2014年06月05日

筋力と荷重と変形【関節にかかる荷重A】

関節と筋肉の荷重.JPG

図1:関節にかかる筋肉の荷重



筋肉には、力が入ると、図1のように、それが付着している部位を引き付ける力“T”が生まれます。つまり、関節に筋肉の力“T”が荷重として加わります。


関節への骨と筋肉の荷重.JPG

図2:関節にかかる骨と筋肉の荷重



その結果、関節には、骨の重力“M”(図2-a)と筋肉の力“T”(図2-b)の合計の力(図2-c)が荷重としてかかることになります。


ここで、関節の荷重が最も小さいのは、当然ながら筋肉の力が加わっていないとき(図2-a)です。


つまり、筋肉に力を入れない方が、関節への圧迫力は小さく、関節の変形が起こりにくいということです。


同様に、筋肉に力を入れない方が、椎間板ヘルニア、骨の圧迫骨折が起こりにくいということです。


このことが、多くの方々、医療従事者が気づいていながら目をつぶっていることです。


「変形性膝関節症」、「変形性股関節症」、「腰椎椎間板ヘルニア」となってしまったとき、症状を改善させるために筋力強化がよく勧められ、多くの人がそれを実践しているのではと思います。


この筋力強化は、関節の不安定さがこれらの疾患発生の要因とされているために行われているものです。関節を筋力で固めて、関節の不安定さを解消しようというものです。


しかし、これまでの説明のように、強い筋力を関節にかければかけるほど、関節は変形しやすくなります。強い筋力を椎間板にかければかけるほど、ヘルニアになりやすくなります。


この筋力強化、筋力で関節を固める方法は、疾患改善の方法としては、矛盾していると思います。


つづく・・・


〈主な参考文献〉
鳥巣岳彦,国分正一編:標準整形外科学 第9版.医学書院,2006.

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2014年06月04日

はじめに【関節にかかる荷重@】

「変形性関節症」という疾患があります。代表的なものでは、「変形性膝関節症」、「変形性股関節症」があります。これは、何らかの要因で、関節が変形してしまうものです。


その重要な要因のひとつが、関節に加わる圧迫力とされています。つまり、関節に大きな荷重がかかることで、関節が変形してしまうのであろうということです。


また、「椎間板ヘルニア」という疾患があります。これは、何らかの要因で、背骨の間に挟まっている“椎間板”の中身(髄核)が飛び出てしまうものです。


この大きな要因のひとつが、椎間板に加わる圧迫力とされています。つまり、椎間板に大きな荷重がかかると、髄核が飛び出してしまうであろうということです。


では、関節や椎間板に大きな荷重がかかる状態とはどのようなものがあるのでしょうか?また、関節や椎間板にかかる荷重が最も小さい状態とはどのようなものでしょうか?


このことについては、多くの方々、もっと言えば、多くの医療従事者が、気づいていながら目をつぶっていることがあります。


この【関節にかかる荷重】シリーズでは、このことにも焦点を当てながら話を進めていこうと思います。ここでは関節についてのみ説明していきますが、椎間板や他の部位(脊椎(背骨)など)にかかる荷重も同様です。



骨と関節.JPG

図1:骨と関節



図1は、骨と関節のイラストです。この図1のように、骨の上に骨が載ってバランスを保っている場合、この関節にかかる荷重は、何によるものでしょうか?


関節と筋肉.JPG

図2:関節にかかる荷重



それは、図2-aのように、骨の重さ、重力“M”によるものです。言い方を変えると、この関節には、骨の重力“M”しかかかっていません。


この状態から、関節の左右にある筋肉に力が入ると(図2-b)、この関節にかかる荷重はどうなるでしょうか??


つづく・・・


〈主な参考文献〉
鳥巣岳彦,国分正一編:標準整形外科学 第9版.医学書院,2006.

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2014年02月18日

エネルギーの温存J【歩行の基本27】

b.精密な感覚機能

前回説明したように、私たちの歩行は、重力と慣性力を利用しており、筋力はそれらをコントロールするために必要最低限に発揮されているにすぎません。それゆえに、歩行時のエネルギー消費を大きく抑えることが可能となっているのです。


しかし、この筋力は、必要なときに、必要な強さで発揮されなければ、正しい歩き方、エネルギー消費を抑える歩き方はできません。この筋力発揮は、まさに絶妙なコントロールによってなされているのです。



