2013年06月06日

推進力の生成H【歩行の基本J】

◎推進力の生成のまとめ


前回まで、推進力の生成について説明してきました。今回はそのまとめをしたいと思います。(^^)/


私たちが歩くときの推進力は、主に次の2つで作られます。
@重力による身体の前方への落下
A振り出される脚の前方へ進もうとする力


特に@が主要な推進力となります。


ロッカー機構まとめ.JPG
図1:立脚側下肢のロッカー機構



@での推進力を生成、維持するために、ロッカー機構という仕掛けを利用しています(図1)。


ロッカー機構には、段階的に次の4つのものがあります。
1.ヒールロッカー(踵ロッカー)⇒図1:赤〜緑
2.アンクルロッカー(足関節ロッカー)⇒図1:緑〜紫
3.フォアフットロッカー(前足部ロッカー)⇒図1:紫〜青
4.トウロッカー(足趾ロッカー)⇒図1:青〜橙
トウロッカーの終わりは、反対側下肢のヒールロッカーの終わり(図1:半透明緑)にあたる



推進力が生成されるときは、「3.フォアフットロッカー」のときです。このとき、「@重力による身体の前方への落下」(立脚側下肢)、「A振り出される脚の前方へ進もうとする力」(遊脚側下肢)が生じます。


また、Aでの推進力は、「4.トウロッカー」でのアキレス腱が縮もうとする力が基になっています。


ちなみに、Aでの推進力は、振り出す脚のスピードを速くすると、より大きくなります。その結果、歩くスピードが速くなります。


振り出す脚のスピードを速くするには、意識的に股関節を屈曲させたり(脚の付け根を素早く曲げる)、膝関節を伸展させたりします(膝を素早く伸ばす)。


以上のようにして、私たちは歩くための力を生み出しているのです。このことをしっかり理解して、正しい歩き方を身につけましょう。(^^)/


次回からは、衝撃の吸収について説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.

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2013年06月05日

推進力の生成G【歩行の基本I】

4.トウロッカー


前回まで説明していたフォアフットロッカーは、踵が持ち上がることで始まり、反対側の足が床に着くことで終わります。


反対側の足が床に着いたからといって、すぐにフォアフットロッカーが生じていた足が床から離れるわけではありません。しばらくは、中足骨頭から足趾にかけて、床に着いたままの状態が続きます。その後、中足骨頭が持ち上がり、足趾、最終的に母趾(親指)が床から離れていきます。


トウロッカー.JPG
図1:トウロッカー



この間、中足骨頭や足趾を支点にして、脛骨が前方へ回転していきます。これをトウロッカー(足趾ロッカー)といいます(図1)。このとき、足関節は底屈していき、膝関節は屈曲していきます(曲がっていきます)。


このトウロッカーで重要なことは、脛骨を前進させることです。脛骨を前進させ、推進力を生むことです。


このとき、脛骨を前進させるためには、足関節を底屈させなければなりません(足首を倒す)。


トウロッカー筋.JPG
図2:アキレス腱による底屈



実は、この足関節を底屈させる力の源は、なんと、筋肉ではなく、主にアキレス腱なのです!(図2)


反対側の足が床に着くと、フォアフットロッカーが生じていた脚にかかっている力(体重など)が、急速に小さくなっていきます。このため、足関節をしっかり固定する必要がなくなり、ヒラメ筋腓腹筋は、急速に力を弱めます。


一方、フォアフットロッカーが終わるまで、アキレス腱は、ヒラメ筋腓腹筋の力によって引き伸ばされています。そして、反対側の足が床に着くことにより、脚にかかっている力が急速に小さくなり、また、ヒラメ筋腓腹筋の力が弱くなると、引き伸ばされていたアキレス腱は元の長さに戻ろうと縮まります。


