2014年02月08日

エネルギーの温存C【歩行の基本S】

b.矢状面での足関節の運動

歩いているときの下への重心移動を最小にするための工夫に、「矢状面での足関節の運動」があります。


足.jpg
図1:“足”



私たちの脚は、棒の先端のようになっているのではなく、足関節を介して“足”が付いています(図1)。この“足”は、足関節から前にも後ろにも広がっています。


脚の長さの変化.jpg
図2:足関節の運動による“脚”の長さの変化



私たちは、この“足”によって、“脚”を機能的に長くすることができるのです。つま先を上げると、踵の長さの分だけ長くなります(図2-b)。つま先を下げると、つま先の分だけ長くなります(図2-c)。このつま先の上げ下げは、足関節の運動で行われます。


歩行時の足関節運動1.jpg
図3:矢状面での足関節の運動


歩行時の足関節運動2.jpg
図4:矢状面での足関節の運動



実は、私たちが歩くときはこの足関節の運動が行われており、“脚”の長さを変化させながら歩いているのです(図3、4)。


この足関節の運動により、重心の高さが低くなるときに脚の長さを長くして、重心の下への移動を小さくしています。


私たちはこのように、足関節を運動させて下への重心移動が小さくなるような歩き方をしています。


歩行時の足関節運動3.jpg
図5:歩行時の下への重心移動を最小にする工夫


歩行時の足関節運動4.jpg
図6:歩行時の下への重心移動を最小にする工夫



図5は、次の歩き方を横に並べたものです。

a:重心移動を最小にする工夫をしていない歩き方
b:水平面での骨盤の回旋を加えた歩き方
c:bに矢状面での足関節の運動を加えた歩き方


骨盤の高さに注目すると、cの高さ(赤い横線)が最も高くなっています。つまり、「水平面での骨盤の回旋」と、「矢状面での足関節の運動」によって、重心の下への移動を最も小さくできているのです。図6は、図5-a〜cを重ねたものです。



以上のように、「水平面での骨盤の回旋」と、「矢状面での足関節の運動」によって、歩くときの重心の下への移動を最小にしているのです。(^^)/


次回は、歩いているときの上への重心移動を最小にする工夫、「矢状面での膝関節の屈曲」について説明していきます。


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Donald A Neumann:筋骨格系のキネシオロジー(嶋田智明・他監訳).医歯薬出版,2005.
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.

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2014年02月04日

エネルギーの温存B【歩行の基本R】

a.水平面での骨盤の回旋

上下の重心移動.jpg
図1:上下の重心移動



前回、二足歩行を行っているときは、重心が上下に移動していることを説明しました(図1)。しかし私たちは、下への重心移動を最小にする工夫として、「水平面での骨盤の回旋」を行っていると述べました。今回は、これについて説明します。(^^)/


骨盤の回旋1.jpg
図2:水平面での骨盤の回旋



実は、私たちは歩くとき、骨盤を回しながら歩いています(図2)。図2は、歩いているところを上から見た図です。この図2のように、例えば左脚を振り出すときは、骨盤の左側も前方へ動いているのです。


このような歩き方は、重心の下への移動を小さくすることができるのです。


骨盤の回旋2.jpg
図3:水平面での骨盤の回旋



図3は、図2の骨盤の回旋を行いながら、図1と同じ歩幅で歩いているものです。


骨盤の回旋3.jpg
図4:水平面での骨盤の回旋による上下の重心移動



図4は、図3に図1を重ねたものです。骨盤の高さに注目すると、骨盤を回旋したときの高さ(赤い横線)が、図1のときの高さ(下の緑の横線)より高くなっています。つまり、重心の下への移動を小さくできているのです。


これは次の理由のためです。同じ歩幅で歩こうとするとき、骨盤を回旋させると、骨盤の長さの分だけ歩幅をかせぐことができできます。すると、両脚の傾きを小さくできるので、その分だけ骨盤の沈み込みを小さくできます。その結果、重心の下への移動が小さくなるのです。


私たちはこのように、骨盤を回旋して下への重心移動が小さくなるような歩き方をしています。


次回は、もう一つの下への重心移動を最小にする工夫、「矢状面での足関節の運動」について説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Donald A Neumann:筋骨格系のキネシオロジー(嶋田智明・他監訳).医歯薬出版,2005.
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.

