2014年02月04日

エネルギーの温存B【歩行の基本R】

a.水平面での骨盤の回旋

上下の重心移動.jpg
図1:上下の重心移動



前回、二足歩行を行っているときは、重心が上下に移動していることを説明しました(図1)。しかし私たちは、下への重心移動を最小にする工夫として、「水平面での骨盤の回旋」を行っていると述べました。今回は、これについて説明します。(^^)/


骨盤の回旋1.jpg
図2:水平面での骨盤の回旋



実は、私たちは歩くとき、骨盤を回しながら歩いています(図2)。図2は、歩いているところを上から見た図です。この図2のように、例えば左脚を振り出すときは、骨盤の左側も前方へ動いているのです。


このような歩き方は、重心の下への移動を小さくすることができるのです。


骨盤の回旋2.jpg
図3:水平面での骨盤の回旋



図3は、図2の骨盤の回旋を行いながら、図1と同じ歩幅で歩いているものです。


骨盤の回旋3.jpg
図4:水平面での骨盤の回旋による上下の重心移動



図4は、図3に図1を重ねたものです。骨盤の高さに注目すると、骨盤を回旋したときの高さ(赤い横線)が、図1のときの高さ(下の緑の横線)より高くなっています。つまり、重心の下への移動を小さくできているのです。


これは次の理由のためです。同じ歩幅で歩こうとするとき、骨盤を回旋させると、骨盤の長さの分だけ歩幅をかせぐことができできます。すると、両脚の傾きを小さくできるので、その分だけ骨盤の沈み込みを小さくできます。その結果、重心の下への移動が小さくなるのです。


私たちはこのように、骨盤を回旋して下への重心移動が小さくなるような歩き方をしています。


次回は、もう一つの下への重心移動を最小にする工夫、「矢状面での足関節の運動」について説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Donald A Neumann:筋骨格系のキネシオロジー(嶋田智明・他監訳).医歯薬出版,2005.
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.

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2014年02月02日

エネルギーの温存A【歩行の基本Q】

1.重心移動の最小化:身体の重心の移動を最小限に抑える

私たちが歩くとき、身体の重心は当然ながら進行方向へ移動していきます。


前回、私たちはエネルギーを温存するために重心の移動を最小にしていると紹介しましたが、この進行方向への重心の移動は、それが歩行の目的ですので、それを最小化する必要はありません。


上下の重心移動.jpg
図1:上下の重心移動


左右の重心移動1.jpg
図2:左右の重心移動


左右の重心移動2.jpg
図3:左右の重心移動



実は歩くとき、重心は進行方向だけでなく、上下左右にも移動しているのです。二足歩行を行う場合、必ずこの重心の移動が生じます(図1〜3)。


図1〜3は、2本の棒をヒトの脚に見立てて、その棒が歩いているときの図です。水色の棒は右脚、オレンジ色の棒は左脚です。



図1は、棒が歩いているところを横から見たものです。青色の棒は片脚立ちになって左右の棒が重なっている状態を表しています。


骨盤の高さを注目して見ると、歩いているときにその高さが上下しているのが分かります。つまり、重心が上下に移動しているのが分かります。



図2は、棒が歩いているところを正面から見たものです。骨盤の中央にある円は重心です。その重心から下に伸びている緑色の矢印は重心線です。


物体が転倒しないためには、重心線が、物体が床に接している範囲内に収まっていなければなりません。この物体が床に接している範囲は、支持基底面といいます。


支持基底面2.jpg
図4:重心線と支持基底面と転倒



図4は、重心線支持基底面と転倒の関係を示したものです。オレンジ色の部分が支持基底面です。


図4-aとbは、重心線支持基底面の中に収まっているので、転倒しません。


図4-cは、重心線支持基底面から外れてしまっているため、図4-dのように転倒してしまいます。


しかし、図4-cに図のように支柱(紫色の長方形)を設置すると(図4-c')、支持基底面が広くなります。すると、重心線支持基底面の中に収まり、転倒しなくなります。


重心線支持基底面と転倒の関係は、このようになっています。



支持基底面.jpg
図5:歩行時の支持基底面



歩いているときの支持基底面は、片脚立ちになっているときはその足が床に着いている範囲となり、両脚が床に着いているときは両足を含めたその間の範囲です(図5)。


図5は、歩いているときの足跡を上から見た図です。図5-aは片脚立ちになっているとき、図5-bは両脚が床に着いているときのものです。それぞれの図の、左側の水色(右足)とオレンジ色(左足)の部分は足跡で、右側の緑色の部分は支持基底面を表しています。


