合成と分解(リモデリング)を起こし、成熟した瘢痕組織になっていきます。この過程で、初期に合成されたタイプVコラーゲンは、タイプTコラーゲンに置き換わり、コラーゲン線維自体も太くなります。また、コラーゲン線維束も形成され、その配列も網目状の形態をとるようになるため、抗張力も増加します。


加えて、新生血管は消退し、線維芽細胞の数も減少します。しかし、皮膚では完全に治癒していても、その強さは正常の80%程度であり、弾力性も少なく、皮膚付属器官(毛、汗腺など)も欠いていることから、機能的には不十分なものとなっています。



以上が、結合組織の治癒のしくみとなります。では、次回からは、筋肉の治癒についてみていきましょう。(^^)


つづく・・・


〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.
奈良勲 監,内山靖 編:理学療法学事典,医学書院.2006.

Feuno-logo-finish-small.jpg
股関節、腰、膝の痛みセラピー
『Feuno/フーノ』
ホームページはこちら


posted by ふなこしのりひろ at 23:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 組織損傷・治癒のしくみ

2012年06月20日

筋肉の治癒【治癒のしくみB】

慣れない運動を行ったあとにみられる“遅発性筋痛(いわゆる筋肉痛)”や、スポーツ時にみられる“肉離れ”は、筋肉が損傷した具体的な例です。これらの損傷した筋肉は、どのようにして治っていくのでしょうか?


筋肉の損傷(筋損傷)とは、筋線維が損傷することです(筋肉の構造は、筋肉の痛み【運動器の痛みA】参照)。ここでは、筋肉の治癒を、@筋線維の壊死A筋線維の再生に大きく分けて、みていきます。



@筋線維の壊死

筋損傷では、筋線維(筋細胞)の細胞膜が破損します。すると、その細胞膜の透過性に異常が生じ、Ca2+筋線維内に流入し、その濃度が上昇します。Ca2+は、筋肉が収縮するスイッチとなっています。したがって、Ca2+濃度が上昇した筋線維は、過収縮状態となります。そして、Ca2+依存性のタンパク質分解酵素が活性化し、筋線維のタンパク質の融解、断片化が始まり、筋線維は壊死を起こします。


ただ、筋線維は多核細胞であるため生存力が強く、壊死を起こした部位も一部にとどまり、筋線維全体の壊死には至りません。その後、筋線維は、再生、回復します。


筋損傷が、単一の筋線維の部分的な壊死である場合は、大きな出血もなく、損傷直後に痛みは生じません。しかし、筋線維の壊死が発生した1〜2日後には、好中球マクロファージが損傷した部分に浸潤し、炎症反応がピークを迎えると、痛みを生じるようになります。このメカニズムは、“遅発性筋痛”の一因として有力視されています。


一方、筋損傷の程度が大きいと、筋線維の壊死にとどまらず、筋膜を含んだ筋組織の断裂に及び、出血も顕著にみられます。出血部位やその周辺では、炎症による血管反応が生じ、炎症の徴候である、発赤熱感腫脹疼痛が生じるようになります。これが、“肉離れ”とよばれる筋損傷です。この“肉離れ”の治癒過程はでは、筋線維の壊死、再生に加え、結合組織で構成される筋膜の修復過程を伴いますので、治癒するまでには時間がかかります。



A筋線維の再生

筋内膜の中には、筋衛星細胞という、通常は活動を休止している細胞が存在します。筋線維に壊死が生じると、この筋衛星細胞が活性化し、筋線維の再生が始まります。


筋衛星細胞は、マクロファージの活動の終了を待たずに、筋線維の壊死が発生した約1日後から活性化し、筋芽細胞に分化して、増殖を繰り返します。筋芽細胞の増殖がある程度進行すると、次に筋芽細胞どうしの融合が始まり、筋管細胞へと分化します。これは壊死から約3日後によくみられます。


壊死から約7日後筋管細胞は、壊死した筋線維の両端をつなぎ合せるように融合し、筋線維を再生します。壊死から約1ヶ月後には、筋線維の回復はほぼ終了し、筋線維は元通りになります。また、筋管細胞がそのまま成長して新たな筋線維となり、筋線維の数が増加することもあります。



以上のように、筋線維の修復には、1週間ぐらいの時間が必要なようです(^_^;)。


おわり(^^)


〈主な参考文献〉
松原貴子,沖田実,森岡周:ペインリハビリテーション,三輪書店.2011.

Feuno-logo-finish-small.jpg
股関節、腰、膝の痛みセラピー
『Feuno/フーノ』
ホームページはこちら


posted by ふなこしのりひろ at 22:33| Comment(4) | TrackBack(0) | 組織損傷・治癒のしくみ
スポンサーリンク