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2014年02月02日

エネルギーの温存A【歩行の基本Q】

1.重心移動の最小化:身体の重心の移動を最小限に抑える

私たちが歩くとき、身体の重心は当然ながら進行方向へ移動していきます。


前回、私たちはエネルギーを温存するために重心の移動を最小にしていると紹介しましたが、この進行方向への重心の移動は、それが歩行の目的ですので、それを最小化する必要はありません。


上下の重心移動.jpg
図1:上下の重心移動


左右の重心移動1.jpg
図2:左右の重心移動


左右の重心移動2.jpg
図3:左右の重心移動



実は歩くとき、重心は進行方向だけでなく、上下左右にも移動しているのです。二足歩行を行う場合、必ずこの重心の移動が生じます(図1〜3)。


図1〜3は、2本の棒をヒトの脚に見立てて、その棒が歩いているときの図です。水色の棒は右脚、オレンジ色の棒は左脚です。



図1は、棒が歩いているところを横から見たものです。青色の棒は片脚立ちになって左右の棒が重なっている状態を表しています。


骨盤の高さを注目して見ると、歩いているときにその高さが上下しているのが分かります。つまり、重心が上下に移動しているのが分かります。



図2は、棒が歩いているところを正面から見たものです。骨盤の中央にある円は重心です。その重心から下に伸びている緑色の矢印は重心線です。


物体が転倒しないためには、重心線が、物体が床に接している範囲内に収まっていなければなりません。この物体が床に接している範囲は、支持基底面といいます。


支持基底面2.jpg
図4:重心線と支持基底面と転倒



図4は、重心線支持基底面と転倒の関係を示したものです。オレンジ色の部分が支持基底面です。


図4-aとbは、重心線支持基底面の中に収まっているので、転倒しません。


図4-cは、重心線支持基底面から外れてしまっているため、図4-dのように転倒してしまいます。


しかし、図4-cに図のように支柱(紫色の長方形)を設置すると(図4-c')、支持基底面が広くなります。すると、重心線支持基底面の中に収まり、転倒しなくなります。


重心線支持基底面と転倒の関係は、このようになっています。



支持基底面.jpg
図5:歩行時の支持基底面



歩いているときの支持基底面は、片脚立ちになっているときはその足が床に着いている範囲となり、両脚が床に着いているときは両足を含めたその間の範囲です(図5)。


図5は、歩いているときの足跡を上から見た図です。図5-aは片脚立ちになっているとき、図5-bは両脚が床に着いているときのものです。それぞれの図の、左側の水色(右足)とオレンジ色(左足)の部分は足跡で、右側の緑色の部分は支持基底面を表しています。


歩いているときに転倒しないようにするためには、重心線支持基底面内に収めないといけません。


そのため、片脚立ちになっているときは、支持基底面であるその足が床に着いている範囲に重心線を収めないとならなく、重心をその足の方へ移動させなければなりません。


図3は、歩いているときの、両脚が床に着いているときと、片脚立ちになっているときを、重ねたものです。この図から、重心が左右に移動しているのが分かります。



以上のように、二足歩行を行うとき、重心が上下左右に移動していることが分かります。


しかし私たちは、この上下左右の重心の移動が最小となるよう、絶妙な工夫を自然と行っているのです!その工夫は次になります。


【下への重心移動を最小にする工夫】
 a.水平面での骨盤の回旋
 b.矢状面での足関節の運動

【上への重心移動を最小にする工夫】
 c.矢状面での膝関節の屈曲
 d.前額面での骨盤の回旋

【左右への重心移動を最小にする工夫】
 e.素早い脚の振り出し


ここで、水平面、矢状面、前額面という言葉が出てきていますが、これらは簡単に言うと次のようなことです。

水平面:身体を上から見た面
矢状面:身体を横から見た面
前額面:身体を前から見た面


次回からは、正しい歩き方に必要なそれぞれの工夫について説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Donald A Neumann:筋骨格系のキネシオロジー(嶋田智明・他監訳).医歯薬出版,2005.
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.
中村隆一,齋藤宏,長崎浩:基礎運動学 第6版,医歯薬出版.2003.

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2014年01月27日

エネルギーの温存@【歩行の基本P】

Cエネルギーの温存

私たち人間は、種々の細胞と体液から作られています。したがって、私たちが生きていられるのは、それらの細胞が活動しているからです。


細胞が活動するには、いわゆる“エネルギー”が必要です。このエネルギーは、飲食物中の種々の栄養素を吸収し、呼吸によって得られた酸素によって、それらの栄養素を酸化することで作られます。


現代は飽食の時代とはいえ、いつでもどこでもすぐに飲食物を摂取できるわけではありません。言い換えれば、エネルギーを作れなくなることがあるということです。


つまり、エネルギー供給不足によって細胞が活動できなくなり、生きていくことができなくなる危険があるということです。


この危険を小さくするためには、細胞によるエネルギー消費を、できるだけ抑えることが大切なこととなります。つまり、“エネルギーの温存”が大切なこととなります。



さて、歩行についてですが、歩行は“身体”という物体の運動として捉えることができます。


上の説明で使用した“エネルギー”という言葉はやや抽象的ですが、この“エネルギー”は、物理学的には「物体が、他の物体に仕事をする能力」と定義されています。


ここでいう“仕事”とは、「物体を動かすとき、そのときに必要であった力と、動いた距離を掛けたもの」と定義されています。式にすると次のようになります。

仕事=力×距離


つまり、エネルギーとは、「物体を、ある力で、ある距離だけ動かす能力」ということになります。


したがって、物体を動かすときのエネルギー消費を最小にするには、できるだけ小さい少ない力で、できるだけ短い距離に、最小の移動に留めるようにすれば良いということになります。



