2014年06月04日

はじめに【関節にかかる荷重@】

「変形性関節症」という疾患があります。代表的なものでは、「変形性膝関節症」、「変形性股関節症」があります。これは、何らかの要因で、関節が変形してしまうものです。


その重要な要因のひとつが、関節に加わる圧迫力とされています。つまり、関節に大きな荷重がかかることで、関節が変形してしまうのであろうということです。


また、「椎間板ヘルニア」という疾患があります。これは、何らかの要因で、背骨の間に挟まっている“椎間板”の中身(髄核)が飛び出てしまうものです。


この大きな要因のひとつが、椎間板に加わる圧迫力とされています。つまり、椎間板に大きな荷重がかかると、髄核が飛び出してしまうであろうということです。


では、関節や椎間板に大きな荷重がかかる状態とはどのようなものがあるのでしょうか?また、関節や椎間板にかかる荷重が最も小さい状態とはどのようなものでしょうか?


このことについては、多くの方々、もっと言えば、多くの医療従事者が、気づいていながら目をつぶっていることがあります。


この【関節にかかる荷重】シリーズでは、このことにも焦点を当てながら話を進めていこうと思います。ここでは関節についてのみ説明していきますが、椎間板や他の部位(脊椎(背骨)など)にかかる荷重も同様です。



骨と関節.JPG

図1:骨と関節



図1は、骨と関節のイラストです。この図1のように、骨の上に骨が載ってバランスを保っている場合、この関節にかかる荷重は、何によるものでしょうか?


関節と筋肉.JPG

図2:関節にかかる荷重



それは、図2-aのように、骨の重さ、重力“M”によるものです。言い方を変えると、この関節には、骨の重力“M”しかかかっていません。


この状態から、関節の左右にある筋肉に力が入ると(図2-b)、この関節にかかる荷重はどうなるでしょうか??


つづく・・・


〈主な参考文献〉
鳥巣岳彦,国分正一編:標準整形外科学 第9版.医学書院,2006.

Feuno-logo-finish-small.jpg
股関節、腰、膝の痛みセラピー
『Feuno/フーノ』
ホームページはこちら


posted by ふなこしのりひろ at 23:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 荷重のしくみ

2014年06月05日

筋力と荷重と変形【関節にかかる荷重A】

関節と筋肉の荷重.JPG

図1:関節にかかる筋肉の荷重



筋肉には、力が入ると、図1のように、それが付着している部位を引き付ける力“T”が生まれます。つまり、関節に筋肉の力“T”が荷重として加わります。


関節への骨と筋肉の荷重.JPG

図2:関節にかかる骨と筋肉の荷重



その結果、関節には、骨の重力“M”(図2-a)と筋肉の力“T”(図2-b)の合計の力(図2-c)が荷重としてかかることになります。


ここで、関節の荷重が最も小さいのは、当然ながら筋肉の力が加わっていないとき(図2-a)です。


つまり、筋肉に力を入れない方が、関節への圧迫力は小さく、関節の変形が起こりにくいということです。


同様に、筋肉に力を入れない方が、椎間板ヘルニア、骨の圧迫骨折が起こりにくいということです。


このことが、多くの方々、医療従事者が気づいていながら目をつぶっていることです。


「変形性膝関節症」、「変形性股関節症」、「腰椎椎間板ヘルニア」となってしまったとき、症状を改善させるために筋力強化がよく勧められ、多くの人がそれを実践しているのではと思います。


この筋力強化は、関節の不安定さがこれらの疾患発生の要因とされているために行われているものです。関節を筋力で固めて、関節の不安定さを解消しようというものです。


しかし、これまでの説明のように、強い筋力を関節にかければかけるほど、関節は変形しやすくなります。強い筋力を椎間板にかければかけるほど、ヘルニアになりやすくなります。


この筋力強化、筋力で関節を固める方法は、疾患改善の方法としては、矛盾していると思います。


つづく・・・


〈主な参考文献〉
鳥巣岳彦,国分正一編:標準整形外科学 第9版.医学書院,2006.

Feuno-logo-finish-small.jpg
股関節、腰、膝の痛みセラピー
『Feuno/フーノ』
ホームページはこちら


posted by ふなこしのりひろ at 22:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 荷重のしくみ

2014年06月09日

てこの原理【関節にかかる荷重B】

関節屈曲と筋肉.JPG

図1:曲がった関節と荷重



図1のように、筋肉によって関節が曲がった状態で固定されているとき、この関節にかかる荷重はどのくらいあるのでしょうか??その荷重の大きさは、「てこの原理」を利用すれば知ることができます。



てこ.jpg

図2:てこのつり合い



図2のように、長い緑色の板の端に小さいボールと大きいボールが載っていて、その板がどちらにも傾かずつり合っているとします。



てこ記号.jpg

図3:てこのつり合い



このとき、図3のように、小さいボールの重量をW1、大きいボールの重量をW2、小さいボールからオレンジ色の支点(以下、支点)までの距離をa、大きいボールから支点までの距離をbとすると、次の式(式1)が成立しています(緑色の板の重さはないものとします)。



