2014年02月16日

エネルギーの温存H【歩行の基本25】

2.選択的な筋肉の制御:必要な筋肉のみ活動させる

復習になりますが、エネルギーの温存@【歩行の基本P】で、「物体を動かすときのエネルギー消費を最小にするには、できるだけ小さい少ない力で、最小の移動に留めるようにすれば良い」と述べました。


そして、私たちが歩くときは、次の2つの工夫により“エネルギーの温存”を図っていると述べました。

1.身体の重心の移動を最小限に抑える(重心移動の最小化)
2.必要な筋肉のみ活動させる(選択的な筋肉の制御)


前回まで説明していた「1.重心移動の最小化」は、“最小の移動”にするための歩き方の工夫になります。


今回から説明する「2.選択的な筋肉の制御」は、“小さい少ない力”にするための歩き方の工夫です。



私たちには様々な筋肉が全身に600個ほど備わっています。歩くときに、それらの筋肉を全て全力で使っているかというと、当然そうではありません。脚を筋肉の棒のようにして歩いているわけではありません(転倒しないように安全に歩くことを目的としている場合は、そのように歩くときもありますが・・・)。


私たちは、普段何気なく歩くとき、必要最低限の筋肉、筋力しか使っていません。


なぜなら、エネルギー消費を最小にするためです。


それを可能にしている要因には、主に次の2つがあります。

a.重力と慣性力の利用
b.精密な感覚機能


次回からは、それぞれの要因について説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.
Donald A Neumann:筋骨格系のキネシオロジー(嶋田智明・他監訳).医歯薬出版,2005.

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2014年02月13日

エネルギーの温存G【歩行の基本24】

e.素早い脚の振り出し

左右の重心移動1.jpg
図1:左右の重心移動


左右の重心移動2.jpg
図2:左右の重心移動



以前エネルギーの温存A【歩行の基本Q】で、二足歩行を行っているときは、重心が左右に移動していることを説明しました(図1、2)。そして、私たちはその重心移動を最小にする工夫として、「素早い脚の振り出し」を行っていると述べました。今回は、これについて説明します。(^^)/


復習になりますが、歩いているときに重心が左右に移動するのは、転倒しないように重心線支持基底面に収めようとしているからです。


もっと正確に言うと、歩いているときに片脚立ちになるとき、支持基底面であるその足の接地面に、重心線を収めようと横に移動しているためです。


つまり、この移動動作は、片脚立ちになる瞬間、重心線支持基底面に収まっていないために生じる動作なのです。



歩行時の転倒戦略.JPG
図3:歩行時に転倒しないための戦略



重心線支持基底面に収まっていない場合、転倒しないようにするには、図3のようにaとbの2つの戦略があります。緑色の矢印は重心線、オレンジ色の部分は支持基底面です。

a:重心線を支持基底面に移動させる
b:支持基底面を重心線が収まるまで広げる


aの戦略をとると、重心を横に移動させることになるため、それに応じたエネルギーが消費されます。


bの戦略をとると、重心を横に移動させる必要がないため、エネルギー消費は最小となります。bの戦略は何をしているかというと、反対側の脚(紫色の棒)を床に着けています。


支持基底面2.jpg
図4:重心線と支持基底面と転倒



エネルギーの温存A【歩行の基本Q】で説明しましたが、支持基底面は、新たな支えを追加すると広がります。転倒しそうなとき、新たな支えを追加して、重心線が収まるよう支持基底面を広げれば、転倒せずにすみます(図4-c')。これを利用して、反対側の脚を新たな支えとして支持基底面を広げることができるのです。


そこで私たちは、エネルギー消費を最小とするため、bの戦略をとろうとします。そして、それを実現しようと、素早く脚を振り出しているのです。


脚の振り出しが遅いと、重心の横移動が必要となりそれによるエネルギー消費が増えるか、もしくは転倒するかのどちらかになります。


実際は、片脚立ちになった瞬間に反対側の脚を床に着くことは不可能であるため、aの戦略を少し取り入れつつ転倒を防ぎながら、素早く脚を振り出しています。


ちなみに、脚の振り出しが素早過ぎてもエネルギー消費が増えます。脚の振り出しが速いということは、歩行速度が速いということです(推進力の生成H【歩行の基本J】参照)。


なお、最もエネルギー消費が少ない歩行速度は、約1.33m/秒(80m/分)との研究結果があります。この速度は、街中を自由に歩く速度にほぼ相当します。この速度より速くても遅くても、エネルギー消費は増加します。


以上のように、私たちは「素早い脚の振り出し」によって、左右の重心移動を最小にする歩き方をしているのです。(^^)/


ちなみに、これまでの研究データによると、左右の重心移動量は、重心移動を最小にする工夫をしていない歩き方では8.0cmほど、工夫をしている歩き方では3.5cmほどです。つまり、工夫をすることによって左右の重心移動量は44%ほどに抑えられているのです。この移動量は、体格の大きさや歩行速度によって異なります。



今回で、「重心移動の最小化」についての説明は終わりになります。


次回からは、もう1つの“エネルギーの温存”の方法、「選択的な筋肉の制御」について説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Donald A Neumann:筋骨格系のキネシオロジー(嶋田智明・他監訳).医歯薬出版,2005.
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.