私たちは歩くとき、この“エネルギーの温存”を様々な方法で自然と行っているのです。大きく分けると、次の2つのことを行っています。

1.身体の重心の移動を最小限に抑える(重心移動の最小化)
2.必要な筋肉のみ活動させる(選択的な筋肉の制御)



これらを実践できていることが、正しい歩き方には必要です。次回からは、「重心移動の最小化」について説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
中野昭一・他:図解生理学 第2版.医学書院,2000.
小出昭一郎,阿部龍蔵,他:詳説 物理.三省堂,1988.
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.
Donald A Neumann:筋骨格系のキネシオロジー(嶋田智明・他監訳).医歯薬出版,2005.

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2014年01月18日

衝撃の吸収D【歩行の基本O】

4.股関節での衝撃の吸収

股関節衝撃吸収.jpg
図1:踵接地時の骨盤の落下(股関節の内転)(正面から見た図)



私たちは歩くとき、2本の脚で交互に身体を支えています。


歩いているとき、例えば右の足が床に着くと、身体の重心がその脚に移動していきます。


スムーズに歩くためには、左の脚は素早く前に振り出されなければなりません。


そのため、右足が床に着いた後、左脚は身体を支えることを速やかにやめてしまいます。


すると、身体の左側は支えがなくなってしまうため、落下していってしまいます(図1)。


実際的には、右の股関節を軸にして骨盤の左側が落下していきます。そして、この骨盤の左側は、約4°落下すると止まります(左足が右足を通過するころと思われる)(図1-b)。


この骨盤の左側が約4°落下している間に、衝撃の吸収が行われています。


落下と内転.jpg
図2:骨盤の落下と股関節の内転
b:aの青色と水色の図の骨盤の位置を一致させた図(左脚は消している)



内転外転.jpg
図3:内転と外転



この骨盤の左側の落下は、右の股関節の動きで言い換えると、右の股関節が内転しているということになります(図2)。


内転とは、身体を正面から見て、腕や脚などが身体の中心に向かう動きのことです(図3-a)。ちなみに、内転の反対の動きである、中心から離れていく動きは、外転といいます(図3-b)。


つまり、股関節でも衝撃の吸収が行われているということです。


上の例で言えば、右の股関節が約4°内転している間に、衝撃の吸収が行われています。


ここでは分かりやすく、骨盤の動きで説明していきます。


足関節や膝関節での衝撃の吸収のときと同様に、この骨盤の落下は、適切な量、適切な時間をかけて行われなければ、衝撃吸収の効果が薄れたり、正しい歩き方を保てなくなったりしてしまいます。


骨盤落下の量が小さかったり、落下する時間が短かったりすると、衝撃を十分に吸収できず、股関節などに大きな力が加わり、身体を損傷してしまいます。


骨盤落下の量が大きいと、衝撃を吸収している途中で身体が落下していき、脚の振り出しが困難となってしまいます。


股関節衝撃吸収筋肉.jpg
図4:股関節外転筋群の働き



この骨盤の落下をコントロールしているのが、骨盤の横にある股関節を外転させる筋肉(股関節外転筋群)です。具体的には、中殿筋小殿筋大殿筋上部線維大腿筋膜張筋後部線維です。


中殿筋小殿筋は、骨盤の外側面と大腿骨の大転子というところを結んでいる筋肉です。小殿筋中殿筋の奥にあります。


大殿筋上部線維は、骨盤の後外側面と脛骨の上外側面を、腸脛靭帯という靱帯を介して結んでいる筋肉です。


大腿筋膜張筋は、上前腸骨棘(ASIS)と脛骨の上外側面を、腸脛靭帯を介して結んでいる筋肉です。


これらの股関節を外転させる筋肉は、踵が床に着いた直後から骨盤の落下が止まるまでの間、筋肉自体が伸ばされながら力を発揮していきます。


つまり、股関節外転筋群が、適切な遠心性収縮をすることで、骨盤の落下をコントロールしています。


そして、この股関節外転筋群が、時間をかけて骨盤の落下を止めることにより、衝撃を吸収するのです。


以上のことから、股関節での衝撃の吸収は、股関節外転筋群(中殿筋小殿筋大殿筋上部線維大腿筋膜張筋後部線維)の働きが重要であることが分かります



以上のしくみで、股関節での衝撃の吸収は行われています。



今回で、衝撃の吸収についての説明は終わりになります。これまでの説明で、私たちが歩いているとき、様々な筋肉が絶妙なタイミングで働いてくれるおかげで、身体を傷めにくくなっているのが分かりますね。このことを忘れずに、正しい歩き方を身につけましょう。(^^)/


次回からは、エネルギーの温存について説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
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