歩いているときに転倒しないようにするためには、重心線支持基底面内に収めないといけません。


そのため、片脚立ちになっているときは、支持基底面であるその足が床に着いている範囲に重心線を収めないとならなく、重心をその足の方へ移動させなければなりません。


図3は、歩いているときの、両脚が床に着いているときと、片脚立ちになっているときを、重ねたものです。この図から、重心が左右に移動しているのが分かります。



以上のように、二足歩行を行うとき、重心が上下左右に移動していることが分かります。


しかし私たちは、この上下左右の重心の移動が最小となるよう、絶妙な工夫を自然と行っているのです!その工夫は次になります。


【下への重心移動を最小にする工夫】
 a.水平面での骨盤の回旋
 b.矢状面での足関節の運動

【上への重心移動を最小にする工夫】
 c.矢状面での膝関節の屈曲
 d.前額面での骨盤の回旋

【左右への重心移動を最小にする工夫】
 e.素早い脚の振り出し


ここで、水平面、矢状面、前額面という言葉が出てきていますが、これらは簡単に言うと次のようなことです。

水平面:身体を上から見た面
矢状面:身体を横から見た面
前額面:身体を前から見た面


次回からは、正しい歩き方に必要なそれぞれの工夫について説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Donald A Neumann:筋骨格系のキネシオロジー(嶋田智明・他監訳).医歯薬出版,2005.
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.
中村隆一,齋藤宏,長崎浩:基礎運動学 第6版,医歯薬出版.2003.

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2014年01月27日

エネルギーの温存@【歩行の基本P】

Cエネルギーの温存

私たち人間は、種々の細胞と体液から作られています。したがって、私たちが生きていられるのは、それらの細胞が活動しているからです。


細胞が活動するには、いわゆる“エネルギー”が必要です。このエネルギーは、飲食物中の種々の栄養素を吸収し、呼吸によって得られた酸素によって、それらの栄養素を酸化することで作られます。


現代は飽食の時代とはいえ、いつでもどこでもすぐに飲食物を摂取できるわけではありません。言い換えれば、エネルギーを作れなくなることがあるということです。


つまり、エネルギー供給不足によって細胞が活動できなくなり、生きていくことができなくなる危険があるということです。


この危険を小さくするためには、細胞によるエネルギー消費を、できるだけ抑えることが大切なこととなります。つまり、“エネルギーの温存”が大切なこととなります。



さて、歩行についてですが、歩行は“身体”という物体の運動として捉えることができます。


上の説明で使用した“エネルギー”という言葉はやや抽象的ですが、この“エネルギー”は、物理学的には「物体が、他の物体に仕事をする能力」と定義されています。


ここでいう“仕事”とは、「物体を動かすとき、そのときに必要であった力と、動いた距離を掛けたもの」と定義されています。式にすると次のようになります。

仕事=力×距離


つまり、エネルギーとは、「物体を、ある力で、ある距離だけ動かす能力」ということになります。


したがって、物体を動かすときのエネルギー消費を最小にするには、できるだけ小さい少ない力で、できるだけ短い距離に、最小の移動に留めるようにすれば良いということになります。



私たちは歩くとき、この“エネルギーの温存”を様々な方法で自然と行っているのです。大きく分けると、次の2つのことを行っています。

1.身体の重心の移動を最小限に抑える(重心移動の最小化)
2.必要な筋肉のみ活動させる(選択的な筋肉の制御)



これらを実践できていることが、正しい歩き方には必要です。次回からは、「重心移動の最小化」について説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
中野昭一・他:図解生理学 第2版.医学書院,2000.
小出昭一郎,阿部龍蔵,他:詳説 物理.三省堂,1988.
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.
Donald A Neumann:筋骨格系のキネシオロジー(嶋田智明・他監訳).医歯薬出版,2005.

