2014年01月14日

衝撃の吸収C【歩行の基本N】

3.膝関節での衝撃の吸収

膝関節衝撃吸収.jpg
図1:踵接地時の膝関節の屈曲



私たちは歩くとき、通常は踵から床に足が着きます(図1-a)。このとき、ヒールロッカーというしくみが働き、脛骨が前方へ転がっていきます。すると、自然と膝関節が屈曲していく(曲がっていく)ようになります(図1-b)。


膝関節は、踵が床に着くときは約5°屈曲しており、足底が床に着いたときは約20°屈曲しています。足底が床に着くと屈曲は止まり、その後は伸展していきます(伸びていく)。


この膝関節が約15°屈曲している間に、衝撃の吸収が行われています。


足関節での衝撃の吸収のときと同様に、この膝関節の屈曲は、適切な量、適切な時間をかけて行われなければ、衝撃吸収の効果が薄れたり、正しい歩き方を保てなくなったりしてしまいます。


膝関節屈曲の量が小さかったり、底屈する時間が短かったりすると、衝撃を十分に吸収できず、膝関節などに大きな力が加わり、身体を損傷してしまいます。


膝関節屈曲の量が大きいと、衝撃を吸収している途中で身体が落下していき、前進が困難となってしまいます。



膝関節衝撃吸収筋肉.jpg
図2:大腿四頭筋の働き



この膝関節の屈曲をコントロールしているのが、大腿四頭筋です(図2-a)。


この大腿四頭筋は、踵が床に着いた直後から足底が床に着くまでの、膝関節が屈曲していく間、筋肉自体が伸ばされながら力を発揮していきます(図2-b)。


つまり、大腿四頭筋が、適切な遠心性収縮をすることで、膝関節の屈曲をコントロールしています。


そして、大腿四頭筋が、時間をかけて膝関節の屈曲を止めることにより、衝撃を吸収するのです。


以上のことから、膝関節での衝撃の吸収は、大腿四頭筋の働きが重要であることが分かります



以上のしくみで、膝関節での衝撃の吸収は行われています。次回は、股関節での衝撃の吸収について説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.

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股関節、腰、膝の痛みセラピー
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2014年01月13日

衝撃の吸収B【歩行の基本M】

2.足関節での衝撃の吸収

足関節衝撃吸収.jpg
図1:踵接地時の足関節の底屈



私たちは歩くとき、通常は踵から床に足が着きます(図1-a)。この踵が床に着いた瞬間、足関節は少し底屈します(足首が少し倒れる)(図1-b)。その角度は約5°です。その後、足関節は固定されます(動かなくなる)。


この足関節が少し底屈している間に、衝撃の吸収が行われています。言い換えると、「踵が床に着くとき、足関節が少し底屈してくれるおかげで、衝撃を吸収することができる」、ということになります。


この足関節の底屈は、適切な量、適切な時間をかけて行われなければ、衝撃吸収の効果が薄れたり、正しい歩き方を保てなくなったりしてしまいます。


足関節底屈の量が小さかったり、底屈する時間が短かったりすると、衝撃を十分に吸収できず、足関節などに大きな力が加わり、身体を損傷してしまいます。


足関節底屈の量が大きいと、衝撃を吸収している途中で足底(足の裏)が床に着いてしまったりして、正しい歩き方を保てなくなってしまいます。



足関節衝撃吸収筋肉.jpg
図2:脛骨前面の筋肉の働き



この足関節の底屈をコントロールしているのが、脛骨前面にある筋肉です。具体的には、前脛骨筋長趾伸筋長母趾伸筋などです(図2-a)。


前脛骨筋は主に足関節を背屈させる筋肉、長趾伸筋は主に第2〜5趾(足の人差し指〜小指)を伸展させる筋肉、長母指伸筋は主に母趾(足の親指)を伸展させる筋肉です。


簡単に言うと、前脛骨筋は足首を反らせる筋肉、長趾伸筋は主に足の人差し指〜小指を反らせる筋肉、長母指伸筋は主に足の親指を反らせる筋肉です。


長趾伸筋長母趾伸筋は、足関節を背屈させる作用も持っています。


ちなみに、脛骨前面の筋肉の中で最も大きな筋肉は、前脛骨筋です。


これらの脛骨前面の筋肉は、踵が床に着いた直後からは、筋肉自体が伸ばされながら力を発揮していきます。


この筋肉が伸ばされながら力を発揮している状態は、遠心性収縮と呼ばれています。ちなみに、筋肉が縮みながら力を発揮している状態、つまり普通に腕を曲げるようなときの状態は求心性収縮、筋肉の長さが変わらずに力を発揮している状態は等尺性収縮と呼ばれています。