このアキレス腱の縮まる力で、足関節は底屈していくのです!そして、脛骨は前進していきます。


このように、アキレス腱は、バネのような働きをしているのです。


整理すると次のようになります。
@アキレス腱が、ヒラメ筋腓腹筋の力によって引き伸ばされる
A反対側の足が床に着く
B脚にかかっている力や、ヒラメ筋腓腹筋の筋肉の力が小さくなる
C引き伸ばされていたアキレス腱が、元の長さに戻ろうとして縮まる
D足関節が底屈する
E脛骨が前進する



前回、プッシュオフ(push off:踏み切り、蹴り出し)という用語を紹介しました。このプッシュオフという用語は、このトウロッカーのときに用いられる方が適切だと思われます。


ただ、トウロッカーでのプッシュオフは、身体を前進させるものではなく、脚を前進させるものです。



以上のように、トウロッカーは、反対側の足が床に着くことで始まり、足趾が床から離れることで終わります。


今回で正しい歩き方を理解するために必要な、4つのロッカー機構の説明は終わりになります。次回は、推進力の生成についてまとめます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.

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2013年05月20日

推進力の生成F【歩行の基本H】

3.フォアフットロッカーB


前回説明したフォアフットロッカーが生じている期間は、踵が持ち上がってから、反対側の足が床に着くまでです。


フォアフットロッカー筋の働き.JPG
図1:フォアフットロッカーでのヒラメ筋と腓腹筋の働き



このフォアフットロッカーが生じているとき、足関節は背屈角度を大きくしていきます(反っていきます)。


また、このとき、脛骨の前進は、加速するどころか減速していきます。


その中で反対側の足が床に着くのです。


つまり、このときのヒラメ筋腓腹筋の活動は、推進力として働くのではなく、身体が前進しようとする慣性力を抑制するために働いているのです(図1)。


プッシュオフ.JPG
図2:実際の自然歩行と地面を蹴るときの足関節

※a:実際の自然歩行の姿勢。足関節はやや背屈する(足首が反る)。
b:地面を蹴る場合の姿勢。足関節は底屈する(足首を倒す)。自然歩行ではこの動きは生じない。



このフォアフットロッカーが生じている期間に対して、よくプッシュオフ(push off:踏み切り、蹴り出し)という用語が用いられます。


このプッシュオフという言葉からは、「地面を蹴って前へ進む」というニュアンスを感じ取ってしまうと思います。


しかし、先ほど説明したように、自然歩行(普段の歩行、自然に楽に歩いている状態)でのこの期間では、「地面を蹴る」ようなことはしていません(図2a)。


「地面を蹴る」には、足関節を底屈させなければ(倒さなければ)いけません(図2b)。しかし、そのようなことは生じておらず、むしろ逆に背屈していきます(図2a)。


多くの人が、このプッシュオフという用語によって、実際の正しい歩き方のしくみを誤解してしまっているように感じます。。。(>_<)


次回は、トウロッカーについて説明していきます。(^^)/


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.
Donald A Neumann:筋骨格系のキネシオロジー(嶋田智明・他監訳).医歯薬出版,2005.
中村隆一,齋藤宏,長崎浩:基礎運動学 第6版,医歯薬出版.2003.

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2013年05月19日

推進力の生成E【歩行の基本G】

3.フォアフットロッカーA


前々回説明したアンクロッカーは、中足骨頭が床に着くことで始まり、踵が持ち上がることで終わります。


前回説明した体重ベクトルは、アンクルロッカーが生じているとき、踵から前方へ移動してきます。


フォアフットロッカー.JPG
図1:フォアフットロッカー



そして、体重ベクトル中足骨頭に達すると、踵が持ち上がっていきます。つまり、中足骨頭を支点として、脚が前方へ回転していきます。これを、フォアフットロッカー(前足部ロッカー)といい、アンクルロッカーに続いて生じます(図1)。


フォアフットロッカーで踵が持ち上がり始めると、身体は前方へ落下し始めます。このとき、身体の前進は加速されます。この加速は、歩行の中で、最も大きな推進力となります。またこのとき、重心は最も高い位置にあります。