てこ数式.jpg

式1:てこの原理



私たちがいる世界では、常にこの式の関係が成り立っており、このことを「てこの原理」と言います。これを利用すれば、不明な値を知ることができます。


例えば、W1=15kg、a=20cm、b=10cmで、W2の重量が分からないとき、式1を使ってW2の重量を知ることができます。


15×20=W2×10

W2=(15×20)÷10=30

となり、W2は30kgということが分かります。


このとき、支点には、W1とW2を足した荷重がかかっています。その荷重は、

W1+W2=15+30=45kg

となります。


この「てこの原理」を利用すれば、図1の関節にかかる荷重を知ることができます。


つづく・・・


〈主な参考文献〉
中村隆一,齋藤宏,長崎浩:基礎運動学 第6版,医歯薬出版.2003.

Feuno-logo-finish-small.jpg
股関節、腰、膝の痛みセラピー
『Feuno/フーノ』
ホームページはこちら


posted by ふなこしのりひろ at 23:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 荷重のしくみ

2014年06月13日

曲がった関節の荷重【関節にかかる荷重C】

関節屈曲と筋肉.JPG

図1:曲がった関節と荷重



前回に引き続いてですが、図1のように、筋肉によって関節が曲がった状態で固定されているとき、この関節にかかる荷重はどのくらいあるのでしょうか??


曲がった関節とてこの原理.jpg

図2:曲がった関節と「てこの原理」



図1に前回説明した「てこの原理」を当てはめたものが図2です。関節の回転軸(関節軸)はオレンジ色の点の部分で、ここが支点となります。


Mは骨の重量、Tは筋肉の力、aは骨の重心から関節軸までの距離、bは筋肉から関節軸までの距離です。


関節はこの状態でつり合っているので、次の式(式1)が成立しています。


てこ数式関節.jpg

式1:固定している関節での「てこの原理」



ここで、例えば、M=10kg、a=2cm、b=1cmであるなら、筋肉の力Tは、


10×2=T×1

T=(10×2)÷1=20

となり、筋肉の力Tは20kgであることが分かります。


このとき、関節には、MとTを足した荷重がかかっています。その荷重は、

M+T=10+20=30kg

となります。


直立と曲がった関節の比較.jpg

図3:関節が曲がっていないときと曲がっているときの荷重



つまり、関節にかかる荷重は、関節が曲がっていないときは骨の重量Mだけですが(図3-a)、関節が曲がっているときは骨の重量Mにさらに筋肉の力Tが加わります(図3-b)


では、関節にかかる荷重は、関節の曲がっている角度が大きくなるとどうなるでしょうか?また、その角度が小さくなるとどうなるでしょうか?


つづく・・・


〈主な参考文献〉
中村隆一,齋藤宏,長崎浩:基礎運動学 第6版,医歯薬出版.2003.

Feuno-logo-finish-small.jpg
股関節、腰、膝の痛みセラピー
『Feuno/フーノ』
ホームページはこちら


posted by ふなこしのりひろ at 22:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 荷重のしくみ

2014年06月17日

関節の曲がり具合と荷重【関節にかかる荷重D】


曲がった関節とてこの原理.jpg

図1:曲がった関節と「てこの原理」



図1は、筋肉によって曲がった状態で固定されている関節に、「てこの原理」を当てはめたもので、Mは骨の重量、Tは筋肉の力、aは骨の重心から関節軸までの距離、bは筋肉から関節軸までの距離です。


てこ数式関節.jpg

式1:固定している関節での「てこの原理」


このとき、式1が成立しています。


てこ数式関節変形.jpg

式2:固定している関節での筋肉の力を求める式


式1を、筋肉の力Tを求める式に変形すると、式2のようになります。


曲がっていく関節.jpg

図3:曲がっていく関節



図3は、関節をA、B、Cの順に曲げていったときのものです。この図3から、筋肉の力T以外で変化のあるものは、骨の重心から関節軸までの距離aです。


関節が曲がっているほど、aの値が大きいことが分かります。


ここで、式2を見てみると、aの値が大きいほど、Tの値、すなわち筋肉の力が大きいことが分かります。


前回説明したように、関節にかかる荷重は、骨の重さと、筋肉の力を合わせたものです。


つまり、関節にかかる荷重は、関節の曲がっている角度が大きくなるほど大きくなり、その角度が小さくなるほど小さくなります


したがって、関節にかかる荷重を小さくするには、できるだけ関節を曲げないようにした方が良い、ということになります。


※一般的には、関節の角度の大きさで荷重の大きさが決まるという訳ではなく、重心線と関節軸の距離で荷重の大きさが決まります


つづく・・・


〈主な参考文献〉
中村隆一,齋藤宏,長崎浩:基礎運動学 第6版,医歯薬出版.2003.

Feuno-logo-finish-small.jpg
股関節、腰、膝の痛みセラピー
『Feuno/フーノ』
ホームページはこちら


posted by ふなこしのりひろ at 10:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 荷重のしくみ