前回まで説明していたフォアフットロッカーは、踵が持ち上がることで始まり、反対側の足が床に着くことで終わります。
反対側の足が床に着いたからといって、すぐにフォアフットロッカーが生じていた足が床から離れるわけではありません。しばらくは、中足骨頭から足趾にかけて、床に着いたままの状態が続きます。その後、中足骨頭が持ち上がり、足趾、最終的に母趾(親指)が床から離れていきます。
この間、中足骨頭や足趾を支点にして、脛骨が前方へ回転していきます。これをトウロッカー(足趾ロッカー)といいます(図1)。このとき、足関節は底屈していき、膝関節は屈曲していきます(曲がっていきます)。
このトウロッカーで重要なことは、脛骨を前進させることです。脛骨を前進させ、推進力を生むことです。
このとき、脛骨を前進させるためには、足関節を底屈させなければなりません(足首を倒す)。
実は、この足関節を底屈させる力の源は、なんと、筋肉ではなく、主にアキレス腱なのです!(図2)
反対側の足が床に着くと、フォアフットロッカーが生じていた脚にかかっている力(体重など)が、急速に小さくなっていきます。このため、足関節をしっかり固定する必要がなくなり、ヒラメ筋や腓腹筋は、急速に力を弱めます。
一方、フォアフットロッカーが終わるまで、アキレス腱は、ヒラメ筋と腓腹筋の力によって引き伸ばされています。そして、反対側の足が床に着くことにより、脚にかかっている力が急速に小さくなり、また、ヒラメ筋と腓腹筋の力が弱くなると、引き伸ばされていたアキレス腱は元の長さに戻ろうと縮まります。
このアキレス腱の縮まる力で、足関節は底屈していくのです!そして、脛骨は前進していきます。
このように、アキレス腱は、バネのような働きをしているのです。
整理すると次のようになります。
@アキレス腱が、ヒラメ筋と腓腹筋の力によって引き伸ばされる
A反対側の足が床に着く
B脚にかかっている力や、ヒラメ筋と腓腹筋の筋肉の力が小さくなる
C引き伸ばされていたアキレス腱が、元の長さに戻ろうとして縮まる
D足関節が底屈する
E脛骨が前進する
前回、プッシュオフ(push off:踏み切り、蹴り出し)という用語を紹介しました。このプッシュオフという用語は、このトウロッカーのときに用いられる方が適切だと思われます。
ただ、トウロッカーでのプッシュオフは、身体を前進させるものではなく、脚を前進させるものです。
以上のように、トウロッカーは、反対側の足が床に着くことで始まり、足趾が床から離れることで終わります。
今回で正しい歩き方を理解するために必要な、4つのロッカー機構の説明は終わりになります。次回は、推進力の生成についてまとめます。(^^)/
つづく・・・
〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.