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2014年02月11日

エネルギーの温存F【歩行の基本23】

◎歩行時の上下の重心移動を最小にする工夫のまとめ

歩行時の上下の重心移動の工夫.jpg
図1:歩行時の上下の重心移動を最小にする工夫



歩行時の上下の重心移動を最小にする工夫についてまとめます。(^^)/


図1は、次の歩き方を横に並べたものです。

A:重心移動を最小にする工夫をしていない歩き方
B:重心移動を最小にする工夫をしている歩き方
  【下への重心移動を最小にする工夫】
   a.水平面での骨盤の回旋
   b.矢状面での足関節の運動
  【上への重心移動を最小にする工夫】
   c.矢状面での膝関節の屈曲
   d.前額面での骨盤の回旋


骨盤の高さに注目すると、Aでの移動量(緑の横線の間隔)に比べて、Bでの移動量(赤い横線の間隔)の方が、大幅に小さいです。


このようにして、私たちは上下の重心移動を最小にする歩き方をしているのです。(^^)/


ちなみに、これまでの研究データによると、上下の重心移動量は、Aでは9.5cmほど、Bでは3.2cmほどです。つまり、工夫をすることによって上下の重心移動量は34%ほどに抑えられているのです。この移動量は、体格の大きさや歩行速度によって異なります。



次回は、左右への重心移動を最小にする工夫、「素早い脚の振り出し」について説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Donald A Neumann:筋骨格系のキネシオロジー(嶋田智明・他監訳).医歯薬出版,2005.
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.

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2014年02月10日

エネルギーの温存E【歩行の基本22】

d.前額面での骨盤の回旋

歩いているときの上への重心移動を最小にするための工夫に、「前額面での骨盤の回旋」があります。


前額面の骨盤回旋.jpg
図1:前額面での骨盤の回旋



図1は、歩いているときの重心が最も高くなっているときを、正面から見た図です。


実は、私たちは、この重心が最も高くなるとき、骨盤を少しだけ回旋させているのです(図1-b)。


重心の高さに注目すると、骨盤を回旋させたときの高さ(赤い横線)が、回旋させていないときの高さ(緑の横線)より低くなっています。つまり、重心の上への移動を小さくできているのです。


私たちはこのように、骨盤を回旋させて上への重心移動が小さくなるような歩き方をしています。



歩行時の上の重心移動.jpg
図2:歩行時の上への重心移動を最小にする工夫



図2は、次の歩き方を横に並べたものです。

a:重心移動を最小にする工夫をしていない歩き方
b:矢状面での膝関節の屈曲を加えた歩き方
c:bに前額面での骨盤の回旋を加えた歩き方


骨盤の高さに注目すると、cの高さ(赤い横線)が最も低くなっています。つまり、「矢状面での膝関節の屈曲」と、「前額面での骨盤の回旋」によって、重心の上への移動を最も小さくできているのです。



以上のように、「矢状面での膝関節の屈曲」と、「前額面での骨盤の回旋」によって、歩くときの重心の上への移動を最小にしているのです。(^^)/


次回は、歩行時の上下の重心移動を最小にする工夫についてまとめます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Donald A Neumann:筋骨格系のキネシオロジー(嶋田智明・他監訳).医歯薬出版,2005.
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.

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2014年02月09日

エネルギーの温存D【歩行の基本21】

c.矢状面での膝関節の屈曲

上下の重心移動.jpg
図1:上下の重心移動



歩いているときは重心が上下に移動していますが(図1)、上への重心移動を最小にするための工夫として、「矢状面での膝関節の屈曲」があります。


棒が歩いているときに重心が最も高くなるときは、片脚立ちになって垂直になるときです。


歩行時の膝関節屈曲.jpg
図2:矢状面での膝関節の屈曲



私たちが歩くときも、このときに膝関節が完全伸展位(0°)のとき、つまり膝が真っ直ぐなときが、もっとも重心が高くなります(図2-a)。


実は、私たちは、この重心が最も高くなるとき、膝関節を少しだけ曲げているのです(図2-b)。


骨盤の高さに注目すると、膝関節を屈曲したときの高さ(赤い横線)が、屈曲していないときの高さ(緑の横線)より低くなっています。つまり、重心の上への移動を小さくできているのです。


私たちはこのように、膝関節を屈曲して上への重心移動が小さくなるような歩き方をしています。


次回は、もう一つの上への重心移動を最小にする工夫、「前額面での骨盤の回旋」について説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
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