つまり、脛骨前面の筋肉が、適切な遠心性収縮をすることで、足関節の底屈をコントロールしています。


そして、この脛骨前面の筋肉が、時間をかけて足関節を固定することにより、衝撃を吸収するのです。


以上のことから、足関節での衝撃の吸収は、脛骨前面の筋肉(前脛骨筋長趾伸筋長母趾伸筋など)の働きが重要であることが分かります



以上のしくみで、足関節での衝撃の吸収は行われています。次回は、膝関節での衝撃の吸収について説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.

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2014年01月05日

衝撃の吸収A【歩行の基本L】

1.歩行時の衝撃の吸収

私たちが何気なく行っている歩行ですが、足が床に着くとき、毎回大きな衝撃が身体に加わっています。


私たちが歩いているとき、通常は踵から床に着きますが、このとき踵は約1cmほどの高さから床に落下しています。そして、身体に大きな衝撃が加わります。


私たちの身体には、この衝撃から身を守るために、「衝撃の吸収」のために、いくつかの仕掛けが備わっているのです。


つまり、私たちの身体には、床に接地するときにかかる体重という力を、時間をかけて受け止めるしくみが備わっているのです。


この「衝撃の吸収」は、主に足関節、膝関節、股関節で行われます。どのように行われるかというと、長い時間をかけて関節の動きを止めることで行われます。


これを可能にしているのは、それぞれの関節の周囲にある筋肉の働きです。この関節の動きや、筋肉の働きが悪いと、身体にとってダメージの大きい歩き方になってしまいます。


次回は、足関節での衝撃の吸収について説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.
Donald A Neumann:筋骨格系のキネシオロジー(嶋田智明・他監訳).医歯薬出版,2005.
小出昭一郎,阿部龍蔵,他:詳説 物理.三省堂,1988.

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2013年10月22日

障害を負ったときの心の動き【障害受容】

大きな怪我をしたり、大きな病気になったりしたとき、みなさんはどんな心境になるでしょうか??(>_<)


「ま、そのうち良くなるだろうし、大したことはないんじゃないかな」と楽観的な心境でしょうか?


「大変なことになってしまった。ずっと良くならず、大きな後遺症が残ってしまうかも。今まで出来ていたことが出来なくなってしまう。好きなことや、やりたいことが出来なくなってしまう。死んだ方がましだ」と絶望的な心境でしょうか?


実際には、楽観的、絶望的な心境を、行ったり来たりすることがほとんどだと思います。


そして、その怪我や病気によって障害を負ってしまった場合、最終的に、自分に起こった望ましくない現実を、自分なりに消化して生活していくようになります。



このような、障害を負ってしまったときの“心の動き”について、第2次世界大戦後の1950年代ごろから様々な研究者によって論じられてきました。


この“心の動き”は、障害を負った後の経過によって、いくつかの段階とたどると考えられています。研究者によって様々な段階モデルが示されていますが、一般的と思われるものを以下に紹介します。これは5つの段階に分けています。



1.心理的ショック相

初期の集中的な治療を受けている時期と重なり合い、健康なときと同じ身体像を持っている。この段階では、障害者という自覚はまったくない。


2.障害否認相

自分の障害を自覚するが受け入れられない。回復への期待が強く、少しの変化も回復への前兆としてとらえて大騒ぎしたり、効果がありそうな病院を転々と移り変わったり、迷信にすがったりする。健常者に対して嫉妬や眺望を感じ、介護してくれる者に対してはわがままになったり、当り散らしたりする。また、逆に障害者と自分を同一視することができず、交流を求められても応じようとせず、かえって差別的な言動をとったりする。


3.うつ反応相

自分に障害があることを受け入れるが、現実的な対応が出来ず、悲しい気持ちになる(うつ的になる)。自分の人間としての価値が失われたと感じやすく、実際の身体的、社会的制約に比べて、はるかに大きい制約があるように感じてしまう。無気力になり、希望を失うことも多く、自殺が最も多い時期。