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2013年10月22日

障害を負ったときの心の動き【障害受容】

大きな怪我をしたり、大きな病気になったりしたとき、みなさんはどんな心境になるでしょうか??(>_<)


「ま、そのうち良くなるだろうし、大したことはないんじゃないかな」と楽観的な心境でしょうか?


「大変なことになってしまった。ずっと良くならず、大きな後遺症が残ってしまうかも。今まで出来ていたことが出来なくなってしまう。好きなことや、やりたいことが出来なくなってしまう。死んだ方がましだ」と絶望的な心境でしょうか?


実際には、楽観的、絶望的な心境を、行ったり来たりすることがほとんどだと思います。


そして、その怪我や病気によって障害を負ってしまった場合、最終的に、自分に起こった望ましくない現実を、自分なりに消化して生活していくようになります。



このような、障害を負ってしまったときの“心の動き”について、第2次世界大戦後の1950年代ごろから様々な研究者によって論じられてきました。


この“心の動き”は、障害を負った後の経過によって、いくつかの段階とたどると考えられています。研究者によって様々な段階モデルが示されていますが、一般的と思われるものを以下に紹介します。これは5つの段階に分けています。



1.心理的ショック相

初期の集中的な治療を受けている時期と重なり合い、健康なときと同じ身体像を持っている。この段階では、障害者という自覚はまったくない。


2.障害否認相

自分の障害を自覚するが受け入れられない。回復への期待が強く、少しの変化も回復への前兆としてとらえて大騒ぎしたり、効果がありそうな病院を転々と移り変わったり、迷信にすがったりする。健常者に対して嫉妬や眺望を感じ、介護してくれる者に対してはわがままになったり、当り散らしたりする。また、逆に障害者と自分を同一視することができず、交流を求められても応じようとせず、かえって差別的な言動をとったりする。


3.うつ反応相

自分に障害があることを受け入れるが、現実的な対応が出来ず、悲しい気持ちになる(うつ的になる)。自分の人間としての価値が失われたと感じやすく、実際の身体的、社会的制約に比べて、はるかに大きい制約があるように感じてしまう。無気力になり、希望を失うことも多く、自殺が最も多い時期。


4.自立への抵抗相

自分に障害があることを受け入れ、現実的な対応をし始めるが、そういった対応に対して自信がなく、感情が揺れ動いている時期。健常者に対しては劣等感を持つが、障害者に対しては親近感を持ち交流を始める。


5.障害受容相

障害を受け入れ、障害が自己の個性(例えば、背が高いとか低いとか、太っているとかやせているとか)の一つであり、それがあるからといって自分の人間的な価値は変わらないと考え始める時期。社会に対する対応はより積極的になり、障害者、健常者の区別なく交流し始める。



このように様々な研究者によって“心の動き”が段階付けされていますが、障害を負った人の“心の動き”は複雑で、必ずしもこのような段階をたどるとは限りません。特に、脳卒中などにより高次脳機能障害となり知的機能が損なわれてしまっている場合は、このような段階モデルは当てはまらないと思います。


また、障害を負ったら、最後の段階である「障害受容」を達成しなければいけないというわけでもないと思います。



ここで大切なことは、障害を負ってしまった人の心は、大きく動揺しているということです。


つまり、障害を負う前とは全く異なる心理状況なので、その人の人柄からは考えられないような奇妙な態度や言動が出現することがあるということです。内向的になって塞ぎ込んでいるかと思えば、突然攻撃的になって罵声を浴びせることもあるでしょう。


障害を負った人は以上のような普段とは異なる“心の動き”をしているということを知って頂けると、その人への誤解は生まれずに済み、より良い関係を築けるのではと思います。(^^)/


おわり(^^)/


〈主な参考文献〉
三上真弘,石田暉編:リハビリテーション医学テキスト 改訂第2版.南江堂,2005,pp88-90.
奈良勲編:理学療法概論 第4版.医歯薬出版,2002,pp338-340.
岩井阿礼:中途障害者の「障害受容」をめぐる諸問題−当事者の視点から−.
淑徳大学総合福祉学部研究紀要 43:97-110,2009.

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2012年12月22日

ブログデザイン変更

ブログのデザインを変更しました。(^^)/

今後とも、よろしくお願い致します。m(__)m


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