どの筋肉の筋力を、どのタイミングで、どの程度の強さで発揮するかを決めるには、そのときの身体の姿勢を把握していなければなりません。


そして、各関節の位置や、関節がどの方向にどれだけ曲がっているのかを把握していなければなりません。


さらに、歩いているときは、リアルタイムに姿勢が変化し、関節の位置や角度が目まぐるしく変わります。



驚くべきことに私たちは、歩くときの、この恐ろしいほど大量の情報を、無意識に正確に把握しているのです。


それを行っているのが、様々な感覚神経と脳です。感覚神経の末梢の先端には、感覚器といわれる、何らかの物理的刺激や化学的刺激を受け取る受容器があります。



身体の運動を把握する感覚器は、腱、筋肉、靱帯、関節包などに存在し、リアルタイムにそれぞれの動きや状態を観察しています。


この感覚器の情報を元に、脳が、関節の角度、腕や脚の運動の方向や速度、身体の部分的な重量、筋肉の状態などを把握します。視覚平衡覚なども、姿勢の把握に役立っています。


そして、この把握を元に、歩くとき、適切なタイミングと強さで筋力を発揮させています。


つまり、私たちは歩くとき、感覚神経と脳による精密な感覚機能が働いているおかげで、必要最低限の筋肉、筋力しか使わずに済んでいるのです。


ちなみに、感覚神経が障害されているとき、ただ単に関節を動かすことは簡単にできるにも関わらず、歩行が困難になることがあります。



今回で、「選択的な筋肉の制御」、そして「エネルギーの温存」についての説明は終わりになります。これまでの説明で、私たちが歩いているとき、様々な工夫、無意識で緻密な計算によって、エネルギーの消費が最大限に抑えられていることが分かりますね。(^^)/


また、今回で、長らく続いた「歩行の基本」も終わりになります。私たちが行っている直立二足歩行は、とても便利な歩行方法ですが、それ相応の複雑で緻密な仕掛けや計算によって行えているのです。この絶妙な仕掛けを忘れずに活用して、正しい歩き方で、快適な毎日を過ごして下さい!!


おわり(^o^)/


〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.
Donald A Neumann:筋骨格系のキネシオロジー(嶋田智明・他監訳).医歯薬出版,2005.

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2014年02月17日

エネルギーの温存I【歩行の基本26】

a.重力と慣性力の利用

推進力の生成@【歩行の基本B】
で説明したように、私たちが歩くときの主な推進力は、“重力”です。


そして、一度歩き出した後、私たちを前進させる主な力はこの“重力”と、“慣性力”です。


慣性力とは、推進力の生成D【歩行の基本F】でも説明しましたが、物体がその運動状態を維持しようとする力です。物体にはそのような性質があります。止まっている物はずっと止まっていようとしますし、動いている物はずっと同じ状態で動いていようとします。


私たちが歩いているとき、身体は前進していますが、身体には前進を維持する力が生じています。この力が、歩いているときの慣性力です。



つまり、歩行において、私たちを前進させている力は、“重力”と“慣性力”であって、“筋力”ではないのです!


私たちは、筋力で踏ん張って、地面を蹴って歩いてるわけではありません。


歩いているときの筋力は、その重力と慣性力が損なわれて失速しないようにするために発揮されているだけなのです。


歩行時の筋力は、床に転がしたボールが真っ直ぐ進むよう、ボールを左右から突いて進路を調整する役目のようなものです。



このように、私たちは歩くとき、重力と慣性力を最大限に利用することにより、必要最低限の筋肉、筋力しか使わずに済んでいるのです。


次回は、「精密な感覚機能」について説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.
Donald A Neumann:筋骨格系のキネシオロジー(嶋田智明・他監訳).医歯薬出版,2005.

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2014年02月16日

エネルギーの温存H【歩行の基本25】

2.選択的な筋肉の制御:必要な筋肉のみ活動させる

復習になりますが、エネルギーの温存@【歩行の基本P】で、「物体を動かすときのエネルギー消費を最小にするには、できるだけ小さい少ない力で、最小の移動に留めるようにすれば良い」と述べました。


そして、私たちが歩くときは、次の2つの工夫により“エネルギーの温存”を図っていると述べました。

1.身体の重心の移動を最小限に抑える(重心移動の最小化)
2.必要な筋肉のみ活動させる(選択的な筋肉の制御)


前回まで説明していた「1.重心移動の最小化」は、“最小の移動”にするための歩き方の工夫になります。


今回から説明する「2.選択的な筋肉の制御」は、“小さい少ない力”にするための歩き方の工夫です。



私たちには様々な筋肉が全身に600個ほど備わっています。歩くときに、それらの筋肉を全て全力で使っているかというと、当然そうではありません。脚を筋肉の棒のようにして歩いているわけではありません(転倒しないように安全に歩くことを目的としている場合は、そのように歩くときもありますが・・・)。


私たちは、普段何気なく歩くとき、必要最低限の筋肉、筋力しか使っていません。


なぜなら、エネルギー消費を最小にするためです。


それを可能にしている要因には、主に次の2つがあります。

a.重力と慣性力の利用
b.精密な感覚機能


次回からは、それぞれの要因について説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.
Donald A Neumann:筋骨格系のキネシオロジー(嶋田智明・他監訳).医歯薬出版,2005.

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