4.自立への抵抗相

自分に障害があることを受け入れ、現実的な対応をし始めるが、そういった対応に対して自信がなく、感情が揺れ動いている時期。健常者に対しては劣等感を持つが、障害者に対しては親近感を持ち交流を始める。


5.障害受容相

障害を受け入れ、障害が自己の個性(例えば、背が高いとか低いとか、太っているとかやせているとか)の一つであり、それがあるからといって自分の人間的な価値は変わらないと考え始める時期。社会に対する対応はより積極的になり、障害者、健常者の区別なく交流し始める。



このように様々な研究者によって“心の動き”が段階付けされていますが、障害を負った人の“心の動き”は複雑で、必ずしもこのような段階をたどるとは限りません。特に、脳卒中などにより高次脳機能障害となり知的機能が損なわれてしまっている場合は、このような段階モデルは当てはまらないと思います。


また、障害を負ったら、最後の段階である「障害受容」を達成しなければいけないというわけでもないと思います。



ここで大切なことは、障害を負ってしまった人の心は、大きく動揺しているということです。


つまり、障害を負う前とは全く異なる心理状況なので、その人の人柄からは考えられないような奇妙な態度や言動が出現することがあるということです。内向的になって塞ぎ込んでいるかと思えば、突然攻撃的になって罵声を浴びせることもあるでしょう。


障害を負った人は以上のような普段とは異なる“心の動き”をしているということを知って頂けると、その人への誤解は生まれずに済み、より良い関係を築けるのではと思います。(^^)/


おわり(^^)/


〈主な参考文献〉
三上真弘,石田暉編:リハビリテーション医学テキスト 改訂第2版.南江堂,2005,pp88-90.
奈良勲編:理学療法概論 第4版.医歯薬出版,2002,pp338-340.
岩井阿礼:中途障害者の「障害受容」をめぐる諸問題−当事者の視点から−.
淑徳大学総合福祉学部研究紀要 43:97-110,2009.

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2013年06月16日

衝撃の吸収@【歩行の基本K】

B衝撃の吸収

「衝撃を吸収する」ということについて、みなさんはどのようなことが思い浮かぶでしょうか??


荷物を宅急便で出すときに、段ボールに緩衝材を入れることでしょうか?


飛んできたボールを受け取るとき、手や足を後ろへ引きながら受け取ることでしょうか?


ジャンプして着地するとき、脚を曲げながら着地することでしょうか?


どれも有効に衝撃を吸収できますよね。(^^)/


「衝撃を吸収する」とは、「加わる力をできるだけ小さくする」ということです。


では、これらの「衝撃の吸収」、どのようなしくみで衝撃が吸収されるのでしょうか??



ここからは、少し物理の話になります。


物体には、物体の質量をm、物体の速さをv、物体に加わる力をF、物体に力が加わっている時間をtとすると、次の関係が成り立っています。

力積.jpg

式1:運動量の変化と力積



mvは、物体の質量と速さを掛けたもので、物体の運動の激しさを表し、運動量といいます。


Ftは、物体に加わる力とその時間を掛けたもので、力積といいます。


式1は、「運動量の変化は加えられた力積に等しい」ということを表しています。


式1の左辺の運動量の変化は、同じ物体では速さの変化(v1→v2の変化)ということになります。


式1の右辺の力積は、運動量の変化が同じ(左辺の値が同じ)なら、力を加えられた時間が短ければ力の大きさは大きくなり、その時間が長ければ力は小さくなるということになります。



例えば、時速60kmで飛んできたボールを手で受け止めるときを考えてみましょう。


飛んできたボールを受け止めるということは、手の力で、時速60kmのボールの速さを、0にするということです。つまり、ボールの運動量を変化させるということです。


このとき、式1から、手にかかる力の大きさは、どのくらいの時間をかけてボールの速さを0にしたかにかかっています。つまり、1秒かけてボールを受け止めるより、5秒かけてボールを受け止める方が、手にかかる力は小さくなります。


以上のことから、「衝撃の吸収」には、力を受け止める時間が関係していることが分かります。


つまり、「衝撃を吸収する」には、「できるだけ長い時間をかけて力を受け止めると良い」、ということが分かります。


次回は、歩行時の衝撃の吸収について説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.
Donald A Neumann:筋骨格系のキネシオロジー(嶋田智明・他監訳).医歯薬出版,2005.
小出昭一郎,阿部龍蔵,他:詳説 物理.三省堂,1988.

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