この推進力は、重力による身体の落下(位置エネルギー)と、前方に振り出されている反対側の脚の運動量(運動エネルギー)によるものです。


フォアフットロッカー筋.JPG
図2:ヒラメ筋と腓腹筋



フォアフットロッカーでは、ヒラメ筋腓腹筋という筋肉が重要な働きをします(図2)。


腓腹筋は、大腿骨と踵を結ぶ筋肉です。


フォアフットロッカーが生じているとき、ヒラメ筋腓腹筋は、足関節を固定する役目を果たしています。


フォアフットロッカー筋なし.JPG
図3:ヒラメ筋と腓腹筋が働かない場合のフォアフットロッカー

※ヒラメ筋と腓腹筋が働かない場合、アンクルロッカーも適切に行われなくなる。
そのため、フォアフットロッカー開始時の脚の姿勢は通常とは異なる。



ヒラメ筋腓腹筋が働かないと、足関節が過度に背屈してしまいます(反ってしまいます)。そうなると、適切に踵が持ち上がらなくなり、フォアフットロッカーの利点が失われてしまいます(図3)。


また、重心も低くなってしまい、様々な悪影響が出てしまう歩き方となってしまいます。


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.

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2013年05月18日

推進力の生成D【歩行の基本F】

3.フォアフットロッカー@


前回説明したアンクルロッカーが生じている間、体重ベクトルは踵から前方に移動していきます。


体重ベクトルとは、重力、筋力、慣性力を合わせたものです。


ベクトル.JPG
図1:ベクトル



ベクトルとは、大きさと向きを持った量です。ベクトルは、よく矢印で表されます。例えば、ある青いボールに力が加わっているとします。この力のベクトルを矢印で表すと図1のようになります。この図で、矢印の長さは力の大きさを、矢印の向きは力の向きを表しています。


ベクトル2.JPG
図2:2つのベクトル



図1の右向きの力が加わっているボールに、右下向きの力を加えるとどうなるでしょうか?(図2)


多くの人は、ボールはそれら矢印の間へ進んで行くだろう、その方向へ力がかかることになるだろうと予測すると思います。しかし、その力の大きさや向きは、正確には分からないと思います。


ベクトル合成.JPG
図3:ベクトルの合成



しかし、ベクトルを利用すると、それが簡単に分かります。どのようにすれば良いかというと、ベクトルの矢印を平行移動して、他のベクトルにつなげれば良いのです(図3)。


まず、図3bのように、オレンジの矢印を平行移動して、その始点を、緑の矢印の終点につなげます。次に図3cのように、緑の矢印の始点と、オレンジの矢印の終点を、新たな紫の矢印でつなげます。この紫の矢印、つまりこの新たなベクトルが、ボールにかかる力の大きさと向きを表すことになります。


このように、2つ以上のベクトルをつないで新たな状態を表すことを、ベクトルの合成といいます。


つまり、体重ベクトルは、重力のベクトル、筋力のベクトル、慣性力のベクトルを合成したものです。


慣性力とは、物体がその運動状態を維持しようとする力です。物体にはそのような性質があります。止まっている物はずっと止まっていようとしますし、動いている物はずっと同じ状態で動いていようとします。


私たちが歩いているとき、身体は前へ進んでいますが、身体には前へ進むことを維持する力が生じています。この力が、歩いているときの慣性力です。


体重ベクトル.JPG
図4:体重ベクトル



体重ベクトルは、歩行中片脚立ちになっているとき、常に足底(足の裏)のどこかに向かっています(図4)。つまり、そのときの体重ベクトルは、足で床を押している力ともいえます。またそれは、床に対して、真っ直ぐだったり、斜めだったりします。


つづく・・・


〈主な参考文献〉
Jacquelin Perry,Judith M. Burnfield:ペリー 歩行分析 正常歩行と異常歩行 原著第2版
(武田功・他監訳).医歯薬出版,2012.
中村隆一,齋藤宏,長崎浩:基礎運動学 第6版,医歯薬出版.2003.

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